アガるボーダーシャツ メンズ篇 かっこよくしすぎないのが、 ぼくのカットソーへの リスペクトと意地なんです。

サンカッケー・デザイナー 尾崎雄飛さん

《2019年春夏の〈O2〉はこんな感じです》

もしかしたら、このごろボーダーシャツって、
「ラクだから着る」アイテムになってない?
ふとそう感じたことからはじまって、
着たときはもちろん、着る前からうれしくなるような、
「アガるボーダーシャツ」をつくることになりました。
男性向けの「アガるボーダー」をデザインしてくれたのは、
〈O2〉のメンズベーシックTシャツでもお世話になった、
アパレルデザイナー、尾崎雄飛さんです。

尾崎 雄飛(おざき ゆうひ)

サンカッケー・デザイナー。
セレクトショップバイヤー、古着店バイヤーを経て、
(有)BBAにて高品質カットソーブランド
「フィルメランジェ」を立ち上げる。
2012年に独立、「▽三角形」の屋号で、
ファッションブランド「サンカッケー」のほか、
フリーランスのバイヤー業、デザイナー業などを
生業にしている。

自分でもほしくなるものをつくれたらアガる

――
尾崎さんには以前「ほぼ日ボーダーシャツ研究所」で、
スタイリストの井伊百合子さんと
ボーダーをテーマに語り合っていただいたことがあります。
ボーダーがとてもお好きなんだなぁという
印象がそのときからあって、
今回ぜひお願いしたいと思いました。
尾崎
ありがとうございます。
あの座談会のおかげで、
ボーダーにくわしい人だと思われています(笑)
――
今回の「アガるボーダーシャツ」というお題を
お聞きになって、どう思いましたか?
尾崎
「アガるボーダー」というお題にまずアガリました(笑)
「わぁ、それはいいテーマだな」と。
ぼくもボーダーシャツは大好きなんですけど、
わりといいかげんにつくられているものが多い気がして、
さびしい気がしていたんです。
――
いいかげんというと?
尾崎
こう言っては失礼ですけれど、
たぶんあんまりボーダーを心底好きという人が
つくってるんじゃないだろうなぁ、っていう。
自分では買わないかなと思いつつ、気になっちゃって。
――
なるほど、くわしいだけに。
尾崎
だから、自分でもほしくなるようなものを
もしつくれたらアガるし、そうすると着てくれる人も
きっとアガってくれるだろうなって思いました。

なんてちょうどいい「シャリヌメ」な生地

――
どんなボーダーだったら尾崎さんはアガると思いましたか?
尾崎
まず着ごこちかなと最初に思いました。
ちょうどこのお話をいただくすこし前に、
となりにいる斎藤さんにある生地を紹介してもらって、
「これ、めちゃくちゃいいっすね!」と、
気分がアガったことを思い出したんです。
――
これを読んでいるかたに説明しておきますと、
斎藤元伸さんは、昨年のメンズベーシックTシャツや
今回のボーダーシャツを縫製してくださっている
丸和繊維工業株式会社のかたです。
斎藤さん、それはどんな生地なんですか?
斎藤
スビン綿とスーピマ綿という、2つの超長綿を組み合わせた
ハイブリッドな生地です。
尾崎
これって意外な組み合わせなんですけど、
実はほしかったバランスなんです。
シャリっとしてコシがあるスビンと、
ヌメリがあってやわらかいスーピマ、
両方がいい塩梅でブレンドされていて、
「なんてちょうどいい風合いなんだ!」と思いました。
――
(生地をさわって)
なんというか、しっかりしてるけど、超なめらかですよね。
尾崎
そう、「シャリヌメ」な感じ。
――
あはは、シャリヌメ(笑)
尾崎
シルケット加工(シルクのような風合いになる)しなくても
この光沢感が出るというのも、いいところです。
斎藤
せっかくやわらかい糸を使っていても、
シルケット加工すると生地にハリが出てしまうし、
通気性も落ちてしまうんです。
尾崎
糸の特性だけでこれだけ自然な光沢が出るのは、
すごいですよ。

かたちはプリミティブ、着ごこちは最高

――
そうやって出会えた「アガる生地」を使って、
どんなデザインをされたんでしょう?
尾崎
かたちは、ボーダーシャツの原点ともいえる、
フランス海軍の水兵たちが着ていた
バスクシャツそのままです。
「かたちはプリミティブ、着ごこちは最高」というのが、
ぼくが考える「アガるボーダーシャツ」です。
――
世の中に出回っているボーダーシャツって、
そんなに着ごこちが追求されていないんですか?
尾崎
もちろん着ごこちいいものもあるんですけど、
そういうのはデザインもひねってあることが多くて。
原典に忠実なデザインでありながら
着ごこちがいいボーダーって、あんがいないんです。
――
たしかに見たことないかも。
尾崎
ミリタリーの無骨さと、いい素材というバランスが、
デザインとしておもしろいんじゃないかと思っています。
――
無骨ということは、シンプルにできている?
尾崎
斎藤さんともパターンを分析しながら話してたんですけど、
もう、「なんで?」と思うくらいシンプルです。
――
具体的にはどういうところでしょう?
尾崎
ただ布をまっすぐに切って、
両端をペロンと内がわに折って縫うことで、
肩の傾斜をつくっています。
襟も、極端にいえば真ん中を折ってつくっています。
――
つまり、こういう状態?(紙を折って見せる)
尾崎
そうです。
まあ、袖だけはくりが入っているんですが、
長方形を折るだけで、かたちをつくっている感じです。
斎藤
ふつうは肩の傾斜に合わせてパターンをつくるんですが、
まっすぐ水平に裁断されています。
生地があまるのがもったいないから端まで使って、
切る回数をへらそうという発想だと思います。
――
ああ、すごく合理的なんだ。
だから、肩のところで生地が重なっているんですね。
尾崎
そうなんです。
ただ、この強引なつくりがめちゃくちゃかっこいい。
斎藤
もしかすると型紙すらなかった可能性もあります。
荒裁ちした生地をロックミシンで縫いながら、
襟なんかも適当に丸みをつけているのかもしれません。
肩幅も左右でちがっていたりしますし。
――
きょうお持ちいただいたフランス海軍のボーダーも、
くらべてみると微妙に寸法や縫いかたがちがいますね。
たしかにこれはプリミティブだ‥‥。

