おいしい店とのつきあい方。

039  食いしん坊的 外食産業との付き合い方。その4
焼肉専門店のオーダーバイキングの価格設定。

焼肉専門店のメニューは、
レストランのメニューとしてはちょっと独特。
「ひと皿」の単位が何を意味するのか、
そのメッセージが曖昧なんです。

定食屋さんとかファミリーレストランの「ひと皿」は
お腹いっぱいになることができますよ‥‥、
というメッセージ。
居酒屋の「ひと皿」は、
それでお酒が一杯飲めるという分量になっている。
それに比べて焼肉店の「ひと皿」。
あるいは「一人前」。
それでお腹いっぱいになれるかというと
決してそんなことはなく、
ならば居酒屋のように酒の肴として
割り切れるかと言うとそうでもない。

焼肉店で食事をするということは、
その「メッセージ不足の一人前」を
何皿も、お腹いっぱいになるまで頼み続ける‥‥、
というコトになる。

タン塩がある。
カルビがあってロースがあって、
ホルモン類なんかのお皿もあります。
いろんなものを選んで好きなように
たのしむことができるというのが焼肉店のいいところ‥‥。
でもあるのだけれど、調子にのって注文すると
いくらかかってしまうのかわからなくなってしまう。
それが不安の種。


そのお客様の不安を取り除けば
もっとお客様が気軽にやってくるに違いない。
そう思ったお店がオーダーバイキングというシステムを
焼肉店に持ち込めないか‥‥、と思案する。
そもそも焼肉は他のお店に比べて、人件費が安くすむ。
厨房でする作業のほとんどは肉を切って盛り付けるだけ。
ホールサービスの人がお皿を運んだら、
お客様が焼いて食べる‥‥、
つまり調理をほとんど必要としない。
だからオーダーバイキングとの相性はいいはず。
ただ、いくらの価格を設定すれば利益を確保できるのか。
そこが一番の心配でした。

最初にチャレンジした人はこう考えました。
もし、お客様が肉ばかり焼いて食べたら
どうなるんだろう‥‥、って。

一般の人は300gから350g、
お腹の中に食べ物が入ると腹八分目を感じます。
500gで満腹感。
700gもお腹に収めてしまえば
普通の人は動けなくなるほどの満腹を感じるんだ‥‥、
と言われてる。

一方、スーパーで売られている輸入牛肉の値段が
100gで350円ちょっとというのが平均値。
国産牛肉だとそれが800円ほど。
飲食店が大量に仕入れると2、3割は安くなる。

輸入牛を使ってメニューを作りましょう。
牛肉だけじゃなく豚肉や鶏肉などを品揃えにくわえれば
原価はもっと下がるでしょう。
例えば100gで300円と設定してみる。
すると普通の人で1500円。
動けなくなるほどに満腹になっちゃう人でも
2100円分ほどの肉しか食べない。
原価率を50%とするならば
それぞれ3000円、4200円のお代を頂戴すれば
お店は損することがない。

オーダーバイキングの焼肉専門店の食べ放題価格で
大衆的なお店は2980円。
一番多い価格帯が3980円から4180円というのは、
お客様のお腹の容量が決めた値段‥‥、ということになる。

仕入れに自信があって、お客様を増やしたかったお店は
安心してオーダーバイキングという仕組みを
次々、採用しました。
やってみると、案外これがうまくいくもので、
何しろお客様は肉だけを食べるのでない。
サラダなんかも食べたいなぁ‥‥。
肉の合間に野菜も焼きたい。
隣のテーブルで誰かが石焼ビビンパを焼きはじめると、
なぜだかそれを食べたくなっちゃう。
肉を食べなきゃ損だ‥‥、とわかっていながら、
お客様は肉以外のものも頼んでくれるもの。
原価は不思議なほどに安定する‥‥、
というのがわかって、
またたく間にオーダーバイキングの焼肉店は増えていった。


競合が激しくなるにしたがって、お客様は賢くなります。
ちょっとでも得しそうなお店を探す。
他の店よりおいしい肉を提供しているお店を見つけようと
SNSの評価なんかをてがかりに経験を積む。
競争相手より魅力的なメニューの内容に‥‥、
とお店は工夫をしはじめる。
上等な肉。
つまりコストのかかってしまう肉を
メニューに用意しながら、それでも利益を出す工夫。

ヒントは回転寿司にあったのでした。
また来週。

2018-08-02-THU