ほぼ日刊イトイ新聞

勉強の夏、ゲームの夏。2018

さあ、今年もはじまります!
ほぼ日がお届けする
夏休みの終わりの風物詩といったら、これ!
勉強とゲームの両立をめざす恒例企画
『勉強の夏、ゲームの夏。2018』!
勉強サイドでは、ほぼ日のまわりにいる
「意外に高学歴な人たち」をお呼びして、
勉強や受験のコツを教えていただきます。
一方、ゲームサイドでは、
乗組員がヤングとアダルトの2チームにわかれ、
本気の「ババ抜き」で真剣勝負! 
しかも、最大4台のビデオカメラを使い、
勝負のかけひきを動画で生中継しちゃいます!
あ、そうそう、毎年恒例のシェフこと、
武井がつくる「静岡おでん」は、
すでにいい感じに煮込まれていましたよ。
夜までずっとたのしくやってますので、
ときどきのぞきに来てくださいね。
それでは今日一日、どうぞよろしくお願いします!

今年のゲームサイドは生中継!

再生ボタンを押すと、
すぐに中継がご覧いただけます。

事前に読者からお寄せいただいた
勉強や宿題についての相談に、
ほぼ日のまわりにいる
「意外に高学歴な人たち」が答えます。
ときどき、おでんの様子も。

ご登場予定の講師のみなさん

新谷陽一さん (東京大学の学生・ほぼ日インターン生)
税所篤快さん(国際教育支援NGO「e-Education」創業者)
山内奏人さん(ワンファイナンシャルCEO)
竹之内祥子さん(okatteにしおぎ)
長瀬勝彦さん(経営学者、首都大学東京教授)

2018/08/23 17:35

誰もが意思決定をしている。

shinya.hirano
2018/08/23 17:35

誰もが意思決定をしている。

shinya.hirano
組織の中でも経営陣のほうが、
意思決定をする内容も重大で、
スピードも求められますよね?

「はい、いい質問です。
 責任と影響力の大きさを考えると
 上に立つ人ほど意思決定の重要性は
 大きくなるとも言えますが、
 部長や課長のようなミドルは、
 じぶんが担当するセクションだけの
 意思決定になると思います。
 ただ、ぼくの研究している領域においては、
 経営者とミドルの意思決定の間に
 本質的に違いはないと思うんです。
 人間の心理は、そうそう変わりませんから。
 偉い人だけが意思決定をするわけではなく、
 平社員だって、パートやアルバイトだって、
 なんらかの意思決定をしていきますから」

ああ、たしかにぼくの仕事でも
意思決定の連続です。
2018/08/23 17:07

行動意思決定論とは
どんな学問?

shinya.hirano
2018/08/23 17:07

行動意思決定論とは
どんな学問?

shinya.hirano
まずは長瀬先生のことを
知っていただきましょう。
長瀬先生、「行動意思決定論」は
どんな学問でしょうか?

「意思決定を平たく言うと、
 ものごとを決めることです。
 もうちょっと詳しく言うなら、
 じぶんの将来の行動について、
 複数の選択肢から
 ひとつを選び取る行為です。
 たとえば、お昼に何を食べるか。
 外食をするときに、どのお店を選ぶか。
 どのメニューにするかも意思決定です」

はい、誰もがやっている行為ですね。

「アメリカの主要なビジネススクールでは、
 意思決定論は
 当たり前に置かれている学問です。
 経営者の仕事はなにかというと、
 いろいろな答えはあると思いますが、
 全社的な意思決定をくださないといけない。
 限られた経営資源の中で、
 どういった戦略を取るかということが
 求められるわけです。
 迅速な意思決定を
 くださなければなりませんからね」
2018/08/23 17:04

5人目の先生は
長瀬勝彦教授です。

shinya.hirano
2018/08/23 17:04

5人目の先生は
長瀬勝彦教授です。

shinya.hirano
勉強部門、本日最後の先生が登場です。
5人目の先生は、
首都大学東京 経済経営学部の教授、
長瀬勝彦(ながせかつひこ)先生です。

長瀬先生の専門は
「行動意思決定論」という分野。
経済学から派生していて、
心理学の領域を取り入れた学問です。
長瀬先生のことばをお借りするなら
“とっても人間くさい”分野の経済学です。

