もくじ
- 01 追いかけるより、作りたい
- 02 理想の質感と香りを求めて
- 03 “つけ方” も大切です
03 “つけ方” も大切です
草場
ヘアオイルのつけ方について伺いたいんですけど、
私の場合はクセ毛ですごく乾燥するので、
髪を若干湿らせた状態でオイルをつけるんですが、
山下さんのおすすめの使い方はありますか?
山下
「unseen HAIR OIL」は
誰でも簡単に使っていただけるオイルなので、
「こう使わないといけない」ということはないんですが、
草場さんがされているように
一度髪を湿らせてもらった方がのびがよくなるし、
水分を含んだ状態の髪をオイルでコーティングするので
収まりよく仕上がります。
つけたあとは、
コームで梳かしていただくのがポイントです。
毛先が絡んで広がっていることもあるので、
きちんと梳かすだけでも、
実はボリュームは収まってきます。
草場 コーミングが大切なんですね。
山下
はい。
やるかやらないかで、全然違います。
髪全体を粗歯(間隔が広い歯)の方で梳かして、
前髪とかは密歯(間隔が狭い歯)で整えてもらうと、
オイルが毛先まで伸びるので、
乾燥もしにくくなります。
水分が少し飛んだときに、
オイルの束感がほどよく残るのが理想ですね。
束感は、オイルだけ使うと細めで、
バームも加えると少し太くなるイメージです。
草場 すごくわかりやすいです。
山下
オイルは、束感を細くできるのが、
ヒマワリ種子油とオリーブ果実油をメインに配合した
理由なんですよね。
さらにまとめたいときはバームを追加して、
最後にもう一度
コームで梳かしてもらうといいと思います。
コームでオイルやバームが全体に行き渡るので
そんなにたくさんの量をつける必要はないですし、
きれいに整うと思いますよ。
草場
イベントなどでお客さまが
スタイリング剤をつけているところを見ていると、
顔周りはしっかりつけても、
髪の内側にはあまりつけられないので、
時間が経つと膨らんできちゃうことが多いと思うんです。
山下
そうですね。
僕ら美容師は、
一番乾燥しやすいアウトラインの毛先につけたあと、
つむじのちょっと下の、
毛量が多い部分の「内側」につけます。
この内側が見落としがちだけど、
乾燥してボリュームも出やすいんですよね。
あとは耳に髪をかけたときのラインが収まるようにして、
最後に正面の顔周りを仕上げます。
草場 そうやって意識してつけるようにしてみます。
草場
山下さんが書かれた、
オイルとバームについての開発ストーリーを読ませていただいたんですけど、
「よさを追求していくことは大変だけどおもしろい」
というところが、
山下さんらしくてすごくいいなと思いました。
美容師として仕事をされるときの山下さんからも、
それは感じます。
山下
そう、大変です(笑)。
でも、ヘアオイルもバームも
世の中にいいものがたくさんあって
飽和してる中だからこそ、
挑戦したら成長できそうな気がしたんですよね。
僕らのコンセプトに沿ったものを作るという
課題に取り組めたのもおもしろかったし、
やってよかったなと思います。
草場
「直感的に選べるもの」
というワードが印象的でした。
山下
そうですね。
使ったことがないものを選ぶというときに、
一番の選択基準になるものって
やっぱりデザインだと思うんです。
草場
たしかにそうですね。
手に取るかどうかの、一番最初の“ふるい”ですよね。
山下
オイルがたくさん並んでいるなかでも、
「これなんだろう?」って
引っかかってもらえないといけない。
それは見る人のセンスに訴えかけるデザインですよね。
たとえばこの「unseen」というロゴ、
ひとつの角度からは全部の文字が見えなくて、
ボトルを少し回してもらわないと
読めない仕組みになってるんです。
色も、半透明のボトルに白い文字だから、
ぱっと見たときに見えにくい。
見えないからこそ見たくなる、
手に取りたくなるように設計しています。
草場
なるほど。
気になりますものね。
草場
美容師としての山下さんについても
少し伺いたいんですが、
hodosを始められる前、
何店舗くらい経験なさったんですか。
山下
美容専門学校を出たあと、
渋谷のヘアサロンを2つほど経てから、
友人のサロンや
表参道や渋谷にあるシェアサロンで
フリーランスとして1年間働きました。
草場 フリーランス時代を挟むんですね。
山下
いろんなところで働くうちに、
やっぱり自分もお店を持って、
細かいところまで納得できるようにできたら
心地いいなと思ったんです。
小さいお店でも、限られた席数でいいから、
