人の手でものづくりをしていく。デザイナー岡本菜穂さんと、この10年を振り返る 人の手でものづくりをしていく。デザイナー岡本菜穂さんと、この10年を振り返る
ジュエリーブランド《SIRI SIRI》とほぼ日がつくる、
スポットライトのようなジュエリー《HOBO SIRI SIRI》。

アコヤ貝がぐうぜんつくりだす、
美しいナチュラルグレーの真珠を使った
《HOBO SIRI SIRI Pearl Collection》でデビューし、
今年は10回目という節目のコレクションになります。

デザイナーの岡本菜穂さんの
研ぎ澄まされたデザインとあらたな挑戦。
幾度もものづくりを見つめ直しながら進んできた
HOBO SIRI SIRIの10年を、
長く担当する乗組員とともに振り返り、
最新のコレクションについてもご紹介します。
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日本からヨーロッパへ。
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HOBO SIRI SIRIの最初のコンセプトが
「Tシャツ+ジーンズみたいにラフな格好でも、
これさえつけておけば、とりあえずおしゃれに見える」
というものでしたよね。
岡本
そうですね。
SIRI SIRIは2006年からやっていて、
いろいろな素材を使っていた中でも
ほぼ日さんが関心を持ってくださったのが、
無調色のパールにレザーや木を合わせた
個性的なアイテムだったんです。
マンボウのMOLA MOLAを主人公にした、
オリジナルストーリーの絵本から生まれた
コレクションでした。



私自身金属アレルギーを持っているので、
パールは身近な素材でした。
その中でも無調色という、
自然の美しさをそのまま宿したような
調色をしていないパールを使って何かできると
いいかもしれない、というご提案をしたのが
HOBO SIRI SIRIのはじまりです。
パールを使ったコレクションにしましょう、
というアイデアは岡本さんからだったんですね。
岡本
最初はほぼ日さん側も「どうかな?」と
懐疑的だったのですが、
絶対におもしろいことができる自信があったので、
強くおすすめした記憶があります。
それが10回も続いたなんて、うれしいです。
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ファインジュエリーと違って、
SIRI SIRIのジュエリーはコンテンポラリーで
個性的なブランドというイメージがあったので、
カジュアルなジュエリーというご提案にも
楽しんで乗っかっていただけたことがうれしかったです。
岡本
そもそも、私はほぼ日の読者だったんです。
そうでした。漫画がお好きなんですよね。
岡本
「ほぼ日マンガ部」にもいち早く反応していたくらい、
サブカルチャー的なものが好きで、
ほぼ日は初期の頃から読んでいました。
なので、いちファンとしてご一緒できることが
うれしかったんです。



たしかに、SIRI SIRIは
尖っているイメージを持たれがちなのですが、
私個人のパーソナルな部分とは違うところがあり、
ほぼ日さんの持つポップさと私自身にあるポップさが
共鳴する感覚を勝手ながら持っていました。
それは、長い付き合いの中でよくわかってきました。
岡本
そうですよね(笑)。
2017年のファーストコレクションは、
今見ても色褪せない
素敵なデザインが揃っています。
当時は製作にあたって、紆余曲折はありましたか?
岡本
はじめからテーマがはっきり決まっていたことと、
SIRI SIRIとは違うアプローチでデザインをできたので、
苦労した記憶はほとんどありません。
あたらしいデザインを考えるのは
とくに好きな工程なので、
楽しくデザインをできたと思います。



SIRI SIRIらしさも出せるように、
ガラスというSIRI SIRIでおなじみの技術を
取り入れました。
また、革や籐といった異素材を組み合わせることも
SIRI SIRIらしさのひとつなので、
ガラスとパールを組み合わせたアイテムも
積極的にデザインしました。
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ジュエリーは身につけてくれる人がいて
完成するデザインですよね。
岡本
そうですね。
どんな方を思い描きながらデザインされているのですか?
岡本
SIRI SIRIの場合はお洋服のイメージはありますが、
人物像はあまり固定していないかもしれません。
今でこそ男性もつけてくださいますし、
個人的には間口を広くしているつもりです。