ぼくが大学時代に
長瀬先生のゼミに所属していたことが
きっかけでお越しいただけました。
「勉強」というテーマで届く質問は、
選択と集中に関するものが多くて、
先生の研究でも
関連していることが多いのでは?
ということでご登場いただきました。

長瀬先生は経営の領域だけでなく、
人間が生きていく中で
意思決定をくり返している、
ということもお話をうかがおうと思います。

それではごゆっくりお付き合いください。
2018/08/23 16:45

社会人の
「時間ない&やる気が出ない」
問題。

okuno
2018/08/23 16:45

社会人の
「時間ない&やる気が出ない」
問題。

okuno
竹之内さんには、
社会人の「時間とやる気」問題について
お聞きしてみます。
ーーーーーーーーーーーーーーー


仕事上、勉強が欠かせないのですが、
なかなか時間が取れません。
朝、それとも仕事帰り、寝る前など
うまく習慣づけられる方法はありますか?


予定を立てるのが苦手です。
問題集のページを日数で割ると
毎日かなりの量になり、げんなりします。


社会人です。
やらなければならないことがあるのに、
どうしてもやる気が起こりません。
つい後回しにして、締切に追われます。
ーーーーーーーーーーーーーーー

「たしかに、通っていた大学院でも
 時間がないという理由で
 お辞めになってしまった人もいます。
 でも、いったんやめても、
 また時間ができたら戻ればいいです。
 2年で論文が書けない人は、
 3年かかってもいいんだと思ったら
 気が楽になるんじゃないでしょうか。
 あんまり気負わずに。
 わたしは、そう思ってやりました。
 はたらいていると、
 優先しなければならない仕事って
 どうしてもありますよね。
 そのときには「無理なもんは無理!」
 と思って、
 時間のないことを悲しまなくても
 いいと思います!」

なるほど!

「やる気について言えば、
 「ほぼ日」ではおなじみの脳科学者の
 池谷裕二さんも
 「やりはじめないと、やる気は出ません」
 とおっしゃっていますよね。
 ということは、つまり、
 やりはじめたら、やる気は出ると信じて
 重い腰を上げてみてはどうでしょう。
 あとはやっぱり、
 本当に楽しいと思えることを、やること。
 はたらきながら勉強をするって、
 やはり誰にとっても、大変だと思います。
 でも、楽しいと思えることなら
 仮にあゆみがのろくても続くと思います」

ほんとうですよね。
ほとんどの人が、そうなんですよね。

いつだって時間はないし、
ただほっといたって、やる気は出ない。
みんな同じと思えば、ほんと気が楽。
重かった腰が、少し軽くなりそうです。

実際に「三足のわらじ」をはいていた
竹之内さんの言葉、
ほどよく「現実の感覚」が混じってて、
自分も勇気づけられました。

竹之内さん、ありがとうございました!
2018/08/23 16:40

社会でやっていることを、
大学院でたしかめる。

okuno
2018/08/23 16:40

社会でやっていることを、
大学院でたしかめる。

okuno
ご自身で運営していた事業が
「どうして、こんなにおもしろいんだ?」
と思って、忙しい身で大学院に行き、
そこで「裏付け」となる理論に出会った。

それは、忙しくても続くわけですよね。
だって、絶対おもしろいです、それは。

「たとえば公園って、ボール投げ禁止とか
 犬を連れてきちゃ駄目とか、
 細かくルールが決められているところが
 多いですよね。
 でも、okatteにしおぎみたいな場所って、
 ルールも人間関係も、もう少し、ゆるい。
 話し合い次第では、
 「ボール投げは午前中、犬の散歩は午後」
 とやって、すみわけしたり。
 もっと言うと
 犬とボールが同時に遊べる可能性だって
 探ることができます。
 気がすすまないときは、来なければいい。
 来たくなったとき、また来ればいいから」

