僕たちの 花火の連絡、 見えますか。  スコップ団 平了+糸井重里 対談
第4回 任せとけ、と言った手前。
糸井 震災があって、平さんは
これは俺がやんなきゃなんないことがあるぞ、
ということがわかった。
それで、突っ込んでいきました。
仕事とのバランスはどう取ったんですか?
仕事はしばらくないんだろうな、ということは、
もう、覚悟しました。
デザインの仕事なんていうのは最後の最後です。
覚悟したし、実際、ありませんでした。
糸井 ぜんぜん仕事が来なかった?
大きな会社さんからの仕事は
止まらずありましたけど、
小さいところは当然、
それどころじゃなくなりました。
それはもうわかってたんで、
こうなったら、
蓄えてるお金を自分のために使うんじゃなくて、
人のために使ってみましょうと思いました。
何か目標を決めて、それより多く‥‥たとえば、
米軍が7000リットルのガソリンを寄付しました、
と聞けば、男だったら3倍やろうっつって、
僕らは2万2000リットル寄付したんです。
糸井 ‥‥そうなの?
はい。石巻の赤十字病院へ。
あとは、交差点で止まってしまった車に、
その場で入れてあげたりしました。
糸井 そういうことをずっと‥‥。
ガソリンは、どうやって調達したの?
ガソリンはですね、
稲田に行って、
タンクローリーを持ってきて。
糸井 ‥‥タンクローリーを。
はい。これまでの仕事づきあいで、
「タンクローリー貸して」と言うと
貸してくれる人が、やっぱり‥‥
糸井 いるんだ!
はい。
糸井 それは「それまでの仕事のやり方」が
想像できますね。
はい(笑)。
仕事でも、お友だちになれる可能性が
ある人じゃないとやらない、
という気持ちがあったと思います。
その考えの延長線上に、
いまのスコップ団のメンバーがいます。
そうやって人とつながることができたら、
できることは広がっていく。
最近は、可能性を否定しないことが
人生そのもののような気がします。
糸井 ガソリンも不可能じゃない、と。
はい、それで、新潟まで買いに。
糸井 2万2000リットルをね。
そういう根性、やっぱりすごいですね。
こっちではぜんぜん、買えませんでしたから。
糸井 新潟は‥‥近いんですか、そんなに?
遠いです。
すごく遠いです。
糸井 話聞いてると、
「新潟」って、隣村みたいに言ってるから(笑)。
遠いですよ。命懸けです。
ガソリン積んで、小国峠という、
つるつるのアイスバーンを走りました。
糸井 ええ?!
高速道路が復旧するまで
ルートがなかったので、
その小国峠を通るしかありませんでした。
ガソリンの業者もその峠を知ってるけど、
タンクローリーじゃ
滑ってしまって行けないということだったんで。
糸井 危ないから。
知ってるけど、誰も行かない。
俺たちは、チェーンはいて行きました。
つるつるの道を、車がすーっと滑り出したら
降りて押したりしました。
ガードレールに足つっぱって、押して。
糸井 ガードレールに。
ガソリン積んでますから、
ガードレールに車こすって
火花散ったら危ないので、
車のドアをあけてガードレール蹴って、
足くじいたりして。
『バリバリ伝説』なら蹴って曲がれよ、ですね。
糸井 (笑)そのへんも、発想がサドンデスだね。
死ぬかと思いました、ほんとに。
でも、あきらめなければ着く。
それがね‥‥いや、
予告して来てしまったんですよ。
糸井 かっこつけて。
「任せとけ」と。
糸井 「俺がやる」と。
「俺が買ってくっから」みたいな(笑)。
糸井 言っちゃったもんだから、
引っ込みつかないじゃん、
みたいなところがありまして。
糸井 そのサバイバルゲームみたいなことは、
練習なんてできないでしょう?
ガソリン2万2000リットルなんて、
ふつうの人がふつうに暮らしてたら
運ぶことなんてないだろうし。
ぶっつけ本番です。
でも、ま、ガードレールに挟まりそうになったら
すかさず車に乗ろうとは思ってましたよ。
死にたくないし。
糸井 (笑)いずれにせよ、
どっちの選択肢も、はじめてやることですよね。
そこに妙な自信があるのが、
平さんの特徴だと思う。
はい。俺だけは死なねぇだろうと、
信じるしかなかったので。
 (つづきます)

対談場所 協力:エフエム仙台
2012-02-13-MON
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