HARIO Lampwork Factoryのガラスのアクセサリー

手仕事を
次の世代につなぐ取り組み。

ティーポットやコーヒー器具、
グラスやカップなどでおなじみのHARIO(ハリオ)
そのHARIOは、
手仕事のアクセサリーもつくっていました。

HARIO は1921年創業のころから、
食器やビーカーのような理化学器具を、
職人さんたちがひとつひとつ、
手でつくっていたのだそうです。
やがて、時代が移り、機械化が進むと、
職人さんたちの姿は少なくなっていきました。

「これでは、職人の手仕事がとぎれてしまう」

人の手でつくる技術を、
人の手がつくったガラスを、
次の世代に手渡したい。
職人さんたちの仕事を守りたい。
そこで、2013年にできたのが
HARIO ランプワークファクトリーです。

ランプワークというのは、
バーナーの炎で熱したガラスを、
手作業でかたちづくる手法のこと。
今、その技術を受け継ぐ職人さんたちが、
繊細でていねいな手仕事で、
清々しく透明で、光をうけてキラキラと輝く
アクセサリーをつくりだしています。

HARIO ランプワークファクトリーの
ガラスのアクセサリーの販売に先立ち、
HARIO企画開発本部の鈴木粧子(すずき しょうこ)さん、
ファクトリーではたらく
櫻田寛子(さくらだ ひろこ)さんと
藤枝奈々(ふじえだ なな)さんに、
お話をうかがいました。

その1 バーナーワーク(手加工)にかける思い。

──
HARIOさんというと、コーヒーメーカーや
ティーポットのイメージがありますね。
鈴木
はい。
1921年の創業のとき
フラスコやビーカーなど理化学用品をつくる
耐熱ガラスメーカーとして始まりましたが、
現在はキッチンウエアがメインです。

100年近く、ずっと耐熱ガラスをつくり続けてきて、
今、国内の耐熱ガラスメーカーの中では、
唯一、量産のガラスを溶融する窯を持つ会社なんですよ。
櫻田
昔は、職人さんが工場にズラーッと並んで
作っていたそうなんですけれども、
だんだん機械化、自動化されまして。
生産性はよくなって、会社の業績は伸びました。
でも、その反面、
職人さんが消えていってしまったんですね。

生産拠点の茨城の古河の工場でも、
職人さんが3人にまで減ってしまって。
私、その中の一人だったんです。
──
櫻田さんは、その頃をごぞんじなんですね。
櫻田
入社当時は工場で、
試作の仕事をメインにしてました。
それから工場といってもやっぱり、
手加工が必要な製品がありまして、その仕事を。
鈴木
ガラスの手加工を
バーナーワークといいますけれど、
自動化した量産の工場でも、
バーナーワークでしかつくれないものがあります。

で、柴田は‥‥今の会長ですけれども、
ずっとガラスをやってきておりますから、
バーナーワークにかける思いがありまして。
2013年に、「やってみよう」と。
手加工を残していかなければいけないという、
会長の思いのもと、
このファクトリーができあがりました。
──
ここは、手加工中心、
手加工そのものの場所なんですね。
櫻田
そうですね。職人の技術を残して、
若手をどんどん育成していこうということで。
今、3年めに入ったところです。
──
藤枝さんはファクトリーの立ち上げのころから?
藤枝
はい。私は大学時代にガラスを学んで。
ガラスを作ってお仕事をしたいなと思っていて、
ここに、入ることができたんです。
──
今、工房には何人ぐらいいらっしゃるんですか。
櫻田
私たちのようにフルタイムでいるスタッフと、
週2、3ぐらいで来る方とで、13人です。
作家活動をされている方も
結構いらっしゃいますから、
それぞれにあった働き方ができる
という意味でもよい場所だと思います。

あとは、全国に、
北海道、岩手、福島、茨城、奈良、
東京の大田区‥‥6ヵ所、
いっしょにやっていただいているところがあります。
そこに、作り手の方に所属していただいて、
お仕事をお願いしています。
──
全国に広がっているんですね。
お仕事として成り立つ、
という意味も大きいですね。
鈴木
ファクトリーをはじめてみてわかったのが、
「意外と、バーナーワークやる人いるんだ」
ってことでした。
ガラスの勉強をしたけれど、働く場所がなくて、
別のお仕事をされてたり。
藤枝
趣味でされてたり。
鈴木
個人で活動されている方は、
なかなかお仕事にはならないですよね。
その点、HARIOはもともとメーカーですので、
販路やノウハウもありますから。
手加工でないとできない商品を企画して、
作り手さんの仕事をつくり、
できあがったものを販売していく‥‥という。
藤枝
つくる側からすると、
この場所はありがたいです。
制作に専念できますし、
安定的にちゃんとお仕事がもらえます。
それから、大先輩、OBの職人さんが、
定期的にいらして、
いろいろ教えてくださるんです。
櫻田
OBの職人さんたちのお話や技術は
すごく勉強になります。
──
そういった取り組みが、グッドデザイン賞に。
鈴木
はい。
2014年に、
HARIOランプワークファクトリーとして、
グッドデザイン賞をいただきました。
櫻田
工房だけではなくて、この試みやしくみ全体に。
鈴木
全国に生産拠点を広げている活動も含めて、
ですね。
手加工の技術を絶やさないために、
ガラスのお仕事をする人をふやして、
ガラスそのものも広めていく、
そのシステムを、評価していただきました。

(つづきます。)

2017-12-18 MON