ほぼ日刊イトイ新聞

勉強の夏、ゲームの夏。2018

さあ、今年もはじまります!
ほぼ日がお届けする
夏休みの終わりの風物詩といったら、これ!
勉強とゲームの両立をめざす恒例企画
『勉強の夏、ゲームの夏。2018』!
勉強サイドでは、ほぼ日のまわりにいる
「意外に高学歴な人たち」をお呼びして、
勉強や受験のコツを教えていただきます。
一方、ゲームサイドでは、
乗組員がヤングとアダルトの2チームにわかれ、
本気の「ババ抜き」で真剣勝負! 
しかも、最大4台のビデオカメラを使い、
勝負のかけひきを動画で生中継しちゃいます!
あ、そうそう、毎年恒例のシェフこと、
武井がつくる「静岡おでん」は、
すでにいい感じに煮込まれていましたよ。
夜までずっとたのしくやってますので、
ときどきのぞきに来てくださいね。
それでは今日一日、どうぞよろしくお願いします!

今年のゲームサイドは生中継!

再生ボタンを押すと、
すぐに中継がご覧いただけます。

事前に読者からお寄せいただいた
勉強や宿題についての相談に、
ほぼ日のまわりにいる
「意外に高学歴な人たち」が答えます。
ときどき、おでんの様子も。

ご登場予定の講師のみなさん

新谷陽一さん (東京大学の学生・ほぼ日インターン生)
税所篤快さん(国際教育支援NGO「e-Education」創業者)
山内奏人さん(ワンファイナンシャルCEO)
竹之内祥子さん(okatteにしおぎ)
長瀬勝彦さん(経営学者、首都大学東京教授)

2018/08/23 19:24

直観も意思決定。

shinya.hirano
2018/08/23 19:24

直観も意思決定。

shinya.hirano
「行動意思決定論は
 経済学の本流とはだいぶ違うんですよね。
 経済学はどちらかというと、
 理論重視の数学的に美しいモデルを
 構築していくことが優先されていたんです。
 そういった流れが長く続いた中で、
 実際の人間はどういうふうに
 行動するのかに着目して
 心理実験を踏まえたものが
 行動意思決定論という学問なんです」

ああ。たしかに、
合理的な判断をしたと思っても
間違ってしまいますもんね。

「たとえば、新しいアパートに
 引っ越した友達に、
 どうしてそのアパートを選んだのかを
 聞いてみるとしますよね。
 家賃や家の広さ、
 新しさとか駅の距離とか、
 迷う要素がいろいろありますよね。
 専門用語で『属性』というのですが、
 属性を点数化すればいいじゃないか、
 という話にすぐなるわけですよ。
 でも、その属性の合計点を
 比べてみたところで、
 その意思決定が正しいのかというと
 きっと納得できませんよね?」

ああ、たしかに。
決めようとしたはずなのに、
悩み続けてしまいます。

「点数化をしようとしても、
 属性の点数の決め方もあいまいですから。
 あらゆる選択肢がある中で
 すべて合理的な選択をするなんて、
 無理のある話なんですよね。
 こどもの頃によくやっていた
 『ど・ち・ら・に・し・よ・う・か・な』
 という選び方だって、
 決まりそうになったところで
 納得いかなければ途中で、
 『か・き・の・た・ね』
 なんて足してしまうわけですよ。
 結局のところ、
 直観やフィーリングに頼ってしまう。
 じゃあ、直観がダメなのかというと、
 じつはそうではありません。
 その人の経験に基づいた意思決定が
 直観とも言えるので、
 あながち馬鹿にできないんです。
 直観というものは、
 人間の無意識がいろんな要素を
 しっかりと考えた結論なわけだから、
 意外と信頼できるものなんですよ」
2018/08/23 18:58

テキスト中継を
再開します

shinya.hirano
2018/08/23 18:58

テキスト中継を
再開します

shinya.hirano
「ゲームの夏」の大将戦が
大接戦の末に終わりました。
いい試合だったんですよ。
ぜひ動画で見ていただきたいです。

くわしい結果については
ゲームサイドを見ていただくとして、
勉強サイドのテキスト中継に戻ります。
お待たせしてしまい、すみません。

写真は取材時のメモです。
さあ、長瀬先生のお話のつづきです。
2018/08/23 18:01

「ゲームの夏」の
大将戦がはじまるので

shinya.hirano
2018/08/23 18:01

「ゲームの夏」の
大将戦がはじまるので

shinya.hirano
同時並行でおこなっている
「ゲームの夏」の
大将戦がはじまるそうで、
呼び出されてしまいました。
のちほどつづきを更新しますね。

「ゲームの夏」の中継をご覧になって、
しばしお待ちください。
2018/08/23 17:48

意思決定論の研究方法

shinya.hirano
2018/08/23 17:48

意思決定論の研究方法

shinya.hirano
長瀬先生はふだん、
どのように研究を進めているのでしょうか。

「意思決定研究者が
 どんな実験をしているかというと、
 自分の授業で学生にお願いして、
 『あなたはこういうときに
 どういう意思決定を選択しますか?』
 という紙に書いたものを渡します。
 