HOBO SIRI SIRIのお客さまも間口は広げつつ、
3年前に生活のたのしみ展にはじめて
出店させていただいたんですね。
なかなかお客さまとお会いする機会がなかったのですが、
生活のたのしみ展で実際にHOBO SIRI SIRIを
何年も愛用くださっている方が来てくださって、
必然的にイメージするようになりました。
金具のバランスを考えたり、大きさを微調整するときに
そうした記憶をたどることがあります。
この10年で印象的だった出来事を伺いたいのですが、
10年前の2017年といえば、
岡本さんが留学のために
日本から海外へ移住されていたタイミングですよね。
岡本
そうですね。
今はスイスに住んでいるのですが、
当時はイギリスのブライトンに住んでいました。
ロンドンから電車で1時間ほど、
リゾート地として名高い海辺の町です。
そのエリアの浜辺は砂ではなく
石が蓄積した砂利浜でした。



2017年に発表したファーストコレクションは
日本に住んでいた頃に考えたものもありますが、
バングルとヘアタイのデザインは
イギリスのブライトンで考えました。
それは、ほぼ日さんから
「生活の中からできたものを
デザインに取り入れてほしい」
という希望をいただいたからなんです。
ほぼ日さんとご一緒していると、
作り手の気持ちだけじゃなくて、
生活を素直に表現することも
求められているなと感じます。
写真
まだ「生活のたのしみ展」がなかった時期ですが、
たしかにずっと「生活」を大事にしていますね。
岡本
ブライトンの生活を転写するように、
砂利浜で見つけた石を3Dスキャンして
バングルやヘアタイのデザインに取り入れました。
素材はアクリルです。
国産のきれいで質のいいアクリルを使っていたので、
石の形をそのまま再現することができました。



そのときに、ロンドン在住の写真家の
野田祐一郎さんに来てもらって、
嵐の中を2人で歩きながら石をひろっている様子を、
ほぼ日さん用に撮影してもらったんですね。
「寒いね」と言いながら、
ときどきコーヒーを飲んで休憩をして、
時間をかけて向き合ったことは
HOBO SIRI SIRIの礎になったかなと
振り返ってみて思います。
生活という観点ですと、
スイスの山や自然をモチーフにした
「山のコレクション」もありましたね。
岡本
スイスは山との暮らしが密接なので、
その空気感をジュエリーにしたかったんです。
メープル素材を使った、
これまでにはないジュエリーだったと思います。
そこから、山つながりで、
現在の水晶のコレクションにつながっています。
SIRI SIRIさんでもそうですが、
ジュエリーと自然が密接なところが
とてもすてきですよね。
岡本
私自身、自然の中で育ってきていないので、
逆に新鮮にうつったのかもしれないです。
ブライトンであれば海辺、スイスでは山、
それぞれの地域からのインスピレーションは大きいです。
スイスは山の国なので、
ハイキングや森にお散歩に行くと、
動物が近いですし日本で見ない自然のモチーフや色に
刺激されてデザインに活かされます。



東京で暮らしていた頃のデザインとは
変わっていると思うので、
この10年というのはとくに新鮮なデザインを
生み出していた時期と重なるかもしれません。
仕事も人生も紆余曲折あるなかで、
ずっと在り続けたのがHOBO SIRI SIRIですね。
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SIRI SIRIをやめる、という選択肢は
この10年で考えたことはありましたか?
岡本
それはなかったですね。
アイテムのバリエーションを増やしたいですし、
作るものの幅も広げたいですし、
そういう気持ちは今もずっとあります。
この10年で、周りのデザイナーや作り手で
人生設計を大きく変える人を見てきたので、
人生を選択することの意味を考えるようになりました。
私は運良くいい人たちに出会い、
チームや職人さん、いろいろな方々に支えられて
ここまで来たと感じています。
HOBO SIRI SIRIでやったことが、
SIRI SIRIに活かされることもありますか?
岡本
デザインの方向性として全然違うアプローチですが、
HOBO SIRI SIRIでチャレンジしたことを
SIRI SIRIで活かすことはあります。
サイズ感はとくに、私が大きくしがちで、
日本の女性の体格に合わせたサイズ感を
HOBO SIRI SIRIではよく考えているので、
SIRI SIRIでも参考にさせてもらうことがあります。
(つづきます。)