ほぼ日の「おちつけ」インタビュー 子どもにとっていちばんの味方であるために、おちつけ。田中茂樹
子どもと暮らしていると、
不安になったり、悩んだり、焦ったり、
ときにはカッとなってしまうこともあります。
そんなとき、自分に言い聞かせたい
「おちつけ」のことば。

子育ての悩みに20年以上寄り添い続けてきた
医師・臨床心理士の田中茂樹先生に、
親と子がずっといい関係でいるための
「おちつけ」のお話を聞いてみました。
お子さんの受験や就職活動などで、
そわそわしている方に届きますように。
(4)褒めればいいってもんじゃない。
──
たとえば、学校に行きたくないとか、
不安を抱えている子に対しての接し方は、
どうするのがいいのでしょうか。
田中
それはね、そもそも親が
不登校を悪いことだと思っていることが多いです。
学校に行かないっていう選択は、
その子が編み出した、
その子がその場で選んだ、
自分を大事にする方法なんですよ。

その考え方を、ぼくはまず説明しますね。
──
なるほど、自分を大事にする方法。
田中
親が子どもの味方になれていないんですよ。
学校の味方になっちゃっています。
「どうやって学校に行かせたらいいですか?」
といった相談をされるんですよ。
親御さんが先生と相談して、
じゃあ1日だけでも来てみようとかね、
給食の時だけ来てみようとか、
どうやって学校に行かせるかの話ばっかり。
──
うーん、たしかに。
田中
「学校に行けばオッケー」じゃなくて、
子どもたちが学校に行かなくなってるのは、
学校が昔のままだからなんですよ。
たのしい場所じゃないし、教え方も昔のまま。
先生もすごい疲れていて、うつになる人も多いし。
だから、教育の仕組みを
子どもたちが拒否していることが、
いろんな形で現れてきているんだと思いますよ。
そういう考え方を知らない親御さんには、
まずぼくの考えを伝えますね。
──
親としては、自分が学校に行けていたから、
それが普通だって思いますよね。
田中
そう思うんやろね。
学校に行くことが当たり前だと思っているから、
「子どもはいつになったら動き出すんでしょうか?」
「いつまで見守ったらいいんですか?」
と不安になっているんです。
でもね、
子どもはもう動き出してるんですよ。
嫌だと思うことに対して、
勇気を持って
「学校に行かない」っていう、
みんなにはできないすごい選択をして、
子どもは戦いをはじめてるんです。

それをなかったことにして、
敵になろうとするべきではないんじゃないか。
そんなことを話し合っていくんです。
──
自分がこれまで育ってきた価値観が
スタンダードになっていると思うので、
子どもが直面してる課題が
なんでできないんだろうって思うんですよね。
田中
相談に来られる親御さんは
「学校ってあんなにたのしかったのに、
どうして行かないんだろう」
と言ってしまうんですよね。
ぼくはね、そういう方に質問するんですよ。

学校って本当に好きだった?
勉強がそんなに好きだった?
宿題がそんなに好きだった?
学校が本当にたのしかった?
学校に行きたくないと思ったことないの?

そうやって聞いていくと、だいたいは
「実は嫌でしょうがなかった」とか
「実はいじめられてた」というのがわかるんです。
それでも学校に行くしかなかったんだと
思い出していくような方もいますね。
──
自分にとってはずっと昔の記憶なので、
「たのしかった」でまとまっちゃうんですね。
田中
大人は嫌なことを忘れちゃいますし、
我慢するのが当たり前だと
思っているんです。

「嫌なこと全部やめてたら、大人になれへんやろ」
「社会っていうのはそういうもんや」
「どうやって食っていくんや」みたいな、
そういう価値観になりやすいんです。
ですが、子どものほうはそうじゃなくて、
そもそもなんで生きていかないといけないのかって
考えていることさえあるんですよ。

子どももね、自分のやり方として、
こんな嫌なところにずっと行き続けて
自分をダメにしてしまうっていうのは
生きることに役立たないと思ってるんです。
それは、小さい子どもでもそうですよ。
──
親の視点からすると、
「もっとこうしたらいいのにな」
と思ってしまうこともありますが、
子どもにとっては経験したことのない悩みですもんね。

この間、社内で話していたことですが、
「子どもの頃、あまり親から褒めてもらえなかった」
という人が、特に男性に多かったんです。
でも、その人たちも親になって、
いまは褒めることが増えているんです。
褒める、褒めないということについて、
先生はどう考えてますか?
田中
ひと昔前までは親も先生も、
甘やかしちゃいかん、自惚れさせてはいかん、
調子に乗せてはいかんという価値観が
あったと思うんですけどね。
だから、滅多に褒めたりはしないのが
美徳とされていたというのはあるでしょう。
──
いまの世の中ってむしろ、
「褒めましょう」っていうムードがありますよね。
田中
でもそれ、偉そうじゃないですか?
なんでも「よくできたね」
ってなるのは。