お客さまも僕も、
ちゃんと満足できる場所を持ちたいと思って、
2021年に南青山の骨董通りに
hodosのお店を出しました。
草場
それが1店舗目で、
今は全部で3店舗ありますよね。
山下
2023年の8月に2店舗目「hodos Experiment」を、
今年(2025年)の5月に3店舗目の
「hodos ephemera」をオープンしました。
草場
数年前にお一人でやってらっしゃったのが
想像もつかないくらい、
今はたくさんスタッフもいらっしゃって、
3店舗とも異なるカラーのお店ですよね。
山下
僕は事業をもっと大きくしたいとか、
多くの人にウケるタイプでもないので、
好きだと思ってくれるお客さまだったり、
信頼してくれるメンバーと一緒に
密度の高い時間を過ごせたらと思ってます。
2店舗目までは、
「新しいことをしよう」というコンセプトで作ったので、
3つめの「hodos ephemera」は少し趣向を変えて、
より上質な雰囲気に挑戦してみました。
草場
「hodos ephemera」は
席と席の間隔が広い気がしました。
山下
そうですね。
普通なら12席ほど置ける広さですけど、
僕たちの考える心地よさのために、
少し余白を持たせたいなと考えたんです。
各店舗で表現しきれていない部分もあるんですけど、
そんなふうに考えがまとまるごとに
どんどん変えていっています。
コンセプトを縛りすぎて自分たち自身が動けなくなるより、
柔軟に変えていく姿勢を重視しています。
草場
3つお店があると、
全てに目が届きにくかったり、
人に任せる部分の難しさが出てくるように思うのですが。
山下
僕自身がスタッフみんなの顔を見ながら働きたいので、
なるべく3つの店舗を行き来するようにしてます。
もちろん、代表だから自分がちゃんとしなきゃと
思うところはありますが、
最近はその気持ちをなるべく抑えて、
みんなの表情を見たり、仕事を任せたりして、
店舗全体の状態を細かく観察するようにしています。
草場 じゃあ、ミーティングも頻繁にしますか。
山下
ミーティングは多いですね。
それから、
美容師という仕事と家庭のバランスという意味で
僕自身がいい前例になれるようにしたいと思ってます。
うちには女性のスタッフも多いんですけど、
今の時間を100%美容師の仕事に使うことで
いい面もあれば、
後になって「ああしておけばよかった」と
思う可能性もあるので、
キャリアの面で早めにトライさせたり、
必要なら長めに休ませたりして、
選択に余裕を持ってもらえるようにしています。
疲れていたらいいパフォーマンスが出せないので、
全員の仕事量を7割くらいにできるように、
人と場所を増やしました。
仕事にもプライベートにも、
自分のための余白を持ってもらえるといいなと思います。
草場
店舗を増やされたのは、
そういう理由もあったんですね。
たしかに、自分に余裕があるかないかで、
考え方は全然変わると思います。
余裕がないと、楽しめないですし。
山下
そうですね。
楽しめることで、
美容師としての濃度みたいなものも保たれると思うんです。
トレンドをキャッチするのも大事ですけど、
追いかけるばかりだと新しい価値を作る側には
絶対になれない。
自分に集中できる時間を作って、
ほかの美容師さんがやってないことを提供できる方が、
お客さんにもよろこんでいただけるんじゃないかと
思ってます。
草場
スタッフのみなさんにも、
それぞれちゃんとお客さまがついてる印象ですが、
山下さんは hodos 以外の美容師の方にも
講師として教えられたりしていますよね。
自分の持っている技術を外にも伝えているのが
本当にすごいなと思って。
山下
自分のネタ帳は見せたくない気持ちもありますけど(笑)、
僕が作るスタイルやプロダクトに
興味を持ってくださる方がいるのであれば、
セミナーという形で技術をシェアさせてもらおうと。
それが刺激になって、美容師のみなさんが
盛り上がってくれるといいなと思ってます。
草場 地方でもセミナーを開かれてますものね。
山下
はい。
生活スタイルも年代も、
本当にさまざまな方たちにお会いしますけど、
僕より上の方でも、
「美容師としてもっと勉強したい!」
という熱意を持って来られるので、
そういう気持ちにぜひ応えたいというのと、
僕自身もすごく学びの多い場になってます。
草場
お忙しい中でもそうやって活動されているのは
本当にすごいです。
たくさん聞かせてくださって、
どうもありがとうございました。
山下
こちらこそ、お話できてよかったです。
ありがとうございました。