なるほど。

「そういう場所は求められているし、
 これからも
 増えていくといいなあと思います」

それでは最後に、
社会人の人からのご質問が来ていたので、
おうかがいしましょう。
2018/08/23 16:35

もちろん対立もあるけれど。

okuno
2018/08/23 16:35

もちろん対立もあるけれど。

okuno
ちなみにですが、
会員さんたちの意見の食い違いとかも、
ありますよね、当然。

「もちろん、葛藤や対立はあります。
 ごはんのつくりかた、お料理の仕方って、
 人それぞれで、流儀もバラバラですから。
 洗い物ひとつにしても、
 意見を聞けば、さまざまなんですね。
 でも、仮に対立しても、
 ここにはいろんな人が出入りしてるので、
 まるきりアサッテな方向から
 ナイスなアイディアが飛んでくるんです」

オカッテに、アサッテから。

「そうやって、
 ゆるく解決されちゃうことが多いかな。
 あの人とは、
 この部分では意見が合わないけど、
 ま‥‥いっか、と思えちゃうみたいです」

厳格なルールはなくて、出入り自由。
問題が起きても、何となーく、何とかなる。

これ、竹之内さんや、
会員さんたちのキャラもあると思いますが、
「おいしいごはんを真ん中にしている」
ということが、かなり大きい気がしますね。
2018/08/23 16:30

牧草が増えていくおもしろさ。

okuno
2018/08/23 16:30

牧草が増えていくおもしろさ。

okuno
「ここには、料理が好きな人はもちろん、
 お掃除が好きな人、
 おしゃべり好きのムードメーカー、
 たくさんの人が集まってきます。
 流しそうめんをやろうと企画が出たら
 竹を切ってきてくれる人、
 その竹で流しをつくってくれる人‥‥」

牧草、増えてますね。

「思いもよらない活動が生まれるんです。
 大学人に入るときの研究計画書には
 いわゆる「サードプレイス」のことを
 学びたいと書きました。
 でも、okatteにしおぎと並行して、
 大学院で学んでみたら、
 ある意味で「流行のワード」である
 「サードプレイス」とは、
 ちょっとちがうと思うようにもなって」

たしかに、いわゆるサードプレイスって、
コーヒーショップとか酒場とか、
「消費する」がメインだと思いますが、
ここは、「コモンズ」‥‥
共有の牧草地と考えるとしっくりきます。

思いもよらない、
めずらしいキノコが生えてきそうですし。

「ことしからはじまった稲作部なんて、
 まさしく、そんな感じです。
 群馬に田んぼを借りて稲作するなんて、
 思ってもみなかったので」
2018/08/23 16:25

大学院で出会った、
コモンズ論。

okuno
2018/08/23 16:25

大学院で出会った、
コモンズ論。

okuno
楽しかったからこそ、続けられたんですね。
楽しかったからこそ、修士論文も書けた。

ちなみに
「okatteにしおぎのひみつ」のゆくえは?

「大学院で、コモンズ論に出会って‥‥」

コモンズ論。

「コモンズの悲劇、という考えがあります。
 これは、牧草地など、
 昔の農村にあったような共同管理地で
 それぞれが
 自己利益の最大化するために行動すると、
 たとえば、牧草地の牧草は、
 ぜんぶ食べられて、荒れ地になっちゃう」
 
なるほど。

「そういう考え方があるんですが、
 エリノア・オストロムさんという人が
 そのコモンズ理論で
 ノーベル経済学賞に輝いたんです。
 こむずかしい話は省きますが、
 共有の牧草地でも、うまく管理すれば、
 『タダ乗り』する人を生むことなく
 じょうずに運営できるんだ、って。
 その考え方が、
 いまのシェアの考えに応用できるんです」

当時は、現代的な意味での「シェア」、
つまり「シェアキッチン」と言ったときの
「シェア」が含む意味合いって、
まだ、なかったと思うんですが、なるほど。
時代を超えて応用できる、コモンズ理論。

