3万年筆の字幅はどう選ぶ?

字幅とやわらかさ

- ほぼ日手帳のページでも販売している
「カスタム74」は、
まさに「ザ・万年筆」という雰囲気ですよね。

- 使いやすくてお手頃で、
初心者のかたにいちばんおすすめな万年筆です。


- 1万円代で、ステンレスではなく
れっきとした金ペンを使えますしね。

- 万年筆には、細字や中字、太字などがありますが、
「万年筆を使うのが初めて」という人は、
どうやって選んだらいいのでしょうか。

- 長谷川さんは、店頭で接客をされていたとき、
どんなふうに案内していたんですか。

- まずは用途をお聞きするようにしていました。
たとえば、
「手帳に日記をつけたい」というかたには、
「すこし細めのペン先がいいかと思うので、
中細字(MF)で書いてみましょうか」
という感じで。
ためしに書いてもらって、
もし太いと感じられるようだったら細字(F)に、
細いようなら中字(M)に変えて、
書き味をみてもらいます。

- なるほど。
太字、細字などの種類は
どのぐらいあるんですか?

- 「カスタム74」の場合、
字幅は11種類から選べます。
「S」とついているのはソフト、つまり「やわらかめ」。
同じ細字でも、硬めとやわらかめがあるんです。


- やわらかめって、どんな感じなんですか。

- 人によって書く力が違うので、
年配の方や筆圧の弱い方、筆に慣れている方は
そんなに力を入れなくても
インクが出るものを好む方が多く、
ソフトを使われるケースがあります。

- 若い方はボールペンに慣れているので、
スタンダードなほうを選ばれるかたが多いようですね。

- 通常、万年筆は60度ぐらい
寝かせて書くのですが、
ボールペンの場合は、先端のボールが
うまく回らないとインクが出ないので、
立てて書く必要があるんです。
だからボールペンに慣れている方は、
ペンを立てて書く傾向があるんですね。

- それじゃあ、万年筆は
立てると書きづらいんですか?

- いいえ、大丈夫ですよ。
現在のカスタム74は、ペンを立てて持っても
インクが出やすくなるように設計しています。

- 進化しているんですね。

- せっかくなので、いろいろ試して書いてみてください。
まずは中細字(FM)からがいいと思います。
試し書きのときは
ご自分の名前を、書いてみるのをおすすめしています。

- 書きやすいです。

- インクがするする出る。


- サラサラサラーって感じ。

- みなさん、けっこう力を入れて書きますね。

- へえー。このぐらいだと、強いんですか。
自分では、よくわからないですね。

- シャープペンシルやボールペンのときと
同じぐらいの持ち方だと、こんなかんじだなあ。

- では同じ太さの、
やわらかいほう(SFM)を使ってみてください。
どうですか?


- あ、インクの出かたが全然違いますね。
私は、こっちのほうが好きかもしれない。

- 書くときにペン先がしなるような、
弾力を感じますね。
わたしは、硬いほうの書き心地が好みかも。


- ペン先がやわらかいぶん、
インクの出がよくなるんです。
コシがあって、長く使ううちに、
金のペン先が開いていくので
だんだん線が太くなっていくのも特徴です。

- 太い線も出せますし、
ちょっと力を弱めると文字が細くなるから
より強弱をつけやすい、ということも言えます。
ですのでS(ソフト)は、ちょっと行書っぽいというか、
筆書きまではいかないけれど、そういう味が出ます。

- 力の入れ具合で、変化を付けやすいんですね。
でもどちらも、紙にペンが当たる感覚が
とても気持ちいいです。
やっぱり、ボールペンで書くのとは
ぜんぜん違う書き味‥‥。

まだまだある! いろんなペン先

- あ、このコース(C)っていうペン先、
すごく好きです。かっこいいなあ。


- 太い部分と細い部分の差があるから、
カリグラフィーペンみたいにして
使ってもたのしそう。

- 太字(B)も、
サインとか書いたらかっこよさそう。
絵を描いてもいい味が出そうですね。

- そうですね。
それから、ミュージック(MS)という種類もあります。
いまはコンピューターで書けてしまいますが、
昔は音符を書くのに作曲家さんが使っていました。
縦が細く、横が太く書けるんです。


- 音譜を書く以外にも、使えるんですか。

- はい。この書き味が気に入って、
使っていらっしゃるかたもいますよ。


- 極細(EF)は、ほんとにほっそい!

