美容師の目線で、本当に欲しかったもの。

TALK

unseen
スタイリング剤はこうして生まれた

HOBONICHI

東京・表参道に3店舗をかまえる美容室
「hodos(ホドス)」。
代表の山下純平さんが作ったのが、
「unseen(アンシーン)」というブランドの
ヘアオイルヘアバーム
他にはあまりないような質感と香り、
使い心地のよさが特徴です。
ふだんから山下さんのセンスや
美容師としての腕、
働く姿勢に刺激を受けているという草場さんが、
どのような想いでプロダクトを作ることにしたのか、
山下さんにインタビューしました。

オイルとバームの使い方も丁寧に教えてくださったので、
ぜひご参考ください。

タイトル写真川村恵理

山下純平(やました・じゅんぺい)

hodos オーナー。 都内某サロンを経て、2021年にhodosを立ち上げる。 サロンワークを中心に、日々スタッフの技術向上に力を注ぎながら、全国各地でセミナーや審査員など精力的に活動。 2025年にはhodos、hodos Experimentに続き3店舗目のhodos ephemeraを北青山へオープン。 また、プロダクト開発も積極的に行い、オリジナルブランド「unseen」をローンチ。

unseen /アンシーン

ヘアスタイリストの山下純平さんが 2021年に南青山にオープンしたヘアサロン 「hodos(ホドス)」のオリジナルブランド。 「迷うことなくずっと心地よく使い続けられる製品」を目指して、 香りや質感、デザインにこだわった ヘアプロダクトが並びます。

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01 追いかけるより、作りたい

草場 山下さんにはふだんからお世話になっていて、
サロンに伺うときに
色んなお話をさせていただいていますが、
今日はあらためてブランドのことや、
山下さんの作られたものについて
伺いたいと思います。

山下 はい。
よろしくお願いします。

草場 そもそも最初に山下さんお会いした時のことを、
強烈な記憶として残っているんですけども、
私がヘアカラーで困っていて‥‥。

山下 あっ、そうでした。
草場さん、一番最初にうちのお店に来られたとき、
金髪でしたよね。

草場 そうなんです。
それまで私、
あまりヘアカラーをしたことがなかったんですけど、
急に髪の毛を明るくしたくなって、
金髪にしたんです。
でも、どうもしっくりこなくて。
そんなとき、知り合いのスタイリストさんが
すごくきれいな髪色をSNSに上げられているのを見つけて、
「どこでヘアカラーをされてるんですか」
と伺ったら、
「hodosというヘアサロンで、
山下さんという方に染めてもらっています」
と教えてくださったんです。
その時すでに山下さんは
予約が取れないくらいの人気ぶりだったんですけど、
駆け込むような形でなんとか伺うことができて、
もう、希望以上に仕上げてくださって。

山下 イメージを変えたくてヘアカラーに
挑戦されたと思うんですけど、
せっかく来てくださったので、
しっくりきて似合うようになったなという状態よりも、
もう一歩踏み込んで、
「本人のもの」のように
調整してさしあげたいと思ったんです。
というのも、
僕はふだんからヘアデザインというより
「スタイルをつくる」ことが好きで
美容師をやっているようなところがあります。
もちろん希望もお聞きしながらですが、
無難すぎるのもおもしろくないと感じるタイプなので、
そこに共感してくださる草場さんに施術させてもらえて、
やりがいがありました。

草場 山下さんにカウンセリングをしてもらったとき、
カラーの仕方もすごく丁寧に説明してくださるし、
緻密かつ正確に計算されているなと感じました。
「この人なら間違いない!」と思ってお願いしましたけど、
やっぱり仕上がりも素晴らしくて。
初回から感動してしまいました。

山下 そう言っていただけると
こちらもうれしいです。
ヘアデザインって、
もちろんビジュアルも大事ですけど、
草場さんのように自分のスタイルをお持ちの方に対しては、
“今の気分” を吸いあげたうえで、
プロとしてできる最大限の技術をご説明して、
日々気持ちよく過ごしていただけるように
施術したいなと思っています。

草場 カットの手法もそうですけど、
例えばカラー剤やパーマ剤といった薬剤も
日々進化していますよね。
それらに加えて、培ってきた技術も
アップデートしていかないといけない
世界だと思うんですけど、
山下さんは、最新の情報に対しても
常にアンテナを張ってらっしゃる印象があります。
ベテランで、技術を教える立場でいらっしゃるのに、
今の自分に満足するのではなくて、
どんどん刷新されているのがすごいなと感じて、
お会いするたびに「私もちゃんと頑張ろう」
という気持ちになるんです。

山下 美容業界って、
技術や経営スタイルも含めて、
トレンドが次々に変化していくので、
新しいものをいち早く取り入れられたら、
優位に立てるチャンスも増えるかもしれません。
でも、自分が作りたいスタイルを実現しようとすると、
「新しいものを追いかけなきゃ」というよりも、
パフォーマンスがもっと上がるようなプロダクトを
「作りたい」という探求心が出てきてしまったんです。

草場 それって、すごくいいことではないでしょうか。
その探究心が、
「unseen HAIR OIL」の開発に繋がったんですね。

unseen Hair Oil

山下 そうなりますね。
草場さんと最初に会ったときは、
まだ「unseen」というブランドはできていなくて、
草場さんの方が、僕が求めているような剤質の
オイルとかも使われてましたよね。
お互い好きなものが似てるなと感じたので、
「今、こういうものを考えてるんですけど」って
草場さんにもご意見を伺ったし、
他の美容家の方や、
厳しい意見をくださる方にも試していただいて、
調整を繰り返しながら
2023年に「unseen HAIR OIL」ができ上がりました。
メーカーさんからは2ヵ月でできるって聞いたのに、
まる2年かかっちゃいましたけど(笑)。

