祝・新潮文庫になったよ。

黄昏

浅草・スカイツリー篇
 
第1回
餃子とお好み焼き。
糸井 今日はさ、たいへんなんだよ。
いきなり。なんですか。
糸井 あのねぇ、笑ってる場合じゃないんだよ。
笑ってないよ、まだ。
糸井 いずれ、笑うだろう?
アハハハハ。
糸井 笑ってる場合じゃないんだよ。
笑ってる場合じゃなかったね。
なんなの?
糸井 今日はさ、浅草とか、
スカイツリーとかに行くらしいんだ。
うん。
糸井 でね、予定でね、
2軒の食い物屋が入ってるのを、
知ってるんだ、オレは。
ああ、餃子の王様ンとこに行く。
糸井 そう、ひとつは餃子だよね。
肉がほとんど入ってないのに、
うまい餃子なんだ、これが。
で、もうひとつはお好み焼きなんだよ。
「松浪」っていうお好み焼き屋で、
その、鉄板焼きでもって、
いろんなものを食わせてくれて、
最後にお好み焼きが出てくる。
うんうん。
糸井 お好み焼きは、3種類ぐらい食べるんだけど、
わりとちっちゃく焼いてさ、
ピザで言うと、ひと切れずつみんな食べるわけ。
ピザで言うんだね。
糸井 ほら、ピザはみんなで食べるものだけど、
お好み焼きはひとりで1枚食べるだろう?
でも、みんなで「松浪」に行ったら、
お好み焼きをみんなでひと切れずつ食べるんだよ。
これは、ピザで言いたくなるだろう?
なるかもしれないね。
糸井 なにが言いたいかというとさ。
ウン。
糸井 けっこう、腹いっぱいになるんだよ、
そのお好み焼きの出てくるお店は。
ほうほう。
糸井 で、餃子も、そうじゃん。
腹いっぱいになるね。
糸井 腹いっぱいになるんだよ!
で‥‥どうだろう、それは?
一同 (笑)
あははははは。そりゃあ、心配だ。
糸井 いまさぁ、もうさぁ、いまもうさぁ、
2時にならんとしてるわけだよ。
時間的にね。
糸井 で、オレは餃子とお好み焼きの
両方を知ってるんで、
早めに餃子を食うつもりでいたんだ。
その早めの餃子計画が狂ったと。
糸井 そうそうそうそう。
かといってね、餃子を少なく食うわけにもいかない。
そうなの?
糸井 だってほら、撮影とかするわけだから、
きっと連絡してあると思うんだ。
これから行くことはさ。先方に。
だとすると、待ってると思うんだ。
こう、餃子をつくってさ。
餃子屋だからね。
糸井 餃子屋だからさ。
それをさ、今回はご遠慮するとかさ、
予定を見越して数を調整するとかさ、
そういう、会社会社したやり方はさ、
ぼかァ、どうかと思うんだよ!
ウン。
糸井 つまり、食うだろ、当然。餃子。
うん、ははははは。
糸井 そうするとさ、けっこうな満腹だよ。
で、その状態で松浪に行くと、
これはこれで、気持ちよくもてなしてくれるんだ。
焼いてくれるんだよ、目の前で。
ああ、いいね。
糸井 目の前で、ジュージューとね。
粋でいなせな子持ちのおねえさんが。
粋でいなせな子持ちのおねえさんなんだ。
糸井 これは見ればわかるけど、
粋でいなせな子持ちのおねえさんなんだよ。
粋でいなせな子持ちのおねえさん。
糸井 うん。伸坊も、今日、会えばわかるよ。
粋でいなせな子持ちのおねえさんだから。
でね、目の前で、
粋でいなせな子持ちのおねえさんが
焼いてくれてるのに‥‥。
食べないわけにはいかないね!
糸井 いかないよ!
で、伸坊はぜったいビールも飲むだろ。
モーチロンですねぇ~。
糸井 ははははは、いい顔したね。
ビールでもお腹いっぱいになるね。
糸井 そうだろぉ。どうしよう、餃子。
これがさぁ、フィクションならさ、
11時ぐらいに戻すね、オレは時計を。
一同 (笑)
あー、なるほどね。
糸井 ぽわぽわぽわーん、みたいにして。
はははははは。
糸井 こうやって(手をパチンと鳴らして)、
「さて、11時に戻ったわけですけれども」
って言って、早めのお昼に餃子をいただくよ。
フィクションならね。
糸井 フィクションならね。
ところが、「黄昏」はフィクションじゃない。
フィクションじゃないね。
むしろノンフィクションだね。
糸井 餃子もお好み焼きもノンフィクションだよ。
ゆゆしき問題だよ。
看過できないね。
糸井 いかがなものかと思うよ。
フィックション!
くしゃみだね。
糸井 ノンフィックション!
ちょっと変わったくしゃみだ。
糸井 あと、餃子を「さめこ」って
読まないようにしなきゃね。
あー、それは、高さん
(漫画家の高信太郎さん)の話だ。
糸井 そうそう(笑)。
高さんが東京出てきたときに、
中華料理屋に入って、
はじめて「餃子」って字をメニューで見た。
「あー、じゃあ、その、
 『さめこ』っていうのをもらおうかな」って。
一同 (笑)
糸井 好きだなぁ、その話は。
餃子の「餃」と「鮫」は似てるよ。
糸井 パッと見、同じと言ってもいいね。
ウン。
糸井 それはそうと、ほんとに、今日はね、
餃子とお好み焼きの問題で、
頭痛いのよ、オレは。
はいはい。
(のんびりいこう。つづきます)
2014-06-13-FRI
このコンテンツのトップへ 次へ
 
感想をおくる ツイートする
写真:山口靖雄
(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN