祝・新潮文庫になったよ。

黄昏

浅草・スカイツリー篇
 
第3回
御用だ、御用だ!

糸井 あいかわらず、
ふたりで出かけると天気がよくないね。
そうだねぇ。
糸井 まぁ、猟奇的な話がしやすいから、いいけどね。
エロティックで猟奇的な天気だね。
糸井 うん。負けずに、
エロティックで猟奇的な話をしなきゃ。
こう、唐紙(からかみ)を
からからっと開けるってぇと
そこにもう、赤い布団が‥‥。
「ごむたいな、人を呼びますよ!」
糸井 おお。
遠くの部屋から三味線の音がして、
遊女が廊下を行ったり来たり‥‥。
船頭、聞こえないふりで、
竿をこう、ツっと立てたりして‥‥。
糸井 で、突然、夜道に無数の提灯が揺れて、
「御用だ!」「御用だ!」
え? 屋形船じゃないの?
糸井 場面はトントントンと変わるよ。
法の番人であるにも関わらず、
十手を持ったまま遊郭にやってきた
同心がいるんだよ。
「御用だ!」「御用だ!」
つまり、十手プレイだね。
糸井 「十手プレイ」(笑)。
そんなプレイ、あるんだ。
あると思うよ。
それはもう、その世界では有名ですよ。
糸井 密室で、「御用だ、御用だ!」
一同 (笑)
こう、相手が、
ちょ、ちょっと、ちょっと待って、
って言ってるのにさ、
「御用だ、御用だ!」
糸井 はははははは。
こう、十手の房がひらひらしてね、
ちょっと気持ちいい。
わははははは。
糸井 呼び子も鳴らすよ。
いいね、いいね(笑)。
糸井 ピーーーッ!
「ふふふふふ、誰も来ぬて」
一同 (笑)
糸井 あれ? 呼び子を鳴らしてるのは女?
よくわかんないけど、いいだろう。
「御用だ、御用だ!」
糸井 「御用だ、御用だ!」
一同 (笑)
いいな、十手プレイ。
糸井 「御用だ、御用だ!」って言ってるとさ、
「どんな御用だ」って女が言うんだよ。
そしたら、「オレが御用だ!」
アハハハハ。
糸井 で、まぁ、こういうことを
載せるかどうかはさておき、ダメ元で言うと、
「この刺股(さすまた)で、御用だ!」
ワハハハハ!
意外に大丈夫じゃない?
糸井 で、女が、「観念したよぉ」と。
今日は大人っぽいよ、話が。
「御用だ、御用だ!」
糸井 「御用だ、御用だ!」
で、押し入れには、船頭がいるね。
糸井 船頭?
若旦那が寝てる。
糸井 なんだ、船宿だったのか。
それはちっとばかし猟奇が足りねぇなぁ。
猟奇はないが漁師はおります。
糸井 うまい。
「御用だ、御用だ!」
糸井 「御用だ、御用だ!」



(なにがなんだか。つづきます)
2014-06-17-TUE
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写真:山口靖雄
(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN