生活のたのしみ展の 「幡野広志の写真のお店」について。 そして、ネパールのこと。

ほぼ日刊イトイ新聞

写真家・幡野広志さんが海外で撮った写真が
「生活のたのしみ展」で展示されます。
幡野さんの写真の特別な魅力について、
一緒にネパールを旅した人の言葉とともに、
すこしだけ紹介します。

こんにちは、ほぼ日の永田です。

今回の生活のたのしみ展は、テーマがあります。
そう、「東京と世界」。
国際都市である東京に、
世界のあちこちからたくさんのものが集まります。
そしてそれと同じくらい、
東京に昔からある伝統的なものも並びます。

「東京」のもの、「世界」のもの、
複数のエリアにすばらしい商品がそろいました。

さて、その「世界」の側を象徴するのが、
写真家・幡野広志さんが撮影した写真です。

ご存知の方も多いかと思いますが、
幡野広志さんは多発性骨髄腫という
血液のがんを抱えているカメラマンです。
2017年の末に病気を公表して以降、
写真だけでなく執筆活動も評判となり、
はじめての著作である、
『ぼくが子どものころ、ほしかった親になる。』は
ベストセラーとなりました。

今年3月には過去の作品をまとめた
『写真集』をほぼ日から出版。
同時に開催したTOBICHIでの個展には、
連日たくさんのお客さんが来てくださいました。

幡野広志さんのことをまだよく知らないという人は、
過去2度行った、糸井重里との対談をお読みください。
どちらもほんとうにすばらしい対談です。

そんな幡野広志さんが
「世界のさまざまな国で撮影した写真」を、
生活のたのしみ展で展示します。

インドのガンジス川で沐浴する写真、
チリの雄大な雪山の写真、
ベトナムのバイクと猫の写真、
そして、ネパールの空港とヒマラヤ‥‥。

展示されている12枚の写真は
どれもオリジナルプリントを購入することができます。
額装サイズも2種類ありますから、
お部屋に合ったものをご購入いただけます。
もちろん、観るだけでも、ぜひ。

幡野さんの写真は、特別です。

幸いなことに、ぼくは幡野さんと昨年出会って以降、
あちこちで「幡野さんが写真を撮る現場」に
立ち会うことができました。

つまり、幡野さんが写真に撮るその風景、場面を、
ぼくは写真になる前から見ている、知っている、
ということがしばしばあったのです。

それで、後日、幡野さんの写真のなかに、
自分の知っている場面で収められていると、
もう、びっくりしてしまうのです。

ぼくは写真について造詣が深いわけではありません。
知識もなく、技術や歴史もよくわかりません。
けれども、自分の知っている風景が、
はっと息をのむほどの魅力とともに
切り取られることを体験することで、
うわぁと打ちのめされながら納得するのです。

写真家というのは、
こういうことをする人なのだな、と。

とりわけ濃密な体験をしたのは昨年末、
幡野さんと、たくさんの
「書くことの尽きない仲間」と一緒に
ネパールを1週間旅したときのことです。

幡野さんは、おそらく体調のこともあると思うのですが、
カメラマンとしてはとても軽装です。
もう、ご本人にもふざけて言ってるのですが、
ぱっと見は、「観光客が写真を撮ってるみたい」です。

首からぶらさげた単焦点のカメラで、
ぱし、ぱしっと、1、2枚撮って終了。

でも、そこには写っているんです。
どうなってるんだ、といつも思います。
なんなら、本人に言っちゃいます。
「幡野さん、これ、どうなってるの?」と。
はははは、と幡野さんは笑うばかりです。

幡野さんとぼくらの1週間のたびは、
長い長いコンテンツになる予定です。
(5月中旬にはじまる予定です)
そのなかで、一緒に旅をした仲間たち、
古賀史健、浅生鴨、田中泰延は、
それぞれに幡野さんについて書いています。
膨大なテキストのなかから、
ちょっと抜き出してみましょう。

たいせつなのは、
幡野さんがなにを見るか、ではない。
なにを「いらないもの」として切り捨てるか、
なにを「雑音=ノイズ」として処理するか、
その選択がたぶん、
幡野広志の写真であり、生きかたなのだ。
(古賀史健)

写真とはどこか、
他者と自分の時間を引き換える行為だと思う。
人間に与えられた限られた時間そのものを可視化すること。
そしてある瞬間にここにあるものをどこかにうつすこと。
ぼくが撮影しているのは、記録に過ぎない。
記録と、写真はちがうと思っている。
ぼくはなにも考えずに見たものを撮って
「あとでどこか使えるところを探そう」という姿勢だ。
それに対して、写真家は
「なにを切り取り、なにを残すか」という意思を貫く。
幡野さんは作品を創っている。
(田中泰延)

それにしても、僕はなぜネパールに行くことに
なったんだろうか。なぜ行こうと思ったのだろうか。
たぶん僕は幡野さんを見たいんだろうな。
幡野さん自身に残された時間と
現地の子供たちが持つ未来の時間を交換する様を
見たいと思ったんだろうな。
(浅生鴨)

このときにとったネパールの写真も、
生活のたのしみ展には展示されます。
そのほか、幡野さんが切り取った「世界」の写真を、
どうぞ、観に来てください。

たぶん、幡野さんも、一緒に旅した仲間たちも、
ちょくちょくブースを訪れると思います。
ぼくも、基本、ここにいます。

くわしくはこちらの
「生活のたのしみ展のページ」
に書かれていますが、
幡野さんの写真をあしらった
Tシャツやポーチも販売します。

あと、写真じゃないんですが、
ぼくらからのリクエストとして、
幡野さんが息子の優くんにいつも描いてた
「くまみたいなネコ、くまネコ」をプリントした
オリジナルのタンブラーもつくりました。

それでは、生活のたのしみ展で、お会いしましょう。
来月はじまるネパールの読み物も、どうぞよろしく。

2019-04-16-TUE