 学生の集団をふたつのグループにわけて、
 質問用紙の中に1箇所だけ
 違う部分を用意しているんです。
 AグループとBグループで
 回答の差を統計学的に分析して、
 そこに差が出たなら、
 アンケートで設けた違いの部分が
 原因になったのだろうと
 推定できるわけです。
 その積み重ねをしていくことで、
 『人間の心理ってそういうものだよね』
 ということがわかってくるわけです。
 
 普通の人が一所懸命、
 合理的に意思決定をしたつもりでも、
 研究者からしてみると
 偏っていることがよくあります。
 その偏りを『バイアス』と呼びます。
 世界中の研究者が何十年も探求をして
 いろいろな名前の
 バイアスが見つかっています。
 ぼくはそれを研究しているんです」

ご説明ありがとうございます。
ぼくが大学時代に学んでいたことを、
振り返ることができました。
2018/08/23 17:35

誰もが意思決定をしている。

shinya.hirano
2018/08/23 17:35

誰もが意思決定をしている。

shinya.hirano
組織の中でも経営陣のほうが、
意思決定をする内容も重大で、
スピードも求められますよね?

「はい、いい質問です。
 責任と影響力の大きさを考えると
 上に立つ人ほど意思決定の重要性は
 大きくなるとも言えますが、
 部長や課長のようなミドルは、
 じぶんが担当するセクションだけの
 意思決定になると思います。
 ただ、ぼくの研究している領域においては、
 経営者とミドルの意思決定の間に
 本質的に違いはないと思うんです。
 人間の心理は、そうそう変わりませんから。
 偉い人だけが意思決定をするわけではなく、
 平社員だって、パートやアルバイトだって、
 なんらかの意思決定をしていきますから」

ああ、たしかにぼくの仕事でも
意思決定の連続です。
2018/08/23 17:07

行動意思決定論とは
どんな学問?

shinya.hirano
2018/08/23 17:07

行動意思決定論とは
どんな学問?

shinya.hirano
まずは長瀬先生のことを
知っていただきましょう。
長瀬先生、「行動意思決定論」は
どんな学問でしょうか?

「意思決定を平たく言うと、
 ものごとを決めることです。
 もうちょっと詳しく言うなら、
 じぶんの将来の行動について、
 複数の選択肢から
 ひとつを選び取る行為です。
 たとえば、お昼に何を食べるか。
 外食をするときに、どのお店を選ぶか。
 どのメニューにするかも意思決定です」

はい、誰もがやっている行為ですね。

「アメリカの主要なビジネススクールでは、
 意思決定論は
 当たり前に置かれている学問です。
 経営者の仕事はなにかというと、
 いろいろな答えはあると思いますが、
 全社的な意思決定をくださないといけない。
 限られた経営資源の中で、
 どういった戦略を取るかということが
 求められるわけです。
 迅速な意思決定を
 くださなければなりませんからね」
2018/08/23 17:04

5人目の先生は
長瀬勝彦教授です。

shinya.hirano
2018/08/23 17:04

5人目の先生は
長瀬勝彦教授です。

shinya.hirano
勉強部門、本日最後の先生が登場です。
5人目の先生は、
首都大学東京 経済経営学部の教授、
長瀬勝彦(ながせかつひこ)先生です。

長瀬先生の専門は
「行動意思決定論」という分野。
経済学から派生していて、
心理学の領域を取り入れた学問です。
長瀬先生のことばをお借りするなら
“とっても人間くさい”分野の経済学です。

ぼくが大学時代に
長瀬先生のゼミに所属していたことが
きっかけでお越しいただけました。
「勉強」というテーマで届く質問は、
選択と集中に関するものが多くて、
先生の研究でも
関連していることが多いのでは?
ということでご登場いただきました。

長瀬先生は経営の領域だけでなく、
人間が生きていく中で
意思決定をくり返している、
ということもお話をうかがおうと思います。

それではごゆっくりお付き合いください。
2018/08/23 16:45

社会人の
「時間ない&やる気が出ない」
問題。

okuno
2018/08/23 16:45

社会人の
「時間ない&やる気が出ない」
問題。

okuno
竹之内さんには、
社会人の「時間とやる気」問題について
お聞きしてみます。
ーーーーーーーーーーーーーーー


仕事上、勉強が欠かせないのですが、
なかなか時間が取れません。
朝、それとも仕事帰り、寝る前など
うまく習慣づけられる方法はありますか?