「そこで、そうか、okatteにしおぎは、
 ちいさなコモンズだと思いました。
 ここでは、いろんな人が、
 いっしょにごはんをつくって食べるという
 目的のもとに、
 お米や野菜という食材だけでなく、
 情報や経験、スキルまで持ち寄ってくれる。
 そうやって回っているんです。
 牧草は、減らない。むしろ増えていきます。
 あたらしい活動が生まれていくんです。
 大学院でコモンズ理論を学んで、
 わたしは、
 okatteにしおぎのそういうところを
 おもしろがっていたんだなあ、と」

なるほど。ただ奪い合うだけの場所には、
誰かが、玉ねぎを、
こんなふうに置いてはいかないですよね。
2018/08/23 16:20

忙しく、刺激に満ちた日々。

okuno
2018/08/23 16:20

忙しく、刺激に満ちた日々。

okuno
ご自分ではじめたシェアキッチン
okatteにしおぎの、ふしぎ。
okatteにしおぎの、ひみつ。

それを解明すべく、大学院へ。

「この『場所のちから』ってなんだろう、
 と思ったんです。
 それまでマーケティングの会社で
 培ってきた経験や知識でも、
 okatteにしおぎという『場』についての
 うまいこたえは
 得られませんでした。
 そこで、社会学から経営から哲学まで、
 多種多様な教授の集まる
 21世紀社会デザイン研究科の試験を受けて
 学んでみようと思いました。
 入学してみたら、
 学部から上がってくる若い人だけでなく、
 CSRをやりたい会社員、NPOの人、
 ソーシャルな会社を起業したい人、
 リタイア後の人まで‥‥さまざまでした。
 社会で活躍している生徒が多いので、
 教授との関係もフラットで。
 たった2年間で修士論文を書くのって、
 すごく忙しいんですが‥‥」

はい。わかります。
2年間、本当に頑張ってギリギリでした。
でも、竹之内さんは、
会社もやって、okatteにしおぎもやって、
そのうえ修士論文。はあ。

「たしかに忙しかったけれど、
 毎日はとっても刺激に満ちていました」

ちなみに授業は、週に‥‥。

「1年目は4日です。
 2コマ取ると、18時から21時まで。
 土曜日にはゼミもありました」

週に4日、池袋まで通って。

「はい」
2018/08/23 16:15

okatteにしおぎのひみつを、
解明したい。

okuno
2018/08/23 16:15

okatteにしおぎのひみつを、
解明したい。

okuno
「okatteにしおぎをはじめる前、
 阿佐ヶ谷で開催されている
 『おたがいさま食堂』に参加したんです。
 そのとき、みんなで食材を買って、
 みんなでつくって、みんなで食べることが、
 とっても新鮮だったんです。
 名刺のやり取りからはじまって
 用意された食事を食べる異業種交換会とは
 あきらかにちがうものでした。
 いっしょにごはんをつくることで
 すごく打ち解けられて、すっごく楽しくて。
 そこで、「おたがいさま食堂」の主催者の
 齊藤志野歩さんといっしょに
 みんなでごはんを食べる場をつくろうと」

それが、okatteにしおぎをつくった理由。

「そうやって
 okatteにしおぎをはじめてみると、
 毎日が、ほんとに、おもしろかったんです。
 会員さんが増えていくこと自体も
 なぜだろうってふしぎだったし、
 会員さん同士で、
 自然に活動がはじまったりも、するんです。
 手芸部とか、
 最近では地方に田んぼを借りて米を育てる
 稲作部まで、できました。
 これは、それまで参加した食事会なんかと、
 あきらかちがいました。
 それで、なにがちがうんだろう‥‥と」

思って。

「はい。そのひみつを解き明かしたくて、
 立教大学大学院の
 21世紀社会デザイン研究科へ入学しました」

okatteにしおぎのひみつを解きに、大学院へ。

このようにして、竹之内さんは、
「三足目のわらじ」をはくことになりました。