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LIFEのBOOK ほぼ日手帳 2017

LOFT手帳部門12年連続NO.1

ほぼ日手帳 2017

グラフィックレコーディングをやってみました!
グラフィックレコーディングをやってみました!

会議などで飛び交う、いろんな人の「議論」を
絵や図などのグラフィックに「可視化」して記録するという
ちょっと不思議なコミュニケーション手段があります。
その名も「グラフィックレコーディング」。
自分の考えを言葉でうまく伝えたいときや、
上司に囲まれて発言しにくい会議などに、有効なのだとか。
「考え」を「書く」ことで「整理」できるということで、
ほぼ日手帳との共通点もありそうです。
いったいどんなものなのか、
興味を持ったほぼ日手帳チーム数名が
「グラフィックレコーダー」の清水淳子さんをお迎えし、
話をくわしく聞いてみることにしました。
模造紙を使って、手帳チームのミーティングを
描いてもらったところ、なかなかおもしろい発見も‥‥。
インタビューと実践のようすを、全2回でお届けします。

profile

清水淳子Shimizu Junko

1986年生まれ。
多摩美術大学情報デザイン学科卒業。
Web制作会社やデザイン会社にて
さまざまなジャンルのデザインに携わるなかで、
「議論の可視化」に興味を持つ。
2013年、Tokyo Graphic Recorderとして活動開始。
同年、Yahoo! JAPANに入社し、
UXデザイナーとしての業務を行いながら
グラフィックレコーディングの
研究と実践を続けている。
著書に『Graphic Recorder——議論を可視化する
グラフィックレコーディングの教科書』
(ピー・エヌ・エヌ新社)。

グラフィックレコーディングって?

会議の中での人々の議論を、図式や絵などを使ってリアルタイムで可視化する方法。
「グラフィックレコーダー」は会議の場に出向き、耳から聞こえる情報をもとに
議論を1枚の模造紙にまとめていきます。

グラフィックレコーディングって?

会議の中での人々の議論を、図式や絵などを使ってリアルタイムで可視化する方法。
「グラフィックレコーダー」は会議の場に出向き、耳から聞こえる情報をもとに
議論を1枚の模造紙にまとめていきます。

