ほぼ日の「おちつけ」インタビュー 子どもにとっていちばんの味方であるために、おちつけ。田中茂樹
子どもと暮らしていると、
不安になったり、悩んだり、焦ったり、
ときにはカッとなってしまうこともあります。
そんなとき、自分に言い聞かせたい
「おちつけ」のことば。

子育ての悩みに20年以上寄り添い続けてきた
医師・臨床心理士の田中茂樹先生に、
親と子がずっといい関係でいるための
「おちつけ」のお話を聞いてみました。
お子さんの受験や就職活動などで、
そわそわしている方に届きますように。
(3)たのしむためなんやから。
──
冬の時期って、受験などのイベントが多くて
ピリピリしている家庭が多いのかなと思うんです。
そういったデリケートな時期の人に対して、
どういう風に声を掛けたらいいでしょうか。
田中
ぼくのカウンセリングに来られる方は、
もっと深刻なことが多いですね。
自傷行為が出ているだとか、家を出ていったとか。
ただね、特に都会に住んでいる方は
中学受験でもストレスはかかってるやろうね。
しかも、どんどん低年齢化してますから。
──
早くから受験するのが当たり前という
ムードはありますよね。
田中
子どもも、そういう空気は当然感じてますね。
「友達が塾に行き出したからぼくも行く」みたいな。
昔は「5年生では遅い」と言っていたけど、
その年齢もどんどん下がってます。
でも、その流れが目指すところっていうのは、
結局、決まったルートなんですよね。
そのルートに合わせていくのが、
育児の目標みたいに
なっている気がします。
──
「失敗しないように」と
周りに合わせようとするんですよね。
田中
ま、そんな不安になっている人にこそね、
「おちつけ」って黄金のことばですよ。
自分の気持ちに対してのことですから。
相談者や子どもに対して
「おちつきなさい」って言うのは難しいです。
相手への押し付けになってしまうし、
コントロールすることになっちゃいます。



でも、相手に対して何か言おうとしている自分に
「おちつけ」を意識するのはいいですよ。
いま言おうとしているそのことばを、
何の目的があって言おうとしているのか
を振り返る。

そもそもね「なんで子どもを育ててるんだろう」って
ところまで戻って考えたらいいと思うんですけどね。
──
つい目先のことで
頭がいっぱいになりますからね。
田中
たとえばね、犬を飼っている人が
「うちの子をいい犬に育てなければ」とか
「麻薬探知犬に育てて表彰されて、
いい飼い主として誇らしくなりたい」
みたいなことまで考えて飼わないですよね。
犬を飼うってのは、たのしむためなんやから。
自分がたのしむために飼っていて、
相手にもいい気持ちになってもらうんです。
──
そうですよねえ。
田中
ぼくは、子育てについて考えるときの基本は、
犬や猫でも同じだと思うんですよ。
犬といっしょにだら~っとして
遊ぶのがたのしいわけでしょう?
バカなことしてくれるのがたのしいわけやから。
でも、犬を飼うことよりもっと贅沢で、
もっと大変な生き物を育てているんです。
それこそ、たのしむためだと思うんですよね。
子どもがいる生活をたのしむっていうか、
そんなこと言われなくてもたのしいですよね。
──
たのしいですねえ。
田中
昔だったら先祖代々の墓を守るとか、
家を継いでいかなあかんとか言われてましたけど、
いまはそんなことないじゃないですか。
子どもを産んでしっかり育てて、
立派な跡継ぎにするっていう目的が
昔のようにはないわけです。
そしたら、そんな一所懸命に勉強させて
いい学校に行かせるっていうのを
「デフォルトはこれだ」みたいな感じで
子どもに強いるっていうのはどうなんやろう。
──
ただ、その子育てを、
たのしくないと感じている方も
やっぱりいらっしゃるわけですよね。
田中
ま、そうですね。
ぼくのカウンセリングに来られる方でも、
最初は目先の問題ばかりを考えていたけれど、
カウンセリングがすすんでいくにつれて、
「そもそも、
いま生きてるのはどうしてなのか」

