ほぼ日では週に一度、「道場」と呼ばれる
クリエイティブミーティングがひらかれます。
相談したいこと、共有したいことを、
糸井重里を交えて自由に話しあう場です。
この日のテーマは、サンパチマイク。
糸井重里はどうしてサンパチマイクを買うのか?
気ままなおしゃべりの記録を、全4回でどうぞ!
- 乗組員A
- サンパチマイク、
ほんとうに買うんですか?
- 糸 井
- ぼくは買いますよ。
- 乗組員B
- あ、本気なんですね。
- 糸 井
- もちろん本気です。
- 乗組員A
- 値段を見てびっくりしたのですが、
サンパチマイクって30万円くらいするんですね。
- 一同
- えぇーーっ!
- 乗組員C
- はーー、高級マイクですね。
- 糸 井
- 知ってます。
ぼくは自腹で買いますから。
- 乗組員A
- 素朴な質問なのですが、
どうしてサンパチマイクなんでしょうか。
- 糸 井
- 知りたい?
- 乗組員A
- 知りたいです。
- 乗組員B
- そういえば、まだ一度も聞いてないですね。
- 乗組員C
- 興味あります。
- 糸 井
- そもそも物事というのは、
シンボリックな事象があったり、
事件があったり、人がいたり、
いろんなものがうねりとなって動きますよね。
- 乗組員A
- はい。
- 糸 井
- ギターの世界に例えるなら、
エレキギターの世界にはいろんな伝説があります。
「このギターはすごい」とか、
「あいつがこのギターを使ってたぜ」とか。
ぼくはそういうのと同じように、
お笑い、とくに漫才の世界には、
「サンパチマイク」があると思ったんです。
- 乗組員C
- ロックミュージシャンのギターのように?
- 糸 井
- そうです。
しかもギターの世界には、
ギブソンとかフェンダーとかありますけど、
漫才の世界を見てみると、
みんながサンパチマイクを使ってますよね。
たぶんそれって、
みんなが「これでなきゃ」と思っているからで、
それ自体すでにすごいことなんですよ。
- 乗組員D
- たしかに‥‥。
- 糸 井
- そこまで漫才にとってシンボリックで、
東京といえば東京タワーのようなものがあるとしたら、
オレはそれが‥‥ほしいっ!
- 一同
- おぉーーーっ。
- 糸 井
- だって、ワクワクするじゃないですか。
サンパチを持ってるって思うだけで。
- 乗組員A
- あの、ひとつ聞いてもいいですか。
- 糸 井
- どうぞ。
- 乗組員A
- 漫才師にとって
サンパチマイクが大切なものというのは、
なんとなくイメージできるんです。
でも、それを糸井さんが買ったところで‥‥。
- 糸 井
- いい質問です。
「そんなの買ってどうすんだ」という声は、
ぼくの耳にも届いています。
- 乗組員B
- あ、その声は届いてる(笑)。
- 糸 井
- そりゃあ、そうですよ。
ぼくがサンパチマイクを買ってどうするの?
- 一同
- (笑)
- 乗組員A
- わはははは。
- 糸 井
- そりゃあ、みんなそう思いますよ。
「そんなの買ってどうするんだ」って。
そう言いたくなる気持ちはわかります。
だけど、これはある種、
ぼくのお笑いへの「愛」だと思ってください。
- 乗組員C
- 愛?
- 糸 井
- 愛、あるいは、敬愛ですね。
それがあるがゆえに、
もしサンパチマイクをぼくが持っていたら、
ぼくの人生のなかで、
「サンパチマイクのある俺」が動き出すんです。
- 乗組員A
- サンパチマイクのある俺‥‥。
- 糸 井
- それは「ある」ってだけで動き出すんです。
だってそうじゃなかったら、
レスポールもテレキャスも買いません。
そもそもギター弾けませんから、ぼくは。
- 乗組員A
- 弾かないのにギターを買うんですか?
- 糸 井
- 「持ってる男」です。
- 乗組員B
- 糸井さん、いろんなギター持ってますよね。
- 糸 井
- けっこう買いました。
でも、買った時点でほんとうは終わりなんです。
だって弾かないわけですし。
一所懸命ギターを練習するなんて、
そんなの子どものやることですから。
- 乗組員B
- わはははは。
- 乗組員A
- まったく弾かないんですか?