――
今日はお越しいただき、ありがとうございます。
清水さんの著書『Graphic Recorder』を読んで、
会議やコミュニケーションを活性化する
「グラフィックレコーディング」という方法を
はじめて知りました。
「自分の考え」を「書く」ことで「整理する」‥‥
それって、ほぼ日手帳にも応用できそうだし、
「書くこと」つながりで、お話をお聞きできたら
おもしろそう! と思ったんです。
清水
ありがとうございます!
――
まず「グラフィックレコーディング」って
ちょっと聞き慣れない言葉なのですが、
どんなものなのでしょうか?
清水
会議の中での人々の議論を
図式や絵などを使って
リアルタイムで可視化する、ということです。
グラフィックレコーディングによって
議論の衝突や、行き詰まりなどを
解消することもできるんです。
「グラフィックレコーダー」は
実際に会議の場に出向き、耳から聞こえる情報をもとに
議論を1枚の模造紙にまとめていきます。
――
一般的な会議のイメージだと、
ホワイトボードに、出てきた案件を
箇条書きにしていって‥‥と、
文字や単語をピックアップして
書くことが多いですが、
絵や図を使うところがおもしろいですよね。
清水
話の文脈や事実関係を整理して、
1枚の紙の上にグラフィック化することによって
その場にいる全員が、
ひと目で全体を俯瞰できます。
そうすると、関係性や構造が直感的にわかるし、
みんなの認識を合わせやすくなるので、
自然と、その場の会話も活性化するんです。
――
そもそも、どうやって思いついたんですか?
清水
前職のデザインコンサルティング会社で
化粧品の店舗やワインのパッケージなどの
いろいろなデザインプロジェクトに関わっていたのですが、
そのとき私は25歳で、まわりが40代ぐらいで。
チーム内で、年上の方に
うまく自分の意見を言えなかったり、
流れに飲まれそうなときがあったんです。
――
ええ。
清水
言葉ではうまく伝えられなくて、
このままだと流れが変な方向に行きそうで、
どうしよう‥‥! って困ったときに
そのあたりにあった紙を使って
グラフィックで描いてみたら、
うまく伝えることができたんです。
――
実際に会議で困った経験から
生まれたんですね。
清水
はい。そのあとにも、50代ぐらいの社長に
「ちょっとここ、多分違うと思うんです」って
意見を言いたいときに使ったらうまくいって。
グラフィックに描いて説明することで、
「角」が立ちにくくなるなと思ったんです。
――
そういう場では、言葉だけより
イメージを共有しやすいんですね。
清水
もうひとつの理由としては、
私がイベントや勉強会に行ったときに
グラフィックでとったノートを
たまたまウェブでアップしたら、
「これはいいね」って言ってくれる人がいて。
――
ノートをとるときもグラフィックで!
清水
そうしているうちに
「うちのイベントの内容を描いてください」
みたいな依頼が来だしたんです。
そこから、いろいろと活動を広げていきました。
清水さんが現在仕事で持ち歩いている無地のノート。
文字だけのページやグラフィックだけのページがあるなど
使い方を限定しない、自由なメモになっています。
――
清水さんは、学生時代から
こういうノートの取り方をしていたんですか。
清水
小学校5年生ぐらいのときには
こんな感じで、図解みたいに書いていた気がします。
小学校や中学校だと、
「横線が入ったノートを買いなさい」って
言われがちなんですけど、
私は横線がない方がいいなと思って
無地のノートを買って使っていましたね。
――
「Graphic Recorder」の本を出してから
反響や変化はありましたか?
清水
北海道で小学校の先生をしている人から
突然、メールが来たりしました。
「黒板の書き方で悩んでいたのですが、
 ヒントがもらえて、同僚にもすすめました」とか。
本を出したことで、デザイン業界だけでなく
いろいろな職業のかたにも
反応をいただけたのは嬉しかったです。
――
確かに、参考になりそうですね。
清水さんは、いろいろな企業のかたから
「ミーティングを記録してほしい」という依頼も
受けているんですよね?
みなさんの反応はどうですか。
清水
ありがたいことに、「やってよかった」という
お話をいただることが多いです。
ふだん話し合えているつもりでも、
第三者が客観的に描き出すと、
「けっこう無駄な話をしていたな」
っていうことがわかったりするみたいです。
――
ああ、なるほど。
清水
逆に「今までは気づかなかったけど、
実は、けっこうしっかり考えて話せていたんだ」
っていう前向きな発見もあったり。
普段と違うものに気づいたという
お話をいただきますね。
――
ミーティングや会議って、
ほぼすべての会社やチームで、やるものですよね。
仕事以外でも学校や、ご近所の会合などもありますけど、
そうした会議で実際、
うまく進行できなくて悩んでいる人が
多いんじゃないかなと思うんです。
清水
ええ。
――
たとえば、ダメ出しが怖くて意見を言えないとか、
発言する人がいつも同じだとか、
話がそれて結論がまとまらないとか‥‥。
清水
そうですね。
依頼をいただく企業のみなさんも、
ほとんどが悩みを持っていらっしゃいます。
「いま身の周りにあるコミュニケーションの
 課題を書き出し、その原因を考えてみましょう」
というワークショップをやると、
みなさん、異常に盛り上がって!
もう、終わらないんです(笑)。
――
課題って、たとえばどんなものでしょう?
清水
立場の差が、まずは大きいですね。
年上の人や経験がある人に対しては
何も言えなくなってしまうとか。
――
多かれ少なかれ、どの会議にも
それは必ずあるのかも。
清水
それから、そもそもの発言量が少ない、
発言が出ないっていうパターンも多いです。
集まったものの、「シーン」みたいな。
――
そういうときは、どうするんですか?
清水
根本的にシーンとしすぎている場合は、
A4の紙を配って、
「5分間、自分が思っていることを書きましょう」
という時間を作ってから発表してもらいます。
そうすると、意見が出てくるんですよ。
実はみなさん、考えをお持ちなんです。
――
口では言いにくいけど、
紙に書けば意見が出やすいんですね。
では、会議でよくありそうなケースとして、
たとえば、対立する意見が出て、
平行線をたどりそうな場合は、
どうやってまとめていくんですか?
清水
描きながら私がまとめたり、
「こっちのほうがいい」とマルをしたりはしません。
それよりも、反対意見になっている状態を、
鏡のように描き出すことによって、
「じゃあ、この反対をどうとらえようか」って、
みんなが考えられるようにしますね。
――
対立を、見えるようにする。
清水
反対のことを言っているのにもかかわらず
会話は反対じゃない雰囲気で進んでいる、
ということもあるので。
それが、描くことで明らかになるんです。
――
ああ。なんとなく、気まずい雰囲気になるのを
避けるために、言い方をやわらげてしまったりして‥‥。
清水
そう。表面上は穏便に進めているけど、
実は反対意見を言っているとか。
または、反対だと思っているのに
ハッキリと言えない人がいたり。
だから、それは、
描いて明らかにしておくほうがいいんです。
――
そういう点を、より明らかにしやすいのも
グラフィックレコーディングの特長なんですね。
――
これまでに、清水さんが第三者として参加して
おもしろかった会議はありますか?
清水
ある会議を聞きながら描いていたときに、
その場のひとりが、
「いや、違う。ここはこうなんだよ」って、
立ち上がって、ペンを持って描き出したんです。
そうしたら、他の人も
「いや、でも、そこはそうでしょう」って参加して。
最後には5人ぐらいいた全員が
ペンを持って立ち上がっていたことがありました。
――
おお!
清水
カラオケでいうマイクの取り合いみたいに(笑)。
それまで無口だったエンジニアさんが、
描きながらしゃべり始めたりして、
その会議の場が、すごくいい雰囲気になっていましたね。
(後編につづきます)