サンパチの愛称で知られる
ソニーのコンデンサーマイクロホン
「C-38B」をつくる工場は、
日本、いや、世界で1か所しかありません。
もっというと、その工場のなかでも、
サンパチを組み立てられるのは、
限られた職人さんのみだそうです。
そんな特別な場所「ソニー・太陽」へ、
糸井重里が向かいました。
そこで見た光景、聞いた話、感じたこと、
全5回にわけておとどけします。
サンパチマイク(C-38B)について
糸 井
よーし、よーし、
ああー、いい子だいい子だ。
佐藤さん
きょうめちゃくちゃ反応がいいなぁ。
うちの看板犬のヨウさんです。
太陽のヨウ。
糸 井
ヨウさん、バイバーイ。
ありがとねー。
すみません、おまたせしました(笑)。
佐藤さん
それではご案内します(笑)。
ここは工場入口の展示スペースです。
糸 井
おっ、サンパチマイク。
佐藤さん
糸井さんも買われたサンパチですね。
そのとなりにある
「C-800G/9X」
は、
レコーディングマイクとしては
ソニーのフラッグシップモデルとなり、
専用の電源と合わせると
約200万円近くするものです。
糸 井
はぁー、すごいね。
佐藤さん
そして、こちらはヘッドホンです。
ヘッドホンの基本原理って、
じつはどれも同じなんですが、
形状や素材によって音がものすごく変わります。
この
「MDR-Z1R」
が最上位モデルなのですが、
実際に音を聴いてみますか?
糸 井
ぜひ。
佐藤さん
ソニーのヘッドホンとしては、
これがいちばんハイエンドモデルです。
糸 井
(しばらく試聴)‥‥‥おぉぉ。
なるほど‥‥ああ、音の広がりが‥‥。
うん、これはちょっと欲しくなるね。
佐藤さん
ぜひ(笑)。
糸 井
耳のお椀が大きいのも、
やっぱり意味があるんでしょうね。
佐藤さん
やっぱり大きいほうが、
細かいところから低音まで
ダイナミックレンジが再生できますので。
糸 井
やっぱり大きいほうがいいんだね。
佐藤さん
それでは、さっそく工場の中をご案内します。
糸 井
おぉー、広いなぁーー。
ワンフィールドですね。
佐藤さん
もともとは壁があったんですけど、
風通しのいい職場にしましょうということで、
いまはもうすべて取っ払っています。
糸 井
デスクワークの人も組み立ての人も、
みんなここにいるんですか。
佐藤さん
そうです。
糸 井
はぁーーっ。
佐藤さん
この工場の特徴としては、
よく見ると作業台の高さがデコボコしてます。
糸 井
それぞれ高さがバラバラですね。
佐藤さん
デスクの高さは昇降機で、
自由に上げ下げできるようになっています。
立って作業する人、座って作業する人、
車椅子の人など、それぞれ高さがちがいます。
糸 井
つまり、人に合わせられるんだ。
佐藤さん
あと、何を作るかによっても変わります。
作業台の上の部分については、
現場と生産技術メンバーがいっしょになって、
その人にあった最適な環境をつくっています。
糸 井
工場内の見通しがいいし、
新人は先輩の仕事ぶりが見られるわけだ。
佐藤さん
先輩の背中を見ながら、
仕事の技術をどんどん教わったり。
糸 井
職人さんの仕事場ですね。
佐藤さん
うちはものづくりの会社なので、
生産性と品質を確保しないといけません。
すこしでも効率的にはたらけるように、
すべての部品が手の届くところに置ける、
そういうセル構成にしているんです。
糸 井
おぉー。
佐藤さん
これは「ものづくりの日本大賞」を
受賞したときからつづく考え方なんです。
なるべく作業するところは小さく、
取り置きのムダは少なく、
その人の持てる力を発揮しましょう、
ということでやっています。
糸 井
その仕組みの設計は、
どういう部署の方がやるんですか。
佐藤さん
製造技術生産技術のメンバーが、
現場と一緒になって考えています。
糸 井
