おいしい店とのつきあい方。

067 食いしん坊的 外食産業との付き合い方。その32
分業が進んで、いま。

人手不足の時代になるまで
飲食店が経験してきた3つの悩み。

仕組み。
コンセプト。
それから集客。

どれもお金の力でなんとかなった悩みでもありました。
解決方法のほとんどすべては
大企業のチェーン店からはじまって、
それを真似することで
小さなお店が悩みを解決していくという状況が
ずっと続いていたのです。

ところが今回の悩み。
人手不足という問題に関しては
若干、様相が違って見える。
大企業ほど悩みは深く、
しかも問題解決に向けての道のりが険しく
先が見えない状態。
特にファミリーレストランチェーンは泥沼です。


そもそもファミリーレストランは
人手を必要とするようにできている。
中でも厨房の仕組みはとても複雑。
飲食店ではいくつもの調理工程を経て料理ができる。

食材を切ったり形を整えたりする‥‥、
つまり「仕込む」。
素材を鉄板や網の上に置いて「焼く」。
フライパンや鍋を手に持ち
調理器を動かしながら焼く‥‥、
つまり「炒める」。
「揚げる」。
「煮る」。
出来上がった料理を「盛り付ける」。

料理を作るということは、
これらすべての工程ができるということ。
習熟するのに時間がかかる。
ホテルなんかだと厨房に入って一人前になるのに
最低でも10年はかかるといわれるし、
独立して店をもとうと思ったらそれに加えて
5年から10年、余分に修業しないといけない。
‥‥、そんなふうに言われたりする。
店を持つということは、
献立を作ったり、
一度にいくつもの仕事を同時にしなくちゃいけないから、
その分、知識と経験が必要だからというわけです。

でも、人を育てるのにそんなに時間をかけていたらチェーンストアなんてできない。
外食産業がとるべき道は2つありました。
ひとつは分業を徹底すること。
あなたは焼くだけ。
あなたは炒めるだけ。
あなたは仕込みをするだけネ‥‥、
とすべき仕事を分担して徹底すれば、
技術がなくて経験の浅い人が集まっても
料理を完成させることができる。

もうひとつの選択肢は「専門化」。
うちの店は焼いて仕上げる料理だけ。
いやいや、うちは揚げ物だけを提供すると割り切れば、
厨房で働く人は一つの調理法を繰り返し繰り返し
行えばいいわけだから、自然と早く習熟をする。

けれどチェーンストアが大きくなった時代には、
専門化はそのままお客様の層や
利用動機を狭めてしまうことになるからと
ほとんどの会社が「分業」することの方を選んだ。
結果、ファミリーレストランを中心とした
チェーンストアの厨房は大きなスペースに、
焼き場、揚げ場、仕込み場、盛りつけ場と
作業ごとに特化した調理場が並ぶことになる。
ひとつの調理場にはひとり、
調理人が専属で立つことが想定されていて、
一般的なファミリーレストランでは
4人調理人がいないと厨房が機能しないようになっている。

調理人4人分の給料が出せるお店の規模や
立地にこだわって出来上がっているのが
ファミリーレストラン。
ところがかつてに比べて平均で売上高は
60%ほどまで少なくなったと言われる。
それでも厨房の機材配置や
構成を変えることができない限り
厨房の中には昔通りの人が必要になってしまう。
分業がしっかりしていない街場の洋食屋さんとか
小さな食堂ならば、
売上の多い、少ないに合わせて
臨機応変に厨房の中のスタッフの数を
加減することができるのに、
チェーン店ならではの苦労の今は真っ最中。

抜本的な解決を‥‥、と、
ファミレスチェーンも必死に新たな業態開発をやっている。
例えば、ロイヤルホストが先日、
とんかつ専門店を開業しました。
理由を来週。
分業じゃなくて専門化、というお話です。

2019-02-14-THU