私、ほぼ日の松本には
「灯台守」という職業への憧れがありました
(
こんなコラム
を書いたくらいです)。
でも、具体的にはどんなお仕事だったのか、
そういえば詳しく知りませんでした。
どんなことを考え、
どうやって灯台の光を守ってきたのだろう。
日本最後の有人灯台「女島灯台」で、
灯台守の歴史を見届けた前畑正信さんに、
うかがってきました。
灯台守は、やっぱりかっこよく、
想像以上におもしろかったです。
前畑正信さんプロフィール
部埼灯台の内部に入りました。
前畑さんと、海上保安庁の木下さんが
ご案内くださいました。
木下
これはですね、「監視制御装置」といって、
灯台の明かりをつけたり消したり
するための機械です。
監視制御装置
(2025年12月の取材当時。現在は機器換装されています)
木下
灯台の状態異常‥‥光が消えてますとか、
電気が来てませんとか、そういった情報を信号として
部埼灯台を遠隔監視しているところに送る役割もあります。
ちなみにこれは、部埼灯台には
全然関係のないものです。
▲防波堤灯台の頭の部分
──
関係ない。
木下
はい、関係ないです。
部埼灯台でのイベントで使った、
別の防波堤灯台の頭の部分です。
重くて運ぶのが大変なので、
ひとまずここに置いてます。
いま、防波堤の灯台はほとんどLEDに
なってますけど、これは「300ミリ灯ろう」
という古いタイプです。
レンズの直径が300ミリ、30センチなんです。
──
防波堤にある灯台は、港や無人島にある灯台より、
ちっちゃいっていうことですか。
前畑
はい、小さいほうですね。
防波堤灯台は、
そんなに長い距離に光を届けなくてもいいので。
そして、小型灯台の多くは、レンズが回らないです。
レンズの回転によって光り方を変えるんじゃなく、
なかの電球をつけたり消したりして、
灯質をつくるタイプです。
──
灯台とひとくちに言っても、
いろんな種類があるんですね。
前畑
生活用の時計がなかったころは、灯台の構内に、
必ずこんな日時計がありました。
──
灯台にとって、時間は重要だったんですか。
木下
暗くなったらすぐ光をつけて、
明るくなったら切らなきゃいけなかったからね。
現在は、光を検知する機械が自動で
昼か夜かを判断して、
灯台の光をつけたり消したりしています。
上にものぼりますか?
──
いいんですか、お願いします。
──
うわぁ、初めて入りました。
前畑
落ちないように気をつけてね。
──
はい。うわー、すごい。
前畑
このレンズの回転のタイミングで、
灯質が決まるわけです。
ここは、レンズが1、2、3、4、5、6、7枚に
分かれていますよね。
だから、レンズが1回転するあいだに、
6回点滅します。
──
なるほど。灯台によっては、レンズの枚数が
もっと多かったり少なかったりするんですね。
前畑
そうです。3枚しかないところもあるし、
2枚しかないところもある。
レンズは灯台にとって命だから、戦争のときは、
レンズを外して地面のなかに埋めてました。
──
隠すためにですか?
前畑
そう。レンズが壊れたら、
もうどうしようもないので。
敵方も「灯台のレンズを壊せば、
船の目印がなくなる」とわかっていたから、
灯台は機銃掃射でハチの巣にされたわけです。
外の窓ガラスは割れてもなんとかなるけど、
電球を覆っているレンズが傷ついたら、
灯質をつくれなくて、灯台としての
役割を果たせなくなってしまうので、
レンズだけは、灯台守が外して埋めてた。
それを戦後また掘り出して、嵌めたんです。
ですから、いまでもレンズは全部外れるんですよね、
1枚1枚。
──
戦時中に一度取り外されたレンズが、
いまでも‥‥すごい。
前畑
すごいですよ。建物自体もね、
まぁ、よう頑丈につくってましたよ。
前畑
レンズのなかに電球がふたつあるでしょう。
ひとつが切れたらね、モーターがガーッて回って、
もうひとつの予備のレンズに切り替わるわけです。
(2025年12月の取材当時。現在はLED化されています)
──
へーっ。
前畑
ふたつとも切れたら重大な事故になるので、
モーターじゃなくて人力で
電球を交換していたころは、
1個切れた時点で、すぐ交換のために
飛んでいきました。
外も出てみますか。
──
出てみたいです。
──
おお‥‥けっこう高くてヒヤヒヤします。
このベランダのような部分は、
どういうときに使っていたんですか。
前畑
窓ガラスを外から磨かないといけないから、
ここからさらに上にのぼったんです。
──
のぼる?
あそこにですか?
木下
そうそう。当時、買えなかったんです、はしご。
だから命綱をかけて、窓のところまでのぼって、
磨いていました。
──
す、すごい。
前畑
まあねぇ、どうせ、
雨が降ったらきれいになるんだけどね(笑)。
できるだけ遠くまで照らすっちゅうのが
使命だったから、毎日磨いてたわけですよ。
(明日に続きます)
2026-04-14-TUE
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