おいしい店とのつきあい方。

103 飲食店の新たな姿。その23
サービスの「プラスα」その4 ご挨拶

さて、サービスの3ステップ目、
挨拶です。

お店に入るときに
もう挨拶は終わっているんじゃないの‥‥、
って思いますよね。
たしかに「いらっしゃいませ」と挨拶される。
でもそれは「お店に入ってもいいですよ」
ということであって、本当の挨拶は
テーブルに案内されて一旦落ち着き、
さぁ、どうしようかと思うタイミングではじまるのです。

「いらっしゃいませ」

座ったテーブルにサービススタッフがやってきて
にこやかに挨拶をする。
そのスタッフが着ているユニフォームは
パリッとしていて清潔で、胸に名札がついている。
あぁ、この人が
ボクのテーブルの担当をしてくれるんだなぁ。
それなら安心だ‥‥、と感じた。
それが10点中5点の状態です。

手ぶらで挨拶するよりも、
なにか気が利いていて
的確な手土産があると挨拶の効果も俄然、アップします。

飲食店のテーブルに運んでお客様がよろこぶ手土産。
いくつかあります。

挨拶をしにくるスタッフの手には
大抵、お水が入ったグラスか、
お茶の湯呑があるものです。
サッと差し出されたお冷やお茶の状態がよければ
+1点です。
どこか1か所にまとめて置かれるのでなく、
ひとりひとりの前に丁寧に配られて+1点。
一緒におしぼりなども配れることもあり、
テーブルの上が一気にそれではなやかになる。
お酒をたのしむお店の場合は、
お水が最初には提供されない。
かわりに「お飲み物はいかがなさいますか?」と、
ひとこと聞かれる。
そのタイミング、注文の控え方の気持ちよさで+1点。
たのんだ飲み物がスピーディーに運ばれて
+1点ということになる。

続いてメニュー帳が差し出されます。
人数分。
ひとりひとりに手渡されたメニューが
キレイで汚れていないものであれば+1点。
手渡すときにお客様の顔をひとりひとり見ながら
笑顔をたやさず丁寧に‥‥、で+1点。
ちなみに手渡されたメニューが
メインのメニューあり、
時間帯別のメニューあり、
季節メニューやおすすめメニューと、
何種類ものメニューブックがあるお店はマイナス1点。
何が売れるかわからない気持ちの迷いが
何種類ものメニューを作らせてしまうのですね。
そういう店にいい店はなし。

いらっしゃいませと言いながら
お冷を笑顔で一人ひとりに手配りし、
キレイに整えられた簡潔なメニューが笑顔で渡される。
それができれば9点のご挨拶です。

もうあと1点は‥‥、というと、
これが簡単なようでむつかしい。
そもそもこの「ご挨拶」はなんのためにするのか。
その目的は「このテーブルの担当は私です」と
宣言すること。
なにか問題や、ご要望があれば
私に声をかけていただければ
なんなりと対応させていただきます‥‥、
とお客様に暗に伝えることが挨拶。
わざわざ「テーブルの担当は私です」と言わなくても、
テーブルサイドでいらっしゃいませと言うときの
自信に満ちた表情や、
信頼に値する姿勢を感じることができれば
最後の1点に値する。
これで10点満点のご挨拶。

ただ、人手不足の今では絶滅寸前です。
水やお茶の入ったポットをテーブルの上に置いて
お客様まかせにしてしまう店も多くなった。
メニューは持っていくものではなくて、
テーブルの上に事前において置くものになってしまった。
それでもポットの中の水やお茶の状態が良ければ1点。
メニューがきちんと整理されていれば1点。
7点、あるいは8点でよしとせねばいけない時代。
しょうがないなと思います。

2019-10-24-THU