草場 いや、かかると思います。
これだけいいものですし。
「unseen HAIR OIL」は、
私も、ないと困るくらいヘビーユーザーです。
自分自身も毎日使いますし、
ヘアメイクの仕事でも使っているので、
幅広く使えるのがいいなと思います。
液がサラっと軽いので、すごく伸ばしやすいのと、
量の調節もしやすいです。
例えばライトに仕上げたいときは、
ワンプッシュで全体に軽くなじませれば
指通りがよくなるし、
私はクセ毛で乾燥しているので、
4プッシュくらいつけますけど、
そうすると
まとまりとツヤが出せます。
もっと使えば濡れたような質感になったりと、
使う量を調整することでスタイリングの幅が出せて、
ヘアメイクの仕事でもすごく重宝してます。

山下 「日本人の髪に合うものってどんなオイルだろう」
って考えながら、
ありとあらゆるヘアオイル、
ボディオイルまで試しました。
黒髪でしっかりした髪質の方はもちろんですが、
細い髪の方も使いたいと思えるように、
軽いけれどしっかりまとまって、
手を洗わなくていいくらいの質感を目指して、
何度も仕様を変更しました。

草場 「手を洗わなくていいくらい」は、
すごくいいですね。

山下 髪につけたあとは、
おでこや耳、首にもつかなくて、
洋服も汚れないようなイメージです。

草場 香りもすごく素敵ですよね。

山下 香りは、
サラッとしたテクスチャーに合うように意識しました。
手に取ったときはそれほど香らないけど、
つけた瞬間、
自分の周りの空間だけ香るように。
僕も自分でつけたり、人につけてもらって、
どのくらいの距離だと香るか、
どのくらいの濃さならその人自身の香りを邪魔しないか、
ということを検証しました。
香りの好みって人それぞれですけど、
だからこそ、
「不快じゃない」というところを
ちゃんと押さえたいなと思って、
美容師仲間はもちろん、一般の方、年齢が上の方、
フレグランスを作られている方など、
いろんな方に意見を聞きました。

草場 そういえば、
ある撮影のときにご一緒したカメラマンの方が
unseenのオイルを付けられていて、
編集担当の方に
「なんかすごくいい香りがするんですけど、
なんの香りですか」
って聞かれていたんです。
私もつけていたんですけど、
なぜか聞かれたのはその方だけで(笑)。
でもやっぱり、
わかる人にはわかるんだなと思いました。
メインの香りは、
「ガイアックウッド」と「シダーウッド」ですよね?

山下 そうです、ウッド系の香りですね。
ヘアオイルを作ってみてわかったんですけど、
例えば甘さが強い香りのように、
「オイルと相性がいい香り」
というフォーマットがあるんですよね。
でもそこから少しずらして挑戦したいなと思ったんです。
ウッド系の香りって、
ヘアアイテムにはあまり多くないんですけど、
香り自体は好きな方が多いので、
そういう方々がつけたいと思うような、
甘すぎず、心地いい香りを目指しました。

草場 そうそう。
ヘアオイルでわりと多いなと思うのが、
ゼラニウムとか、柑橘系の香りですけど、
「unseen HAIR OIL」
ウッド系の香りというのが、
私もすごく惹かれました。
ウッディーだけどメンズすぎない、
絶妙なバランスですよね。

山下 僕自身は男らしさも纏いたいと思っている
タイプなんですけど、
「品のある香り」を意識したときに、
男性/女性という性別に関係なく、
洗練されていて、
誰にも媚びることのない雰囲気が
香りの中にあるといいなと思いました。
ですから、世の中で流行っている香りとは
逆行するかもしれません。

草場 山下さん、ものすごく香りマニアですよね(笑)。

山下 ははは。
香りは好きですね。
でもウッド系って、
実際に作るとなると結構難しい部分があるんですよ。
「ガイアックウッド」って、
メインの香りと言いつつ、
実はそれだけ嗅いでも、ほとんど香りがしないんです。
香りというよりは、
木自体のフレッシュな酸味みたいなものを感じます。
もう一つの「シダーウッド」は
僕らがイメージするスギっぽい香りですけど、
それと混ざることで「ガイアックウッド」の香りが
立ってくるようなイメージです。

草場 なんとなくわかる気がします。

山下 そこにムスクを合わせると、
いい感じのウッディーな香りになるんです。
ムスクは、香料を増やせば増やすほど
「男っぽさ」が強くなるので、
調整には気をつけました。

草場 私も強すぎるムスクの香り、苦手です。
昔からの床屋さんで使われるような香りというか。

山下 わかります。
ダンディーな感じのね(笑)。

草場 ちょっと酔っちゃいます。
でもそのムスクも入っているということは、
やっぱり香りって、
単独でいい/悪いというよりも、
バランスが大事なんですね。

山下 そうですね。
ムスクで言うと、
後に残りやすい性質の香りなんです。
なので、ムスクが尖りすぎないように、
「イチジク」のフレッシュで
フルーティーな香りで包んで、
ウッドがより深く感じられる調合にしています。
ほかにもいろいろと入れてるんですけど。

草場 ほんとうに絶妙な香りで、
毎日使うたびにいい香りだなって感じるんですよね。

山下 これを作ってから2年たって、
「そろそろ新しいものも作ってほしい」って
周りからも言われるんですけど。

草場 いや、もうずっとこれがいいです(笑)!

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