TOBICHIでは5年前から、
生活のたのしみ展では第1回目からの参加で、
NAOTの靴は、いつも人気を集めてきました。

「革靴なのに、スニーカーのような履き心地」。
日常履きに、ビジネスにもフォーマルにも、
そして、一緒に旅に出たくなる‥‥。
長くつきあえる、うれしい靴です。

もう「おなじみ」の感もあるのですが、
ほぼ日ストアでのはじめての販売を機に、
あらためてNAOTの宮川敦さんにお話を訊きました。

履いて、育てて、
その人だけの靴になる。

――
お付き合いは長いNAOTさんですが、
ほぼ日ストアでの販売は、今回がはじめてです。
そもそも、ほぼ日がNAOTを知ったのは、
スタイリストの轟木節子さんとのご縁でした。
ロケの時に、轟木さんが真っ白いサボを履いてらして、
「それ、どこのですか」って聞いたら、
「ナオトの」って。
「え、男の人の名前?」って思いました。
宮川
日本人の名前だと思われている方が多くて、
僕、「ナオトさんですか」って、よく聞かれるんですよ(笑)。
じつはヘブライ語で、「オアシス」っていう意味の言葉で、
「オアシスのような履き心地」みたいな感じですかね。

――
コンフォートシューズを作っている、
イスラエルの会社の名前なんですよね。
宮川
そうです。会社の歴史は80年くらいですかね。
アメリカ、オーストラリア、ヨーロッパでも販売されていて、
日本には20年くらい前から入ってきています。
僕たちが代理店になってから、今、9年目です。
――
TOBICHIや生活のたのしみ展でも大人気ですが、
なぜそんなにいいのか、率直にうかがいたいです。
宮川
いやぁ、なんなんですかね。
僕もお客さんに、ようパシッと説明できないんですよ。
だから、「とりあえず履いてみてください」って言う。
でも、こう、すごいフィットして、
やさしく足を包み込んでくれるっていうのはあると思います。
お客さんで、「マッサージされてる」とか、
「温かい」とかいう人もおられる。
足を守ってくれる、
そういう感じがあるんじゃないかなぁと思います。
――
なかでもサボが人気だとか。
宮川
人気ですね。やっぱりサボ、人気です。
脱ぎ履きがすごい楽なんですけど、つっかけではない。
普通、サボって、カポカポ脱げやすかったり、
そのせいで重く感じたりするんですけど、
NAOTはフィットするんで、そういう重さは感じないし、
シューズみたいにガシガシ歩けるっていう
機能面も兼ね備えているんで。
かわいいっていうのもありますけどね。

――
坂道でもNAOTは全然平気ですよね。
なんか吸い付くように、付いてきますよね、足に。
インソールがものすごく独特なんですよね。
宮川
取り外しできるインソールがあるんです。
厚さ1センチから1.5センチくらいの厚みのコルクで、
すごいクッション性がよくて、衝撃吸収もするんです。


2週間くらい歩くと、インソールがだんだんと沈んで、
土踏まずとか、指のかたちにピタッと合って、
その人の足型を作っていく。
ちゃんと気持ちよくアーチや足の裏を支えてくれて、
これでグッと足を捕まえてます。
だから歩いてても疲れにくい。


それがだんだんと育つんです。
生活のたのしみ展で「育てる靴」って命名してもらって、
それはもう、まさに! で。


インソールが足裏にピタッとフィットするんで、
他の人の靴を履いたら、気持ち悪いんですよ。
真っ暗闇の中でも、たぶん、自分の靴がわかるくらい。
何年か履くと、やっぱり傷んでくるんですけど、
その時はインソールの取り換えができます。

宮川
アッパーの革はイタリアのものを使ってます。
この革も初めは硬いんですけれども、
履き込むと、だんだんとすごい柔らかく馴染んで、
その人の足幅に広がっていく。
履き込んでいくとわかるかなと思うんですけど、
革の風合い、履きジワ、色味も変化していくので、
そういうのも楽しんでもらえたら、
まさに「育てる」っていうところになってるかな。
インソールも、アッパーの革もやっぱり育てて、
履いてもらえたらなぁと思います。


底の素材は合成ゴムです。
履き込んでいくと、底や踵が減ってきますけど、
たとえばこのアイリス(IRIS)のシリーズは、
アッパーとソールを手縫いしてるんで、
この糸を全部はずしてしまって、
新しいのに取り換えることができます。
こういう修理ができることも、
長く履いてもらうのにすごくいいかなと思います。
実際、そうやって履かれている方はおられますね。

みんなの「好き」を持ち寄って。

――
NAOTのみなさんは、いつも楽しそうですよね。
靴の販売はもちろんですけれど、コンサートとかもやって。
なぜやっているんですか?
宮川
好きだからです(笑)。やってみたいっていう。


初めてミュージシャンに来てもらったのは、
2011年だから、7年前ですかね。
たまたま、お菓子の本の出版のイベントで、
GOMES THE HITMANの山田稔明さんの、
トーク&ライブみたいなのがあって、
バーンとギター弾いたときに、
お客さんがもう、笑ったり泣いたりして。


大きくもない空間に、人がギュウギュウで。
それが僕、すごい感動して、
ふだんはものを売っている、その同じ空間で、
本当にいろんな可能性あるんやなって気がついて、
こんな楽しいことはないなぁと思って、
それで、ライブもちょこちょこ、定期的にやってます。
最近で言うと、落語をやりました。
それも、うちのスタッフが「やりたい」って言って。
――
スタッフの方から企画が出てくるんですね。
社長は、そこは見守るのみ?
宮川
僕は、基本全部OK出す(笑)。
「やってください」って。

――
スタッフのみなさんは、
靴屋さんに就職するイメージはなかったんですか?
なにに惹かれてNAOTに?
宮川
うーん、どうなんですかね。
それは僕もインタビューしてみたいけど。
スタッフ
私は、東京から来たんですけど、
まず奈良で働けるっていうのは大きかったですね。
奈良の、このゆったりした空気の中で、
好きなことができるっていうのは、
他にないんじゃないかと思います。
東京で仕事してたときよりも、なんか自由に、
フットワーク軽く、させてもらってる気がします。


最初、接客もやったことなかったんですけど、
「マニュアル、ないから」って言われて。
「その靴の自分がいいと思ったところを言ってみて」って。
フィッティングだけはしっかり教えてもらったんですけど、
あとはもう、お客さんと素直にお話しているだけ
という感じ(笑)。
宮川
うちはマニュアルがないんですよ、まったく。
「ここを言え」とかはなくて、
自分が、いいなぁと思う、好きなところ、
そういうのを伝えてもらえればいい。


靴だけじゃなくて、日常生活も、
「好き」がいっぱい身の回りにあったら、
幸せじゃないですか。
そういう「好き」をいっぱい集めたいなぁ、
みんなが持ち寄ったら、
すごいおもしろくなるかなぁと思って、
その「好き」を、みんなでシェアしていったら、
「楽しい」の連続かな、っていうのをやってます、今は。
奇跡的に、メンバーが、そういうメンバーなんで。
僕、奇跡やと思ってるんです。

――
本当に楽しそう。
宮川
自由です(笑)。自由にやってます。
でも、自由すぎるので、
反面、責任感も持たないと。自分自身で。
そこらへんをみんなががんばって、
バランス持ってやってくれているんで、
僕のほうがとても感謝してます。
こんないいメンバーに来てもらって。
――
東京にもお店がありますよね。
宮川
東京店は、今、週2日、金曜日と土曜日の営業で、
もう5年になるんですけど、奈良から毎回、1人通ってて、
あと、東京のスタッフさんにも来てもらって。
リレー形式で、店長さんが毎回入れ替わる。
だから、ここ、奈良は店長さんの集まりなんです。
オールスターなんですよ。


うちの仕事のしかたって、最終的には、
やっぱりお客さんに届けたいっていうことなんです。
今、接客ベースで仕事していますけど、分業じゃなくて、
靴が入荷したときも全員で荷受けして、
みんなで検品して、みんなで革調整して、
みんなで発送作業して、みんなで接客して。
全員が守りで、全員が攻撃、みたいな感じなんで、
だから、みんなが好きな意見を言える。
おもしろいアイデアも、
みんなでシェアしていけるのかなぁとは思ってます。

よろこんでもらえる靴を、ずっと届けたい。

宮川
NAOTの靴は、お客さんにすごい喜んでもらえて、
手紙とかメールもたくさんいただいて、
「ありがとう」とか、いってもらったりもするんです。
僕たち自身、全員が接客もするんで、
お客さんから直接お声もらったりもしますから、
それがすごいモチベーションになる。
届けたいっていう想いが、一番僕たちの中心にあって、
大事にしているところかなと思います。
――
みなさん、NAOTの靴が好き?
宮川
好き。NAOTの靴のファンクラブ作ったら、
たぶん、僕が一番のファン。
――
みなさん、NAOTを売っていながら、
そのよさもいちばん知っている、
最高のお客さんなんですね。
宮川
ほなら、僕たちはお客さんと同じ気持ちになってる。
なんかお客さんと喜びを分かち合える立場ですね。
――
これだけのチームワークがあったら、
靴以外の、ほかの事業もできそうじゃないですか?
宮川
うーん‥‥。
やっぱり、中心にあるのは、
お客さんに喜んでもらえることなんです。


「出合えてよかった」とか、「ありがとうね」とか
いってもらえるものがあるのかなとか思ったときに、
僕たちは、それがNAOTだった。


僕たちは、お医者さんでもないのに、
「歩くのが辛くなくなった」とか、
「いつもよりちょっと遠くに行けた」みたいな、
「歩けた」とか、そういう話を聞くと、
やりがいというか、「やっててよかったな」、
「届けられてよかったな」というのはありますね。
なんか、働いてる感じがすごいするんですよ。

宮川
僕、NAOTの靴は、足を守る靴だと思ってて、
いつも妄想してることがあるんです。


石器時代とかに、人間がこう、裸で、
ナウマンゾウとか追っかけてたと思うんですよ。
初め、裸足やったと思うんですけど、
痛いから、なんかたぶん葉っぱとか巻いたのかな。
それが靴になったとしたら、いっぱい歩ける、
遠くに行ける、ナウマンゾウを追っかけれる、
そういう、足を守るものが靴なんじゃないか。
そう考えると、なんかNAOTって、
本質的な靴というものをとらまえているのかなと思って。
だから、この靴は、すごく安心してお客さんに渡せれる、
喜んでもらえる靴なのかなって。


足をね、傷める靴じゃなくて、守る靴なのかなと。
足が痛いとね、町歩けても、つまらないと思うんで、
足を気にせずにいっぱい歩ける靴を選んでもらったら、
世界変わると。
見えるものが違ってくると。


自分に合った靴って、人それぞれあると思うんで、
そういう靴に出合ってほしいなとは常々思ってます。
それで、それがNAOTの靴やったら、うれしいなぁと、
ぼくたちは思うんです。

(おわり)