- 糸 井
- 弾かなくていいんです。
ぼくにとってはギターが「ある」ってだけでいい。
- 乗組員D
- 「集めてる」ってことですか?
- 糸 井
- いや、コレクションともちがうんです。
「ある」です。
- 乗組員D
- 「ある」。
- 乗組員A
- そのギターはいまどこにあるんですか。
- 糸 井
- いま家にあるのは2本だけです。
オベーションというギターは、
誰かが遊びに来たときに、
弾けるやつが弾いていいように置いてます。
あと、リッケンバッカーもあります。
あれは「見る」のに必要なんです。
ジョン・レノンを偲ぶときとかに見たりします。
いま家にあるのは、その2つ。
他のギターはみんなあげちゃいました。
- 乗組員A
- あげちゃった?
- 糸 井
- ストラトとテレキャスは、
知り合いのミュージシャンにあげました。
ちなみに、ほぼ日のYoutubeで、
最初に流れるサウンドロゴがあります。
- 乗組員C
- ギターの「ウィユ~ン♪」という音ですね。
- 糸 井
- あれは、そのミュージシャンの方が、
ぼくのあげたストラトで収録してくれたそうです。
- 一同
- へぇーーっ!
- 糸 井
- レスポールはとあるバンドマンにあげました。
ずいぶん昔のことですが、
その人がレスポールに似たギターを使っていて、
「ホンモノ弾きたい?」って聞いたら、
「弾きたい」って言うから、
「じゃあ、あげる」って言ってあげました。
- 乗組員C
- レスポールをあげちゃう(笑)。
- 糸 井
- そのあとしばらくして、
彼から現金書留でお金が送られてきました。
なのであげたといっても、
それはもう彼が買ったレスポールですよね。
‥‥という流れからのサンパチ。
- 乗組員A
- 話が戻ってきました。
- 糸 井
- つまり、何がいいたいかというと、
ギターでそういう感じですから、
サンパチマイクを買ったとしても、
ぼくの家に置き場所なんかないんです。
- 乗組員A
- わはははは。
- 乗組員B
- わはははは。
- 乗組員C
- でも、買うんですよね?
- 糸 井
- ほしいです。
みなさん、想像してみてください。
誰もいないステージで、
サンパチマイクにだけ照明が当たっている姿を。
- 乗組員A
- (目を閉じたまま)かっこいいです。
- 乗組員B
- (目を閉じたまま)絵になりますよね。
- 糸 井
- ほぼ日の學校のスタジオとかで、
そういう写真を撮ってみたいんです。
他になんにもなくても、
スッと立ってるだけでかっこいいじゃないですか。
- 乗組員C
- それだけで雑誌の表紙になりそう。
- 糸 井
- でも、その写真が撮りたいからって、
会社が買うのはちがいますよね。
だってサンパチマイク、必要ないですから。
- 乗組員F
- そうですね。
マイクの数は足りてます。
- 糸 井
- なので、ぼくはじぶんで買います。自腹でね。
- 乗組員B
- サンパチマイクって、
ふつうの人でも買えるものなんですか。
- 乗組員C
- たしかに、どこに売ってるんだろう。
- 糸 井
- よくぞ聞いてくれました。
そこで登場するのが、
そちらに座っているDさんです。
- 乗組員D
- どうも。
- 糸 井
- じつはDさんの知り合いの方が、
サンパチマイクをつくる工場にいたんです。
- 一同
- えぇーーっ!
- 乗組員B
- そうなの(笑)?
- 乗組員D
- ほんとうにたまたまなんですけど、
昔、いっしょに働いていた方が出世されて、
いまはサンパチマイクをつくる工場で
社長になられていたんです。
- 乗組員B
- サンパチの社長!
- 乗組員C
- すごい展開(笑)。
- 乗組員B
- サンパチの工場ってどこにあるんですか?
- 乗組員D
- 大分県です。
- 乗組員B
- 大分県!
- 乗組員D
- 大分の「ソニー・太陽」という会社です。
サンパチマイクを製造している唯一の場所で、
現在もひとつひとつ、
手作業で組み立てられているそうです。
- 一同
- へぇーーーっ!
- 糸 井
- ね、おもしろいでしょ(笑)。
(つづきます)
2026-03-02-MON