洋服づくりはいまや「CG化」されている

尾崎
当時のものは縫う人によって個体差がかなりあるのですが、
それだと現代ではなかなか許されないので、
丸和繊維さんが、当時のものをベースにしつつ、
絶妙なパターンを引いてくれました。
原典に忠実でありつつ、ひとつひとつに差が出ないですし、
なによりもきれいで着やすい。
――
そうか、いまと昔とでは、つくりかたがちがうんですね。
斎藤
いまだと、縫製する人にお願いするのにも
「だいたいでおまかせします」だと伝わらないので、
「何センチで折って、
 何センチのステッチをかけてください」
というような明確な指示を出さないと縫えないんです。
――
昔なんとなくの感覚でつくられたものを再現するために、
すごく細かい指示を(笑)
尾崎
そうそう、ほんとにそういうことなんです。
たとえば、昔のジーパンって、
ステッチが実はぐにゃぐにゃなんですよ。
そんなにきれいに真っすぐ縫えてない。
それを再現するために、当時のステッチをトレースして、
その線に沿って縫っていくっていうことを
やっている人もいたりします。
――
わざとぐにゃぐにゃの線に?
斎藤
味が出るように。
尾崎
不思議なものですよね。
で、たぶん機械でプログラムしているんじゃないかな。
わざと歪んだ線をプログラムで入れて。
――
うわ、要するに、CG化されてるわけですね。
すごいな、それは。
尾崎
このボーダーシャツも、
むかしの人の適当さを再現するために、
かなりの労力が使われています。
斎藤さんにはいやがられてると思いますけど(笑)

かっこよくしすぎないのが、
尾崎流・カットソーへのリスペクトと意地

――
パターンにムダがなく合理的なのはわかったんですが、
着たときのかっこよさにはどうつながるのでしょう。
尾崎
なんといったらいいかな‥‥。
昨年つくった〈O2〉のメンズTシャツとおなじで、
このボーダーシャツもかたちがTの字になっているから、
着たときに脇にシワができたり、生地があまったりします。
シワが入らず、体に沿うかたちがきれいっていう考えも
もちろん理解しているんですが、
でも、カットソーは伸びますよね?
正直に言うと、ぼくはカットソーについては、
生地がよければパターンはどうでもいいと思っています。
――
なんと。パターンはどうでもいい‥‥。
尾崎
やわらかくて着心地がよくて、ちゃんと伸びる生地なら、
パターンは適当でも着られるというか。
なんのためにカットソーができたかっていうと、
そのためのような気がするんです。
伸びるから、型紙のむずかしさがいらないんで、
アメリカの片田舎でも、だれでもつくれちゃうみたいな。
そこに原点と最大のよさがあるとぼくは信じて、
カットソーと向き合ってきたんです。
――
はぁー‥‥思いもよらない答えでした。
なんかそれ、すごいですね。
尾崎
だから、いつもなるべく、
パターンをかっこよくしすぎないように意識しています。
それはもう、大好きなカットソーに対する
リスペクトと意地ですね(笑)
――
いやあ、おどろいた。
長らく本気でカットソーに取り組んできた
尾崎さんがだからこその視点ですね。
尾崎
「伸びれば、だれでも、どんな体形の人でも
 着られるでしょ?
 だから、かたちはシンプルでいいでしょ?」
っていうその発想が、やっぱりいちばん好きなんで。

「ほぼ日」がこれからつくるボーダーの基準に

尾崎
これ、価格はいくらになったんですか?
――
税込み10,800円になりました。
尾崎
いいですね。この生地と思うと安いなぁ。
斎藤
安いですね。
――
安くしすぎたかな?(笑)
「ほぼ日」は卸しがない直販価格なので、
これくらいでやれるんだと思います。
尾崎
すばらしい。
――
でも、直販ということもあるんですけど、
すごくいいのができたから、
これを「ほぼ日」がこれからつくるボーダーシャツの
基準にしていけたらいいなと、ぼくらは思っていて。
尾崎
わあ、うれしいな。
――
だから、できるだけ買いやすくして、
たくさんのの人が着てくれたらいいなと思っています。
尾崎
それがいちばんいいことですよね。
――
なんか、名作がうまれた予感がします。
お二人とも、きょうはありがとうございました!

(おわりです)

メンズプリミティブボーダー
各¥10,800(税込・配送手数料別)

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