Miknits Night Trip 三國万里子さんの編みもののお店、はじまります。 Miknits Night Trip 三國万里子さんの編みもののお店、はじまります。

Miknits2022のラインナップが揃いました。
テーマは「夕暮れから夜明けまでの散歩」になったと、
デザイナーの三國万里子さん。
ごちそうのようなアランセーター、
琳派・アールデコからつながるニットベスト、
ロマンチックなショールやミトン。
foodmoodのなかしましほさんとつくった
Miknits缶も、今年も登場です。
しずかだけれど、わくわくする夜を
ともに過ごしてくれるような作品たちを
ひと足お先にご紹介します。 三國万里子さんプロフィール

02

個人的な思いを、
胸の中に探りながら。
編みものキット セーターとベストのお話

模様がたっぷりと散りばめられた
アランセーター「tell a tale」。
琳派、アールデコのモチーフをヒントにした
装飾的なニットベスト「centaine」。
大物は2つの新作が登場です。
三國さんに質問を送り、お返事をいただきました。

「tell a tale」は今季、一番にできあがった作品でした。
どのような想いで作られたのでしょうか。
名前に込めた思いもお聞かせください。

ニットデザイナーにとってアランセーターというのは、
どこからかじっても美味しい
「大ご馳走」のようなものです。
先人が築いてくれた豊富な模様の数々があり、
それらはクラシックで古びない。
現代のファッションのフォーマットにも無理なく収まり、
かつ、落ち着きや深みを与えてくれる。
手編みというメディアにおいても
毎年形を変えて取り上げられる中で、
「わたしは」今年はどういうアランが欲しいかなという
個人的な思いを胸の中に探ってみて、
生まれたのがこのtell a taleです。

いろいろあるニットの模様の中でも、
アランの柄にはとりわけ「言葉」を感じます。
その言葉を組み立てて、ひとつの個人的な物語を語る、
そういう思いからつけた名前です。

立体的な模様が印象的ですが、
どのようなイメージからモチーフを作られたのでしょうか。
一見、古くから受け継がれている模様に感じました。

一番大きい柄は古典的な模様というより、
後年世界中でアランが編まれる中で生まれた、
やや新しいタイプの模様ではないかなと思います。
スモッキングのように編み地をキュッと絞る、
少々珍しい技法を使います。
大変凹凸がはっきり出て、
実際の操作以上に効果がデコラティブなので、
編むのがとても楽しいですよ。

ねじり目のケーブルは
おそらくオーストリアのあたりが起源のもので、
アイルランドの民族博物館に所蔵されている
古いアランセーターにも
使われていたと記憶しています。
少々手がかかる模様ですが、
繊細な表情が好きで、
ここぞというところに使います。
大きな模様の脇にこのケーブルが入ると、
編み地を「引き」で見たときに
ぐっと深みが出るのです。

袖丈が短く、ボートネック風の形は現代的です。
どのようにデザインされたのでしょうか。

バランスですね。
柄の入り方がそれなりにヘヴィーでもあり、
着ていて楽なように襟元に「抜け」を作り、
形はコンパクトにしました。
ゆったりと大きめサイズがお好きな方は、
玉巻きの糸を買い足して、
身幅と丈を足していただけるといいと思います。

続いて、centaineについて。
モチーフが絵画的で、とても美しいです。
デザインのポイント、柄の特徴など
どのようなイメージでデザインされたのか教えてください。

このヴェストのために作ったモティーフは、
アール・デコをイメージした幾何学的な草花模様です。
色は、数から言えばごく単純にではあるのですが、
琳派の絵画から発想しています。

19世紀のパリ万博からアール・デコにつながる、
装飾芸術が生成されていった
ダイナミズムのようなものに惹かれます。
豊かになっていく市民階級が、
暮らしの中で使うものに
新しい美しさを求めるようになった。
そしてそのような階級の中から
装飾芸術を作り出すアーティストも生まれた。
編みものという装飾的なクラフトをするものとして、
わたしには、その時代を訪れてみたいという
強い憧れがあります。
今は2022年、
アール・デコが世界を席巻した1920年代から
およそ100年後の世界に私たちは生きていて、
そのことにしばしば感慨を覚えることがあり、
そういう意味で、このヴェストに
「centaine」という名前をつけました。
(フランス語で100の単位、
あるいは100年という意味です)

琳派については、そこからの流れで辿っていきます。
パリ万博を代表として、
19世紀から20世紀にかけてのヨーロッパには、
広く世界中の文物が集まってきました。
アール・ヌーヴォー、アール・デコという
装飾芸術のムーヴメントが生まれるために
大きな役割を果たしたのが、
日本から渡った江戸時代の絵画、
中でも「琳派」の絵画でした。

琳派は江戸時代のはじめ頃(17世紀前半)、
京都で絵師の本阿弥光悦や俵屋宗達が始めた、
装飾性の高いアートの潮流です。
幕府のお抱え絵師(狩野派)による、
いわゆる当時のメインストリームである
規範にのっとった絵とは異なる、
富裕で洗練され、教養のある町衆のための、
町衆によるアートとして生まれました。
おもしろいのが、
光悦や宗達が活躍したおよそ100年後に、
尾形光琳という人が、
彼ら先駆者へのファンアートのようにして、
自らの作品を生み出し、なんと、
またそのおよそ100年後に、
今度は江戸から酒井抱一という人が出て、
また先人に私淑する形で
自分の琳派作品を生み出した。

100年という単位で繰り返された、
ひとつのムーヴメントの変奏曲であり、
個人的なリスペクトから発した
レトロスペクティヴ(回顧)アート
とも言えるものです。

彼らの作品は、今見ても、何度見ても飽きない。
やばいくらいかっこいいけれど不思議と疲れないし、
対峙すると、すっと、こちらの心が生き生きしてくる。
近くに置いてずっと見ていたくなる。
それがアートにおける装飾性ということの意味であり、
アートと日常をつなぐ役割にもなっているのだろうなと、
琳派の作品を見ると思います。

で、ここで、わたしの作ったヴェストの話に戻ります。
わたしはそれを、琳派が生まれた400年後、
アール・デコ生誕の100年後に
ニットでオマージュをやってみたよ、ということです。

ハッとするような色選びについても、
教えていただけますでしょうか。

琳派で繰り返し描かれる画題として、
四季の草花の図があるのですが、
その色使いに影響を受けています。
渋い金の背景に浮かび上がる胡粉の白、
目を射るような緑青のエメラルドグリーン。
画面を引き締める海老茶と濃紺。
全体としては落ち着いた色調で、
着る人を引き立てます。

編む際のポイントを教えてください。
刺繍もほどこされていますよね。

柄がはっきりと出るように、
糸のテンションに気をつけてください。
配色糸を心持ち緩めにキープしていただけると、
背景に柄が埋もれずに、いい絵になります。
メリヤス刺繍は全体を編んだ後のお楽しみです。
画竜点睛の気持ちで刺してください。

(つづきます。)
2022-08-19-FRI
撮影|清水奈緒(イメージ写真)、沖田悟(商品写真)
スタイリング|岡尾美代子
ヘアメイク|茅根裕己(Cirque)
モデル|Terry(身長・175cm)(BRAVO Models)
Miknits2022 は、8月26日午前11時から販売します。 Miknits2022 ラインナップをくわしく解説! ミクニッツ インスタライブ Miknits2022 ラインナップをくわしく解説! ミクニッツ インスタライブ