HOBONIKKAN ITOI SHINBUN

ほぼ日のおかし 私のためのおいしいもの

「これだよ!」のおかしを見つけました。オリオリのパイ、特別販売します。

おかしは姿も味も魅力的です。
「あれを食べたいな、さぁ食べるぞ、ああ~」
という気持ちの高まりが、夢とたのしみを増やします。
糸井重里やほぼ日乗組員が出会ったおいしいおかしを
ひとつずつ紹介していくこと、
これまでずっとやりたかったのです。
自分だけで食べてもよし、
誰かとの時間をおかしで花開かせてもよし。
魅力をみなさんと分かちあいながら、
ほぼ日からおかしをお届けしていきます。
賞味期限や生産数がそれぞれ異なるので
販売のたびに形式が変わりますが、
どうぞその都度確認しながら、おたのしみください。
まずは、パイです!
イラスト : 丸山素直

糸井重里のはなし

たのしみの代表選手。

ほぼ日
今日は糸井さんに、
おかしについて聞きにきました。
聞き手はほぼ日の菅野です。
糸井さんは、おかし全般、お好きですよね? 
糸井
あ、そう思いますか?
ほぼ日
はい。社長室に来るといつも
机の上におかしがたくさんあるので。
糸井
おっしゃるとおり、
ぼくはおかしが好きだと自分でも思います。
おかしがないとね、つまらないでしょう? 
ほぼ日
つまらない、ですか。
糸井
例えばいま、私たちがどこかへさらわれて、
おかしのない場所へ行ってしまったとします。
それ、とてもつらいですよね。
ほぼ日
つらいですが、
さらわれたことのほうが重くて、ちょっと‥‥。
糸井
ではもっと身近な例で。たとえば図書館です。
図書館の閲覧室では、
おかしを食べちゃだめでしょう? 
ほぼ日
ああ、だめですね。
糸井
学校の授業中も。
ほぼ日
だめですね。
糸井
正直いって、ちょっとつらくないですか? 
ほぼ日
考えてみれば職場によっても、
おかしNGの会社がありますね。
それはちょっとつらいです。
糸井
おかしって、いわば、
たのしみの代表選手だと思います。
おかしによって
自分の時間をもっと豊かにしたいと思ってる。
手みやげにおかしを持っていくのも
そういう理由でしょう。
「今日の時間」というものがまずあって、
それがもっと花開きますように、と願うから
人に会うときにおかしを持っていくのです。
ほぼ日
たしかに。
糸井
そんなふうな、
人がにっこり笑うひとときをつみとることは、
文化をなくす行為なのかもしれない。
おかしのない世界は、
おかしのない世界ですよ。
ほぼ日
おかしのない世界はおかしのない世界‥‥を、
想像すると、たしかにとてもさみしいです。
これまでほぼ日では、
糸井さんや乗組員のおいしいと思う食べものを
何度か紹介してきました。
「ミーちゃんちのお隣のケーキ」
「うまけりゃうれるべ市。」もそうでした。
今回は念願のおかしです。
そのひとつめを「パイ」にした理由を
お聞かせください。
糸井
去年、ほぼ日に新しく入社した人がいて、
その人のご家族がパイのお店を
開いておられたんです。
ですからその新入社員は当然のように、
お店のおかしを
最初のあいさつの手みやげにもってきました。
ほぼ日
そうだったんですか。
糸井
それを食べたら、ちょっと驚いたんです。
おいしくて。
だって、とてもシンプルなパイですよ。
ほぼ日
小麦粉と砂糖とバターの。
糸井
世に、パイ菓子はあまたあります。
「ま、これでいいや」というものも、
「これだったらいいんじゃない?」も、
「そういえばあれもおいしいよね」も、
いろいろあります。
どれも、食べてみればおいしいのです。
だからこそパイのおかしはずっとすたれず、
息長く売れつづけてきました。
まずはその事実に改めて注目してほしいのです。
ほぼ日
近所のコンビニに売っているおかしパイも、
食べたらおいしい。人気である、と。
糸井
自分で買わなくても、誰かが食べているのを見たら、
「ちょっとひとつちょうだい」
と言いたくなる、
そんな魅力がパイにはあります。
ベーシックにパイは、食べればおいしいのです。
そこでね、
「じゃあきみは、いままで食べた
パイ菓子のなかで、どれが好き?」
と問われれば、どう答えますか? 
ほぼ日
えっ。うーん。
糸井
AパイもBパイも、
どっちもいいけどどっちでもない。
Cパイだとたしかにめずらしくてうれしいけど、
はたしてそのCパイに
「私はあれがいちばん好き」と
言えるかというと、どうだろう?
ほぼ日
そう言われればどのパイでもないです。
糸井
そこで、その新入社員の
手みやげのパイを食べたとき、
「あ! これだったんだ」と思ったんです。
その「これだった」感に、
自分でちょっと驚いた、というわけです。
(つづきます。明日はパイを食べます)
2020-04-08-WED