外食産業の人たちは、飲食店のコトを
「立地産業」だといいます。

たしかに
「お客様が実際にお店にやってきてくださって
 初めてすべてが始まる」産業。
お店‥‥、つまり立地を得ねば商売にならない。
すなわち、立地産業。
だから「良い立地」を獲得しようと、
みんな一生懸命になる。
景気の良かった頃には、ひとつの物件に対して
いくつもの会社や人がお店をやらせてくれませんか‥‥、
とやってきては値段を釣り上げて
大変なコトになったモノです。

ただ問題は、どういう立地が良い立地なのか?
質問されるとちょっと困ります。
お店の種類によって、良い立地のイメージが違うのですネ。






人通りが多くて目立つ場所。
ファストフードにとっては好立地。
隠れ家立地のファストフードなんて、
絶対、はやりっこないですから。
目立つ場所は、人を集めるコトが得意な場所で
当然、多くの売上高を見込むことができる場所。
そういう場所で商売をしたがる人が多いから、
当然、家賃は高くなる。
高い家賃を払うために、
ますます多くのお客様を呼び込まなくちゃいけなくなって、
「おもてなし上手」であるより
「新しいお客様を集め上手」のお店でなくては成立しない。

おなじみのお客様をジックリおもてなししたいお店は、
目立たぬひっそりした場所がいい。
お客様が見つけてくれるまで、じっと待たなきゃいけない。
ちょっと我慢が必要だけど、
「長くお付き合いできる」お客様は
少々、不便な場所にでもワザワザやってきてくれる。
いろんなお客様が飛び込みで入ってくるコトもないから
お店の雰囲気だって守れるし。
家賃も安い。
だからその分、いいサービスやいい商品にお金を使える。

商売の仕方はいろいろあるけれど、
経営者として心がけなきゃいけないことは
「一日でも長くお店をやり続ける」コト。
つまり、一日でも余分に
家賃を払うことができなきゃいけない。
儲からなくちゃ家賃も払えぬコトになる。

つまり、夢のない言い方をすれば
「儲かる立地がよい立地」。
でもそれじゃぁ、あんまり。
いろんな生き方があるだろうけど、
結局、稼いだ人間が勝ちでしょう!
と言ってるように思われると切なくて。
なのでボクはこれから飲食店をはじめようとする人たちに、
こう説明をすることにしています。

「競合のない場所を探して出店しなさい!」って。






実は「無競合であるコト」こそが、
飲食店が成功する最大のキーワードなんですね。
例えば今では日本のそこら中にある
ファミリーレストランというお店。
1970年まではどこにもなかった。
住宅街の近くにあって、車で気楽にいける店。
家族連れで快適に座れるように
ブース席やベンチチェアーが中心の居心地の良い店作り。
多彩なメニューが用意されていて、
どのメニューをたのんでも
10分くらいで出来上がってくる。
しかも、同時にたのんだ料理は
全部、一度にやってくるから
家族みんなで同時に「いただきます」って食事がはじまる。
そんなお店はそれまでどこにもなくって、
それで、爆発的にお店は増えた。
ハンバーガーのファストフードだって。
ドーナツ屋さんもフライドチキン屋さんも、
みんな競争相手がなかったからどんなところをお店を作っても
大抵、繁盛店になったのです。
たしかに、魅力的な商品やステキなサービス。
教育システムだとか、いろんなノウハウがあったから
成功の確率が高くなりはしたけれど、
当時、やる気があってちょっと頑張った人たちは
みんな繁盛店を手にできた。

今では20兆円産業と呼ばれる外食産業も、
1970年にはたった3兆円ぐらいしかなかったのです。
それがたったの20年で、7倍近く。
一時期は30兆円くらいにまで膨れ上がったコトもあって、
つまりそれだけ「競合が激しくなった」
というコトなのですネ。
だから今。
飲食店がない場所を探すことはまず不可能。
だから
「競合のない場所を探して出店しない」というコトは、
「競合の無縁な存在になりなさい」というコトでもある。

どんなに小さくてもいいから、
自分の世界で一番になるような、
そんな人生を送りなさい‥‥、
とこれから飲食業に乗り出そうとする人を
勇気づけたくもあった。
「身近な人と喧嘩しないですむ超越した存在」
になることが、お店の成功を持続させるコトでもある。

地域一番店。

外食産業の人たちは、
そういうお店のコトを愛着を込めてそう呼びます。
小さくともそのお店を愛する人にとって、なくてはならないステキなお店。
どの地域で生きていこうと決心するのか。
どの分野で一番になろうと覚悟するのか。
それが大切なのであって、その決心と覚悟を守り通せれば、
どんなに酷い場所であっても
「人から愛されワザワザやってきてくれる」
唯一無二のお店があなたのモノになるんです‥‥、
と念を押す。
それでもピンと来ない人には、
とあるレストランの話をすることにしていました。

おそろしいほど不便な場所。
けれど日本中からその店へ
ワザワザ行きたいと思わせるステキがある店。
そして一度とりこになったら、
再びいかずにはいられぬ名店。
来週、紹介いたしましょう。




2013-01-17-THU


© HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN