03 光らせてあげたくて
渡邉
「uka color base coat zero」を作ったきっかけは、
私が以前、一般のお客さま向けに
セルフケアレッスンをやっていたときのことだったんです。
参加者みんなでキューティクルケアをしたり
甘皮を処理してから、
最後に爪を磨き上げるんですね。
このときにみなさん
「わー!ピカピカ!」
って、ものすごくテンションが上がって
よろこんでくださるんですよ。
草場 きれいになってうれしいですよね。
渡邉
当時の私はジェルネイルの施術もしてましたし、
マニキュアなら他のブランドさんから
きれいな色がたくさん出てるから、
作ろうとは思ってなかったんですけど、
あるとき夫(uka代表取締役CEO・渡邉弘幸氏)から
「マニキュア作ったら?」
って言われたんです。
そのときにセルフケアレッスンで
自分の爪がピカーンと光ったのを見たときの
みなさんのよろこぶ顔がバーッと浮かんできて
「光らせてあげたい!」って思ったんです。
爪って磨きすぎると薄くなりますから、
すこやかに保てて、
きれいに見せられるベースコートだ、と。
草場
なるほど。
磨くのではなく、塗ることできれいに見せるもの。
渡邉
カラーマニキュアの場合、
普通はベースコートを塗って、
カラーを2回ほど重ねてからトップコートという、
4回塗るのが基本ですよね。
でも作るなら、
肌にとってのファンデーションのような、
メイクで言うところの
「コントロールカラー」的なものがいいなと思いました。
そこから、
1度塗りは誰にでもなじむ透明感。
2度塗りはほんのり薄い色がついて、
3度塗りでしっかり色が出る。
そんなベースコートをめざしました。
草場 それまでになかった、新しい発想ですよね。
渡邉
単色で重ねて使ってもいいし、
「この色ちょっと白すぎたかな」と思ったら
ベージュやグレーの「uka color base coat zero」を重ねて
肌なじみをよくすることもできます。
お客さまの中には、
自分の手の色がくすまない色を求められる方が多いんです。
でも爪ってファッションの一部というか、
自分が着ている服に合わせて色を乗せられるパーツなので、
くすんで見えたり、ちょっと合わないなと思ったら、
少しピンクを重ねるだけできれいになるよ、
というメッセージも含めて作ったんですよね。
草場 本当に、使う人に寄り添うプロダクトですね。
草場
以前、ukaのスタッフの方にもお話を聞いたんですけど、
私、IZUシリーズの開発ストーリーが大好きなんです。
渡邉さんにも改めて伺っていいでしょうか。
渡邉
あれは私の夫がサーフィンをしていたことがきっかけで
できた商品なんですが、
IZUシリーズで使われているクロモジは
私にも関係するエピソードがあるんです。
更年期の症状で
手の湿疹に悩まされたことがあったんですけど、
ホルモンのバランスによるものだからと、
皮膚科に行っても治らなかったんですね。
痒みもあったので、触ると悪化してしまって
この悪循環を止めるにはどうしたらいいんだろうと思って
散々調べていたら、
クロモジがいいという情報を見つけたんです。
草場
IZUシリーズを作る前から
クロモジには注目されていたんですね。
渡邉
クロモジウォーターというのを見つけて、
湿疹のあるところに吹き付けてみたら
痒みが収まったんです。
クロモジってすごいんだなと思って、
京都のクロモジを使った製品を作ったりしていたんですね。
そんなときに夫のサーフィン仲間から
紹介したいと言われて出会ったのが、
伊豆の海洋学者でサーファーの佐藤延男先生でした。
夫と佐藤先生、海が好きなもの同士で話をするうちに、
伊豆の海が実は砂漠化していて、
海藻が育ちにくい状態になっていること、
それを救うためにはまず
森林の問題を解決しなきゃいけないんだ、
ということを知りました。
草場
海の問題の原因が、
山にあったということですね。
渡邉
海には山からの栄養が
土砂や雨として流れ込むんですけど、
その栄養が不足していたんです。
佐藤先生はどうしてそうなっているのかを調べて、
山の木が密生しすぎて地面に日光が届かず、
土に栄養が回っていないことを突き止められたんですね。
それなら、適切に間伐をすることで
土に日光が当たって山が元気になり、
結果的に海もいい状態になっていく仕組みを目指そうと。
夫も私も、
その考え方にとても共感しました。
伊豆の山に自生していたクロモジも
どんどん生えてくるので
使えば使うほど、いい循環が生まれるんですよね。
草場
肌にもよくて、地球環境にもいいというのは、
どのブランドもめざしたいところだとは思うんです。
でも、商品を売るために無理やりどこかから
よさそうなストーリーを探してきた
というのではなくて、
旦那さまが日常の中で実際に直面された課題から
「海を変えたい」と思われたのが、
ものすごく素敵だなと感じました。
こうやって地に足をつけて
ブランドを進めてらっしゃるのが、
本当にすばらしいなと思います。
渡邉
できることからやりたいという思いはありましたが、
やはりハードルは高かったです。
海を壊さないためにクロモジを使うとか
シリコンのかわりにフノリを入れようとか、
ナチュラル成分をどう使うかといった
いろいろな厳しいルールを独自に設けて、
うちの開発チームが頑張りました。
本当にたくさんの時間がかかりましたけど、
できあがったものは
指通りのよさやハリ、ツヤも実感できたので、
髪も海もよろこぶし自分もうれしいという、
「三方よし」のものができたかなと思います。
草場
1つの商品に、
うれしいことがいくつも重なっていますね。
使用済みのネイルボトルを回収して
リユースするという、
エコな取り組みもはじめられましたよね。
渡邉 ええ、「uka reuse green study」※ですね。※uka公式サイトでの取り扱い商品です。現在は完売しております。
草場
アイデアだけでなく
実際に商品として実現されたというのが、
さすがukaだなと思いました。
渡邉
リサイクルのものを使ってるから
コストはかかってないと思われがちですが、
商品化するための工程もかかりますから、
実際はそんなこともないんですよね。
でもマニキュアを商品として扱う限り、
私たち作る側が「捨てる」ということに
ちゃんと向き合わなくてはいけないと思うんです。
うちのブランドでできる規模は限られますけど、
同じ業界のみんなからも
「やらなきゃと思ってたけど、やった人は初めて見た」
って言われたり、
「私も使い終わったらお店に持って行くことにする」
って言ってくれる方もいて、
捨て方について考える動きが少しずつでも
伝播していけばいいかなとは思います。
草場
IZUシリーズもそうですけど、
こういった商品の背景にあるストーリーを
知って使うのと、知らずに使うのとでは、
意識も変わるなと思うんです。
渡邉 たしかにそうですよね。
草場
環境にもいいということを知って使えるのは
もちろん心地いいんですが、
環境に対する意識がそれほど高くない方にとっても、
ukaの商品はシンプルに「かわいい」と思って
手に取れるものだと思うんです。
私はそれでいいんじゃないか、
そっちの方が大事なんじゃないかなと感じていて、
こうして商品を通して実践されているのが
私がukaを大好きな理由です。
渡邉
そんなことを言ってもらえると、
本当にうれしいです。
ちゃんと見てくれている人がいるんだなと。
草場
これからもずっと見ています。
今日はどうもありがとうございました。