「もうちょっとこうならないかな」
みたいなことをお互いに言い合いながら。
佐藤さん
お互いにコミュニケーションを
取りながらやってるという感じですね。
糸 井
昔から知っている工場のイメージとは、
だいぶんちがいますね。
佐藤さん
あと、上を見ていただくと、
ところどころカーブミラーがあります。
糸 井
半球状のミラーですね。
佐藤さん
ここは車椅子の従業員も多いので、
死角になりそうな通路には、
こういうミラーを置くようにしています。
糸 井
ぶつからないように。
佐藤さん
他にも「フリッカーランプ」という、
ピカピカ光る点滅灯も一定間隔であります。
災害時はサイレンが鳴りますが、
聴覚障がいのある方にはわからないので、
ストロボの点滅で気づくようにしています。
糸 井
大事なことですね。
佐藤さん
それではここからのエリアは、
担当の奥山にバトンタッチします。
奥山さん
このエリアは、
耳型からつくるオーダメイドイヤホン
「Just ear」
を製造する部門です。
糸井さんもユーザーだということで‥‥。
糸 井
あ、俺がいる(笑)。
奥山さん
糸井さんのお写真をお借りしています(笑)。
糸 井
そうか、あのイヤホンもここで?
奥山さん
じつはそうなんです。
糸 井
なにかと縁があるなぁ(笑)。
奥山さん
2017年よりソニー・太陽で生産をはじめました。
おひとりずつ耳の型にあわせてつくりますので、
完全受注生産となっています。
糸 井
完全オーダーメイドですよね。
ぼくもけっこう待った記憶があります。
奥山さん
お客様の耳型がここに届いてから、
最終的な完成品ができるまで、
ひとりがつきっきりで作業しても丸2日かかります。
慣れた人でそれくらいなので、
新人だと最初は1台つくるのに
2週間くらいはかかるみたいです。
糸 井
はぁ、ここでつくっていたんだね。
奥山さん
さらに、この先の部屋に入っていただくと‥‥。
糸 井
‥‥‥‥。
奥山さん
‥‥‥‥音が響かないんです。
糸 井
うん。不思議な感覚ですね。
奥山さん
ここは「無響室」と呼ばれる部屋です。
音の響かない部屋になっていて、
ここで製品の最終的な評価をおこないます。
糸 井
音の響かなさがすごいね。
▲ソニー・太陽株式会社:プロダクトビジネス部 奥山雅彦さん(左)
奥山さん
他の工場の「無響室」とちがうのは、
ここは車椅子でも入って来られるように、
入口がバリアフリーになっています。
糸 井
あ、段差がないんだ。
奥山さん
ふつうは床下にも吸音材を入れるので、
部屋を底上げをして階段をつけます。
でも、ここは入口をフラットにしたいので、
逆に床のほうを削って、
地面のなかに吸音材を敷いています。
糸 井
床を下げてるんだ。
佐藤さん
バリアフリーの無響室というのは、
けっこう珍しいと思います。
糸 井
でも、ここでは当たり前なんですね。
佐藤さん
ここには障がいのある方が
6割ほどいるんですけど、
ときどき「そんなにいる?」ぐらいの感覚になります。
当たり前のようにバリアフリーですし、
なんでもじぶんたちでやれちゃうので。
糸 井
その人が必要とするものが、
自然なかたちで用意されているんでしょうね。
佐藤さん
結果として、ここにいると、
障がいの有無も気にならなくなりますね。
糸 井
溶け込んじゃってますよね。
佐藤さん
ちなみに、これは車椅子用の空気入れです。
糸 井
壁のなかにあるんですね。
佐藤さん
こういう設備なんかも、
あとで必要だから付けたとかではなく、
ここを建てたときからあるんです。
車椅子の人にとっては必要なものなので。
糸 井
はぁーーっ。
佐藤さん
そして、おまたせしました。
この先にあるのが、
サンパチマイクをつくるエリアになります。
(つづきます)
2026-03-31-TUE
(C) HOBONICHI