- これなら手帳の方眼にも合わせて書けちゃうね。
わたしは、けっこう細かく、小さく書く派だから、
これはけっこう欲しいかも。

- 万年筆って、なんだか
字もていねいに書ける気がする。

▲カズンサイズのほぼ日手帳に書いてみました

- いろいろなペン先で書いてみて思ったんですけど、
書きにくいものとか、自分に合わないな、
というものはなくて、
どれもそれぞれによさがある気がしました。

- そうなんですよね。
筆圧など、ご自身でそんなに気にされていなければ、
何に使いたいかという用途と、
字幅の好みと、書き味の好みで
選んでいただければいいと思います。



- 「合う」「合わない」よりも、
自分がどういう文字を書きたいか、なんですね。

- 筆圧が強めだけれど、
太さ細さをより強調したいなと思う人は
Sを選んでもいいのでしょうか。

- はい、お好みでいいと思います。

- あとは、万年筆って、
普通のボールペンよりも筆圧が必要ないので
万年筆を使い慣れていくと、
筆圧も自然と弱くなっていくと思います。


- ちなみに、人気の太さはどれですか。

- F(細字)、FM(中細)、M(中字)あたりですね。
最近は大学生や、新社会人などの
若い人もよく買ってくださいますよ。

- そうなんですね。

- 「何に使うんですか」ってお尋ねしたときに、
多いのが「司法試験で」というお答えなんです。
司法試験に、万年筆がいいそうなんです。

- 万年筆だと、受かりやすいということですか!?

- 司法試験って、実務で2時間、
ずっと書きっぱなしなので、
鉛筆やシャープペンシル、ボールペンだと
疲れちゃうんだそうです。
万年筆だとすらすら書けて、
力を入れなくてすむし、
2時間でも書き続けられるということで、
カスタムシリーズや、もう少し値段が高い
2万円代の万年筆を買っていく人もいらっしゃいます。

- へえ~!

(つづきます)

Q
はじめて使うときは、
カートリッジインキを入れてから
どのぐらいの時間で
書き始められますか。
A
カートリッジインクを装着し、
5~10分ぐらい寝かせておけば、
インクが出てくると思います。
万年筆のカートリッジの装着方法は、
軸をはずし、ペン先を上に向けてから
カートリッジを差し込みます。
もし、装着しばらく置いても
インキが出てこない場合は、
カートリッジを両側から軽く押して
ペン先にインキを送り出すと、
書けるようになります。
↓パイロットさんのwebサイトで公開されている動画
Q
カートリッジにまだインクが残っているのに、
インクが出なくなってしまった。
そういうときは、どうしたらいいのでしょうか。
A
毎日使っていればそういうことは起きないのですが、
たとえば1年とか、インクを入れっぱなしの状態で
置いておくと、出なくなることがあります。
インクというのは、水分と染料でできているんですよ。
水分だけが蒸発して、染料の粒子だけが残ってしまう。
そのとき、ペン芯の隙間にこびりついてしまって、
インクが出なくなってしまいます。
その場合は、カートリッジをはずして
水洗いが必要です。
お水を入れたコップに、
ペン先を丸1日ぐらいつけておくと、
インクが出てきます。
または、水道の蛇口で流して、
水の色が変わらなくなるぐらいまで
洗うという方法もあります。
↓パイロットさんのwebサイトで公開されている動画