みたいなことを考えるようになることがあります。
──
子どもに対しての接し方や振る舞い方で
お困りの方が多いのでしょうか。
田中
自分をどう変えたらいいかなとか、
自分の問題として来られる人が多いのですが、
ま、そういう場合は解決しやすいです。
そうじゃなくて、夫や子どもがこんなにおかしいから、
どう直したらいいのかを聞きにこられる場合は、
なかなか難しいところがあります。
──
他人のせいにしてしまっているんですね。
そういう場合、どう解きほぐしていくんですか。
田中
いや、「解きほぐす」ってなると、
こちらから力を及ぼして相手を変えることになるから、
まずは話を聞いていくわけです。
相談者の方も、時間と費用をかけていらしているので、
無駄にはしたくないですよね。
だから、話すだけ話してもらうところから。
その中で、相談者の方が満たされたりして、
自分を振り返ることができるようになって
変化していくっていうことはありますね。
──
相談者ご本人が気づく瞬間があるんですか。
「これは私が影響していたんだ」みたいなことを。
田中
それは、いわゆる「洞察」ということですね。
カウンセリングをしていて、
ひらめくような瞬間が
起こることもありますが、
だいたいは、
そんな劇的なことありませんね。




週に1回とか、2週に1回やってきて、
その間に起こった出来事を話してもらいます。
「子どもがこんなことしない、こんなことする」
という報告を受けることが多いんですが、
だんだん雰囲気が変わっていくんですよ。
たとえば、楽そうな格好の服になったり、
年配の方で白髪染めができていなかったのが、
すごく綺麗に整えていらしたりとか。
そういう、気持ちのゆとりが
外見に出てくるような感じで変わっていきます。
──
へえ、心のゆとりが見た目に表れるんですね。
わが家の場合はもっと軽度なんですが、
息子のイヤイヤ期の頃なんかは、
これがずーーっと続くのかなと想像して
しんどい時期がありました。
だいたい季節がひとつ変わる頃には
問題は解決されていくのですが。
田中
小さな問題でも、どんどん妄想は走っていくからね。
そこから中学生になって反抗期になると
「この子は犯罪者になるんじゃないか」
なんて思い込むわけですよ。
テレビで怖いニュースを見ると
「うちの子もこうなるんじゃないか」とか。



ま、不登校の子の親御さんに多いんだけど、
「このまま引きこもりになるんじゃないか」
と心配される方がいらっしゃるんですよ。
どんどんエスカレートして、
「自分が90歳になった時に、
引きこもりの子が60歳になって
どうやって生きていけばいいんだ」
という、すっごい先まで一気に考えて
苦しんでしまうんですよ。
──
ああ、そんな先の未来まで
不安になってしまうんですね。
田中
そう、でも実際には、それが必ずしも
不幸になるっていうわけじゃないんですよ。
ぼくの病院では80歳、90歳の患者さんも
たくさん診察でお見えになるんだけど、
そこでお子さんの話も聞くわけですよ。



引きこもって家にいたお子さんが
雨の日に運転して連れてきてくれたり、
親子でご飯を食べにいったりして、
助けられながら暮らしている方を知っています。
うちの子は不甲斐ないって嘆きながら、
いつも買い物や病院に連れていってもらってね。
──
ああ、子どもが助けてくれたら
救われた気持ちになれますよね。
田中
一方で、誇りに思っている自慢の子どもは
東京や海外に行っちゃっているから、
親が入院するとしても付き添えなくて、
ケアマネージャーさん任せになっていたりする。
それでも自分は子どもを立派に育て上げたから
いいんだって納得しているんです。
でもそれって、子どもからの愛を
受けられていないんじゃないかなって。
何が幸せなんだろうって、
全然予想もつかないです。
──
極端な例かもしれませんが、
子育ての成功が何かってわからないものですね。
田中
そうそうそう。
(つづきます)
2026-02-02-MON
2月4日(水)午前11時発売
ほぼ日の「おちつけ」グッズに
新商品ができました。
書いて、飾って、触って、おちつけ。
「おちつけ」グッズの新アイテムを、
ほぼ日ストアにて販売をはじめます。
新生活を迎えようとしているこの時期、
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ほぼ日の「おちつけ」ブックマーカー(2枚セット)

1,320円(税込)
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本や手帳にはさんで「おちつけ」。
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ほぼ日の「おちつけ」五角鉛筆(3本セット)

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「合格」の縁起をかついだ五角形の鉛筆。
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ほぼ日の「おちつけ」リップクリーム

880円(税込)
リップクリームに「おちつけ」をプリント。
人に会う前や、大事な会議の前などに、
「おちつけ」のことばで緊張をほぐします。
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ほぼ日の「おちつけ」缶バッジ

550円(税込)
バッグやお洋服などに、飾って「おちつけ」。
デスクに置いておくだけでも
ことばが目に入ってくる大きさのバッジです。
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ほぼ日の「おちつけ」アクリルキーホルダー

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発色がきれいなアクリル製のキーホルダーに、
レーザー加工で「おちつけ」の書を刻印。
鍵や小物を取りつけて、おちついた日常を。