第5回 あなた、いびきをかかなくなったわねぇ。

糸井 レム睡眠時の脳波を測定すると、
まるで、起きているかのようなパターンを示す。
それは、制約をとっぱらって、
脳が自由にふるまっている、ということなんですね。
高橋 だから、レム睡眠って
いったいどんな役割を果たしているのか、
よくわかってなかったんですよね。
糸井 脳が活発に動いて、夢を見てたりするから
眼球とかも動くんですよね、レム睡眠のときって。
高橋 ええ、それで
「Rapid Eye Movement」の頭文字をとって
「REM=レム睡眠」と。

ですから、赤ちゃんなんかも、
眼がキョロキョロ動いてるようなときに起こしてやると、
比較的、機嫌よく起きるんですよ。

糸井 そうか、僕は大人になってから
夢を見なくなった‥‥んだと思ってたんです。

それって、深い「ノンレム睡眠」の段階で
毎朝、起きてるんだ‥‥。
しかも、寝覚めも快感じゃないことが多いし。

これらがぜんぶ、
密接に関係しているということなんですね。

高橋 もっとも、夢は見てても気づかない場合もありますし、
じっさい見てないってこともありますが。
糸井 逆に、何かを感じながら、というか、
うっすら意識があるような状態で起きるときって、
たしかに快適な気がしますね。

いま、思い当たったんですけど。
高橋 ええ、その場合は
レム睡眠時に目覚めているということでしょうね。
糸井 健康的なパターンで、起きている。
高橋 ま、そう言っていいのではないでしょうか。
糸井 なるほど‥‥それじゃあ
先生がいま、研究されている
グリシンというアミノ酸を眠るまえに摂ると
深く眠れる、つまり「満足のいく眠り」を
得られそうだというのは、なぜなんですか。
高橋 就寝前にグリシンを摂ると、
すみやかに深い眠りに入ることができる。

これは、理想的な眠りのパターンにとって
とても重要なことなんですが、
わたしたちが、そのことに気づいたのは、
きわめて「偶然の産物」だったんです。
糸井 ほう、偶然‥‥。
高橋 それまで、グリシンというアミノ酸には
なんの作用もないだろうと言われていたんです。

そういうものだったので、
他のアミノ酸の効果効能を調べるための
プラセボとして使っていたんですね。
糸井 つまり「偽薬」ですね。
高橋 はい。ある薬の効果を調べたい場合、
なにか別のものと比較対照しなければならない。
その場合に用いられる「ニセの薬」です。

で、あるとき、ある試験に参加していた研究員が、
「このごろ、あなた
 いびきをかかなくなったわねぇ」なんて
言われたらしいんですよ、奥さんに。

糸井 いびき、ですか。
高橋 当然ですが、そういった試験では
自分が飲んでいるものが、
本来、効能を調査したい薬なのか、
それとも偽薬なのか、わからないようになっている。

で、その「いびきをかかなくなった」研究員の
飲んでいたものが‥‥。
糸井 偽薬として使われていた、グリシンだった?
高橋 ええ、ええ、そうだったんですよ。

思い当たるふしはなかったんだけれど、
そうだと言うなら、調べてみようと。

朝晩、グリシンを
「10日間飲んで、10日間飲まない」という試験を
やってもらったんですね、その研究員に。

そうしたら‥‥すごくきれいに出てきたんですよ。
飲んだ日と、飲まない日のちがいが。
糸井 つまり‥‥。
高橋 飲まない日には「きちんといびきをかく」。



<つづきます>


2007-11-08-THU


(C)HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN