ことしのMITTANのものづくり。 MITTAN主宰 三谷武さんインタビュー

世界中で外出が制限され、
流通がとどこおってしまった今年、
外国の生地を使うことが多いMITTANは、
クリエイティブな活動をすること自体、
とてもたいへんだったと思うのです。
そんななか、知恵をしぼったMITTANの三谷武さん。
あたらしい挑戦と、幸運がかさなって、
「忙しい夏でした」とまでいうほどの充実ぶりだったようです。
MITTANの、ことしのものづくりについてききました。

くらのような小さな会社でのものづくりにも、
コロナの影響がありました。
たとえば、海外の生地が入って来にくくなった。
主に、アジアですね。インドやラオス。
だいたい、皆さん、家庭での仕事なので、
お家の中での制作は進んでも、
流通が止まってしまったんです。
それぞれの家から集荷をして、
空港まで持って行くルートすら、なくなった。
あるいは、やっと空港に着いたのに、
発送の手続きが今までと同じようには
スムーズに行かないとか。

ただ、ぼくらは、規模が小さいゆえに、
いろんなことを前倒しにして
スケジュールを組んでいたものですから、
それが幸いしました。
ですから今年の春夏もの、
2、3、4月あたりは、
普通に納品ができたんです。
いまの秋冬ものに関しても、
一部、入荷できない生地がありましたけれど、
幸運だったのは、それが多くはなかったことです。
逆に、つくった服が、イベントの中止で、
販売の機会がなくなったりもしました。
でも、それも、だんだんと、服がほしいね、
というムードがでてきたなかで、
しぜんと売れていったのは、
ほんとうにありがたいことだと思っています。
外着としてだけじゃなく、
部屋着としても、気持ちの良いものが着たい、
そういう需要があるんだとわかったのは、
MITTANとして、とてもうれしいことでした。

「ほぼ日」のみなさんも
よくおっしゃってくださることですが、
部屋着としても使え、宅配便が来ても困らず、
散歩にも買い物にも出られて、
着こなし次第で会食にも行ける、と。
MITTANのそういう個性が、
たまたま、いまの時代と合ったのかもしれません。

うだ、ひとつ、変化がありました。
それは、「ほぼ日」さんだけにお願いしていた
ネットでの通販を、ほかのお店でもはじめたことです。
それまでは、対面販売、
それも、なるべく販売会にはぼくらがそこに出向いて、
お客様と接して販売をする、
というスタイルでした。
それは「きちんと説明をしたい」ということから
決めていた方針だったんですけれど、
「ほぼ日」さんとの取組みで、
ネットの通販でも、きちんと説明をすることができる、
とわかったこと、
そして、コロナで実際にお客さんが
お店に来れないわけですから、
みなさんがお求めやすいかたちにしようと。

けれども、詳細な説明を、
「ほぼ日」さんのようにお願いすることは難しい。
なので、ぼくらのほうで、
MITTANの商品の細かい説明ページを設けたんです。

これも、取組み先のみなさんと協力して、
どうこの時代を乗り切るかを考えてのことでした。
ただネット通販を解禁しただけだと、
自分たちの今までの思いとも違ってしまうし、
やるならばポジティヴな形で変えたい。
そうすると、接客と同じぐらいのレベルの
情報を載せたものを作るしかないと思ったんです。

ちなみにそのページは、直販はせず、
あくまでも説明のためのページです。
お問い合わせがあって、うちに在庫があっても、
お客さまの近くのお店に託します。
「じゃあ、どこそこにお届けするので、
そのお店でお買い求めいただけますか」と。
それは、コロナの真っ最中に、
取組み先に一斉に連絡をして、
「そうさせて下さい」ってお願いをしたんです。

じっさいにそれを始めたのは5月ですが、
ぼくらが取り次ぐことで、
多くのお客さまにお求めいただくことができました。
そんな活動をしていたものですから、
この春から夏にかけては、とても忙しかったです。

冬ものの生産は、それと並行して進めました。
ごく一部、入ってこない生地は来年に回すことにして、
確保してある生地で、テレワークを活用して、
できる限りつくりました。

「ほぼ日」さんが秋冬ものを発注してくださったのは
コロナの直前でしたね。
これもほんとうに偶然なんですけれど、
昨年はコート類など、
ボリュームのある外出着が多かったので、
この秋冬は、部屋でも着られ、
重ね着がたのしいアイテムを増やそう、と。
きっと、いまの状況でも「着たい!」と
思っていただけるような
ラインナップになっていると思います。

(インタビューはおわりです。
明日は、MITTANと一緒に生地を開発した
織物工場の遠孫織布さんをご紹介します。)

2020-12-12 SAT