本当に驚いたんなら「おお!」みたいに
正直に反応したらいいと思うんですよ。
「あ、そんなんできるんや」みたいに、
その通りに伝えたらいいと思うんです。
でも、嘘はバレちゃう。
ちっちゃい子であっても、
下心があるなってわかってしまいますから。
──
褒めるというよりは、
いい反応をすることですね。
田中
「褒める」っていうのは、
こっちの方向に持っていこうって、
意図が出てくるものやからね。
本当は別の道があったかもしれん子どもを、
親が望む方向に持っていってしまう可能性もある。
褒めることによって
優等生は作ったものの、
本当にそれがよかったんかなって。


褒めることで害になることあるだろうし、
過度に称賛を求めようとする姿勢が
身についてしまうかもしれんから、
ぼくは正直に接するのがいいと思いますね。
──
褒められたくて行動する子に
なっちゃうんですね。
田中
本当に上手やなと思ったら
「おお、上手やな」って言ってあげるのは
まあいいと思うんだけど、
褒めることで親の理想に持っていこうとすると
課題達成型になっていくんです。
それは、子育てをたのしむのとは
違ってくると思うんですよね。
──
ただ褒めればいいってものじゃない。
田中
たとえば犬だったら、褒めてあげることで
褒めることしかしないようになるっていうんで、
それでいいと思うんですけどね。
でも、人間は違います。
どんな場所で、どんな生き方するかわかんないから、
多様性を保ったままで、
その子らしさが出てくるように伸ばさなあかん。
なんでも褒めればいいんだって育てて、
「こんな子どもに仕上げました」みたいなのは、
やっぱりたのしくないわけです。
それはね、
盆栽みたいなたのしみ方ですよ。

人間やから予想外のものが出てきてほしいよね。
──
これから子育てをはじめる妊娠中の方も、
いろんな本やネットの情報を読んでいて
神経質になることがあると思うんです。
「これはしちゃいけない!」みたいな
強い言い回しの記事が目に入ってきがちで、
なかなか「たのしもう」という気分になるのが
難しいこともありますよね。
田中
それも、産まれてくる赤ちゃんのことを
すごく大事に思ってるからこそ、
不安になるということだと思うんですよね。
ぼくのカウンセリングでは、
かなり深刻なケースに出会ってますけども、
親が誠実に心配している
っていうことは、
すごく恵まれた状況なんですよ。

ちゃんと食べ物があって、眠るところがある。
それだけでもう大丈夫ですよ。
「これはしてもいいかな、悪いかな」って
考えてあげられるような親が育てたのなら、
それはもう十分です。
そんなものなんだなって考えられたら、
楽になるかなと思いますけどね。
──
特に初めての出産だと、
いろんな情報が気になりますよね。
田中
そうですよねえ。
──
この時期に田中先生のお話が聞けて、
自分と子どもとの関係を見直すのには、
とってもいいタイミングになりました。
今日はありがとうございました。
田中
うんうん、それならよかったです。
ありがとうございました。
(おわります)
2026-02-03-TUE
2月4日(水)午前11時発売
ほぼ日の「おちつけ」グッズに
新商品ができました。
書いて、飾って、触って、おちつけ。
「おちつけ」グッズの新アイテムを、
ほぼ日ストアにて販売をはじめます。
新生活を迎えようとしているこの時期、
プレゼントにもおすすめです。
写真
ほぼ日の「おちつけ」ブックマーカー(2枚セット)

1,320円(税込)
焦りや不安なときのお守りに、
本や手帳にはさんで「おちつけ」。
本革製で長く使えるしおりです。
写真
ほぼ日の「おちつけ」五角鉛筆(3本セット)

777円(税込)
試験会場や、受験勉強中にも
自分を励ます「おちつけ」のことばを。
「合格」の縁起をかついだ五角形の鉛筆。
写真
ほぼ日の「おちつけ」リップクリーム

880円(税込)
リップクリームに「おちつけ」をプリント。
人に会う前や、大事な会議の前などに、
「おちつけ」のことばで緊張をほぐします。
写真
ほぼ日の「おちつけ」缶バッジ

550円(税込)
バッグやお洋服などに、飾って「おちつけ」。
デスクに置いておくだけでも
ことばが目に入ってくる大きさのバッジです。
写真
ほぼ日の「おちつけ」アクリルキーホルダー

660円(税込)
発色がきれいなアクリル製のキーホルダーに、
レーザー加工で「おちつけ」の書を刻印。
鍵や小物を取りつけて、おちついた日常を。
ほぼ日の「おちつけ」グッズ販売ページはこちら