予定を立てるのが苦手です。
問題集のページを日数で割ると
毎日かなりの量になり、げんなりします。


社会人です。
やらなければならないことがあるのに、
どうしてもやる気が起こりません。
つい後回しにして、締切に追われます。
ーーーーーーーーーーーーーーー

「たしかに、通っていた大学院でも
 時間がないという理由で
 お辞めになってしまった人もいます。
 でも、いったんやめても、
 また時間ができたら戻ればいいです。
 2年で論文が書けない人は、
 3年かかってもいいんだと思ったら
 気が楽になるんじゃないでしょうか。
 あんまり気負わずに。
 わたしは、そう思ってやりました。
 はたらいていると、
 優先しなければならない仕事って
 どうしてもありますよね。
 そのときには「無理なもんは無理!」
 と思って、
 時間のないことを悲しまなくても
 いいと思います!」

なるほど!

「やる気について言えば、
 「ほぼ日」ではおなじみの脳科学者の
 池谷裕二さんも
 「やりはじめないと、やる気は出ません」
 とおっしゃっていますよね。
 ということは、つまり、
 やりはじめたら、やる気は出ると信じて
 重い腰を上げてみてはどうでしょう。
 あとはやっぱり、
 本当に楽しいと思えることを、やること。
 はたらきながら勉強をするって、
 やはり誰にとっても、大変だと思います。
 でも、楽しいと思えることなら
 仮にあゆみがのろくても続くと思います」

ほんとうですよね。
ほとんどの人が、そうなんですよね。

いつだって時間はないし、
ただほっといたって、やる気は出ない。
みんな同じと思えば、ほんと気が楽。
重かった腰が、少し軽くなりそうです。

実際に「三足のわらじ」をはいていた
竹之内さんの言葉、
ほどよく「現実の感覚」が混じってて、
自分も勇気づけられました。

竹之内さん、ありがとうございました!
2018/08/23 16:40

社会でやっていることを、
大学院でたしかめる。

okuno
2018/08/23 16:40

社会でやっていることを、
大学院でたしかめる。

okuno
ご自身で運営していた事業が
「どうして、こんなにおもしろいんだ?」
と思って、忙しい身で大学院に行き、
そこで「裏付け」となる理論に出会った。

それは、忙しくても続くわけですよね。
だって、絶対おもしろいです、それは。

「たとえば公園って、ボール投げ禁止とか
 犬を連れてきちゃ駄目とか、
 細かくルールが決められているところが
 多いですよね。
 でも、okatteにしおぎみたいな場所って、
 ルールも人間関係も、もう少し、ゆるい。
 話し合い次第では、
 「ボール投げは午前中、犬の散歩は午後」
 とやって、すみわけしたり。
 もっと言うと
 犬とボールが同時に遊べる可能性だって
 探ることができます。
 気がすすまないときは、来なければいい。
 来たくなったとき、また来ればいいから」

なるほど。

「そういう場所は求められているし、
 これからも
 増えていくといいなあと思います」

それでは最後に、
社会人の人からのご質問が来ていたので、
おうかがいしましょう。
2018/08/23 16:35

もちろん対立もあるけれど。

okuno
2018/08/23 16:35

もちろん対立もあるけれど。

okuno
ちなみにですが、
会員さんたちの意見の食い違いとかも、
ありますよね、当然。

「もちろん、葛藤や対立はあります。
 ごはんのつくりかた、お料理の仕方って、
 人それぞれで、流儀もバラバラですから。
 洗い物ひとつにしても、
 意見を聞けば、さまざまなんですね。
 でも、仮に対立しても、
 ここにはいろんな人が出入りしてるので、
 まるきりアサッテな方向から
 ナイスなアイディアが飛んでくるんです」

オカッテに、アサッテから。

「そうやって、
 ゆるく解決されちゃうことが多いかな。
 あの人とは、
 この部分では意見が合わないけど、
 ま‥‥いっか、と思えちゃうみたいです」

厳格なルールはなくて、出入り自由。
問題が起きても、何となーく、何とかなる。

これ、竹之内さんや、
会員さんたちのキャラもあると思いますが、
「おいしいごはんを真ん中にしている」
ということが、かなり大きい気がしますね。