おいしい店とのつきあい方。

057  食いしん坊的 外食産業との付き合い方。その22
スマホはカバンの中に。

キチンとしたサービスが提供できるテーブル数は
4テーブルまで‥‥、という法則が、
ずっと外食産業の定石でした。

「何人まで」でなく
「何テーブルまで」と決め事をするのは、
サービスは人単位ではなく、
テーブル単位で行われるものだから。

それゆえ、ひとテーブル当たりの客数が少ないお店は
効率が悪い店‥‥、と言われてもいた。

かつてファミレスが外食の覇者だった時代の
ひとテーブル当たりの平均客数は3名以上。
ところが今では2名弱。
ファミリーという単位で外食するとき、
ファミリーレストランが選ばれなくなってしまった、
というのがひと組あたりの人数が減った大きな理由。
ファミレスが王座を明け渡したのは
焼肉に代表されるオーダーバイキングのお店か居酒屋。
どちらも、多くの人数で行ったほうがたのしく、
得するという特徴がある。
ひとテーブルあたりのお客様の人数が多いということは、
それだけサービススタッフが稼げるということでもある。
ココが大切。


ちなみにあくまで「4テーブルまで」というのが
重要なところでもあって、
サービスがいいことで差別化されているお店の場合は
ひとりが担当するテーブルの数は少なくなっていく。

フルサービスのフランス料理のグランメゾンでは、
テーブルひとつに基本はひとり。
昔のホテルのメインダイニングは
みんなそういうお店だったけど、
今ではそういうところもすっかり少なくなった。

テーブルサービスのサービススタッフの
適正人員の基準もずいぶん変わってきている。
先日、大手チェーンの本部でたまたまこの話題になって、
今の基準をきいてびっくりしました。

曰く、ひとりで担当するテーブルは6つから8つ。
店によってはサービススタッフを呼ぶための
装置を設置していて
そこだと8つから10個のテーブルを担当する。

それは大変でしょう‥‥、と言うと、
それだけのテーブルを担当して
お客様を怒らせないように工夫をするのが、
今の経営なんですよって言われて再びびっくりしました。

スタッフひとりで
10テーブル以上を担当させようとすると、
セルフサービスにしない限りは無理、
というのもわかったという。

ボクはお店に入るとまずテーブルの数を数えます。
ファミリーレストランのような
チェーン店がやっているお店は
だいたい20テーブルから26テーブル。
居酒屋なんかもだいたいそのくらいのテーブル数。
家業経営のお店だと10テーブルから12テーブル。
オーナーシェフのビストロのような店だと
4つから6つというところでしょうか。

そのテーブル数に対して
サービススタッフが何人いるのかを確認して、
サービスを期待していい店なのか、
サービスは我慢して料理そのものを
たのしむ覚悟をするのかを決める。
テーブルの数に対してスタッフの数が少ないときには
「たのしい会話をたのしむのにぴったりの店」
だと思えばいいんですよ‥‥、と昔、書いたことがある。

今では会話ではなく、みんなスマホを見ているもので、
提供時間が若干遅れたり
サービスに少々の不手際があっても
お叱りを頂戴することがすくなくなりました‥‥、
とも彼らは言うのです。

そう言えば、牛丼の最大手チェーンの経営トップが、
業績悪化の理由のひとつに、
今の人は待たないことより
待ってでも納得のいくものを食べることを選ぶ傾向が
強くなった。その理由はスマホだ‥‥、
なんてことを言っていたりもするほど、
お店でスマホを見る人たちが多くなった。

テーブルの上にスマホを発見すると
サービススタッフはホッとする。
ホッとさせてちゃいいサービスは得られない。
サービス不毛の時代だからこそ。
サービスが節約されて当然と思われている今だからこそ、
濡れ雑巾から絞り出されるサービスを
優先的に自分たちのテーブルの上に‥‥、
と思えばスマホはカバンの中に。

また来週といたしましょう。

2018-12-06-THU