HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN

entoanのルームシューズ entoanのルームシューズ

2017年デビューのルームシューズが、いまやentoanの定番になりました。つくり手の櫻井義浩さん&富澤智晶さんインタビュー。 2017年デビューのルームシューズが、いまやentoanの定番になりました。つくり手の櫻井義浩さん&富澤智晶さんインタビュー。

2010年頃、靴職人の櫻井義浩さんがひとり、
浅草で工房を立ち上げた頃に原型がうまれ、
改良をかさね、2017年にデビューした
entoan(エントアン)のルームシューズ。
ふつうは、ここまで丁寧につくることがない、
といわれるルームシューズですけれど、
「いい革を使って高級紳士靴の技法で婦人靴をつくる」
櫻井さんと、パートナーの富澤智晶さんのスタイルが、
とことん、ここに生かされています。
靴が好き、というだけじゃなく、
「玄関が好き」というふたり。
靴づくりを本業としながらも、
脱いで上がったらスリッパやルームシューズを履く、
じゃあそれも自分たちでつくろう! と、
そんな自然な流れから誕生しました。
の中に、自分たちが履きたい
ルームシューズがなかったんです。
スリッパって、履きつぶして、
ボロボロになったら捨てるもの。
バブーシュのような革製のものもありますが、
あのかわいらしさは、
自分たちには合わないなと感じていました。

当時の浅草から、ここ(越谷)に越してきて、
工房を構えたとき、
住居、倉庫、工房がひとつになっていました。
いまは住まいを別にしていますが、
当時は1階が土間で靴の工房、
小上がりの先に住居と倉庫をつくっていたんです。
そこを行き来をするから、日々、脱ぎ履きが多い。
そうすると、土間で履くのに
紐靴って向いていないんですね。
そこで自分のためのルームシューズをつくろう、
となりました。
「脱ぎ履きがしやすくて、履いているときの
ホールド感もちゃんとある」というのがテーマです。
ルームシューズだけれど、ソールがちゃんとある、
という個性は、そんなところから生まれました。
「ほぼ日」さんと、2年ほどやりとりをして、
改良を重ね、2017年に「生活のたのしみ展」と、
「ほぼ日ストア」でデビューをしました。
改良は、ギザギザの「シャークソール」から、
コストと丈夫さを考えて
丸みのある「ウェーブソール」に変えたこと、
足裏のあたる中敷を、つるつるした革から、
サンドペーパーをかけ、こまかく起毛させ、
肌なじみをよくして滑らないようにしたこと。

そして今年、さらにマイナーバージョンアップで、
ソールを、すこし細かい凹凸のものに変えました。
これは、使っていたソールが
製造中止になってのことでしたが、
さらに履きやすいものになったことで、
良い変化だと思っています。

デビューしてから、
自分たちの展示会で紹介をしたり、
自社のウェブサイトでも販売をしてきましたが、
最初は1足買ってくださった方が、
家族の分を揃えてくださったり、
来客用にも使ってくださったり、
靴を脱いで上がる仕事場をもたれている
ちいさなアパレルブランドのかたが、
スタッフ用と来客用をまとめて買ってくださったり、
そんなふうにひろがっています。
「いちど履くと、手放せない」
と言ってもらえるのは、
靴職人として、ほんとうに嬉しいことです。
「どうしてつま先が反っているんですか?」
と、はじめて見た方から必ず訊かれるんですけれど、
これを履く場所は、カーペットだったり、
板の間だったり、あるいはリノリウム、タイル、大理石、
いろんな床材があると思うんですけれど、
外での歩き方に比べると家の中って
「すり足」になりますよね。
そんなとき、つま先が反っていると、
つっかかりにくいんです。
ちょっとした段差で躓くことも減る。
見た目もかわいくなるし、実用的だし、
これは取り入れてよかったと思っています。

じつは、これ、ぼくら靴職人には、
とてもあたりまえのことなんですよ。
というのも、革靴というのは、木型からして、
基本的につま先の部分が高くなっている。
専門用語でトゥスプリングっていうんですけれど、
歩きやすさのため、靴の構造として、
そうなっているんです。
その当たり前を、ルームシューズにも取り入れました。
また甲の端の始末に、
いちど縫ってからひっくり返して、
もういちど縫うことで、くるんと丸まったかたちにする
「パイピング」という技法を使っています。
履き口っていちばん力が入るところなので、
伸びてしまいやすいんですね。
なので伸びどめのため、ということと、
形が崩れにくいので、脱ぎ履きもしやすくなりました。
は、理想的なものを探して、
姫路のタンナーのかたを何度か訪ね、
素材と色を決めました。
ユニセックスなものなので、
男性的、女性的ということではなく、
また、ふだん外履きでは選ばないかもしれないけれど、
部屋のなかでアクセントになる色を考えています。

今回、「ほぼ日」さんからのリクエストで、
とりわけ明るい色をふたつ、新色として取り入れました。
革靴ではなかなか使わない色ですけれど、
ルームシューズだったら大丈夫。
おうちの時間を
楽しく過ごしていただけるんじゃないかなと思います。
予告1
STAFF

Styling/Yuta Kotani
Photo/Kozumi Higaki
Model/Yoshihiro Sakurai,
    Chiaki Tomizawa,
    Yuma Sakurai

entoanの3つの財布とふしぎなパスケース entoanの3つのバッグ