1今日の気になるあいつ
わはは がんばれ
3ヶ月に1度、歯医者さんから
『検診月ですよー』の葉書が送られてくる。
そこに貼られている切手がいつもかわいい。

今回はフルーツがたくさん入った
アイスキャンディーの切手だった。
もう、あまりにも可愛過ぎてキュンとなったし、
嬉しかった。

後納郵便などではなくて、
わざわざ貼る手間をかけて、
一筆添えて送ってくれているのだ。
切手だってどんどん値上がりしているし、
印刷代だってかかる。
それを「医者だって商売だろ」と言う人も
いるのだろうけれども、違うと思う。

わたしは、あの切手がとてもとても嬉しかった。

ところで、わたしが通っている歯医者さんの
受付の中年女性は
口コミ評判がすこぶる悪い。
愛想がないだの、
口調がきついだの散々書かれている。

たしかに、愛嬌があるとか
人当たりがいいと言われるタイプでは
ないかもしれない。
キリッとした雰囲気で、口調もテキパキ早口、
笑っている顔はほぼ見たことがない。
だいたいパソコンに向かっていて、
来たときも帰るときも、ほぼこちらを見ない。

でもたまに
ご常連のお年寄りと話している口調は
早いけどとても丁寧で親切だし、
質問すればちゃんと答えてくれる。
受付の方のお仕事としてはごく普通で、
なんの問題もない。
「だいたいみんな求めるものが多すぎるんだよ」
といつも思っていた。
とはいえ、気軽に「どうもー」とか
話しかけられない雰囲気なのは確かでもあった。

で、今日。
わたしはそもそも対面で人と話すのは苦手だし、
知らない人との関わりはなるべく避けるタイプで、
世間話も苦手。
それでもあの切手の嬉しさを
どうしても伝えたくなって、
迷いに迷って、帰り際になってから、
勇気を出して受付女性に言ってみた。

そこではじめて、わたしは彼女の笑顔を見た。

目が合うことはなかったけれども、
へにょっと眉が下がり、
照れたような、柔らかな笑顔を返されて、驚いた。

それから彼女はいつもの早口で話してくれた。

あの切手は
自分がこだわって選んでいるのだということ、
今回は夏のスイーツシリーズにしてみたということ。
そしてそれだけではなく、
なんと、相手のことを思い浮かべて、
これはこの人の雰囲気だなあと考えながら選んで
貼ってくれているということだった。

笑われるかもしれないけれども、
わたしはちょっと本気で泣きそうになった。
彼女はとても繊細で、あたたかで、
素敵な一面のある人だった。
人というのは本当に、
ちゃんと、その人のテリトリーに
少しだけ入れてもらって話さないと
わからないものだなあとつくづく思った。

ほんの一瞬のことだけれども、受付女性と患者、
という立場をちょっとだけ越えて、
人と人として話してみた結果、
わたしは胸躍るような心持ちで
歯科医院を出ることになった。

幸せだった。

何年も通っている歯科医院で、
今さらこんなにも嬉しい出来事が起こるとは、
家を出るときには、まったく想像もしていなかった。

勇気を出して気持ちを伝えてみて、
本当によかった。

(RINATARO)

2026-08-10-MON