Sponsored by Nintendo.

勉強の夏、ゲームの夏。2015

夏休みの宿題で、意外に困るのが「絵」。
いったい「絵」ってどう描けばいいのか?
「ほぼ日」の美大系乗組員ヒロセと、
芸大卒のアルバイト、あいちゃんが
実際に絵を描きながらレクチャーします。
絵にまつわる質問があったら、
上の「勉強や絵の質問をする!」ボタンから、
気軽にメールしてくださいね。

2015/08/21 17:39ありがとうございました。

さあ、絵のコーナーはこれでおしまいです。
あいちゃん、どうもありがとう!

最後に、あいちゃんが
どうして絵を描くようになったか、
というエピソードを。

「幼稚園のときに、
 みんなで描いた絵を
 教室のうしろに貼ってたんですね。
 で、私はそのとき廊下にいたんですけど、
 教室の中にいる二人の先生が、
 『あいちゃんの絵、おもしろいよね』 
 『よく描けてるよね』
 って言ってるのが聞こえたんです。
 それで、『よし!』と思ったことを
 すごくよく憶えていて。
 そのときからかもしれないです、
 私は絵をがんばろう、と思ったの」

ああ、じぶんのいないところで
じぶんの絵をほめているっていうリアリティを
子どもながらに、しっかり感じたんだね。

「はい、はっきり憶えてます」

ちなみに、それ、どんな絵?

「ヘビを見た人が驚いてる、っていう絵です」

ははははは。
今日はどうもありがとうございました!

「ありがとうございました!」

2015/08/21 17:32絵をうまく描くには?

最後の質問です。
いちばんよく来た漠然とした質問。

「絵をうまく描くには
 どうしたらいいですか?」

あえて、パッと、端的に答えられる?

「よく見て、いっぱい描くこと!」

あ、それ、去年のヒロセさんの
答えといっしょだ。

「そうですね、やっぱり」

2015/08/21 17:30建築の絵をきれいに描くには。

もうひとつ、行ってみよう。

「私は建築の学校で、
 キャンソン紙に建物の絵を
 描かなくてはいけないのですが、
 それなりに綺麗に見えるポイント、
 また、これをすると見栄えが悪くなる、
 というのはありますか?」

なるほど。いかがでしょう。

「建築の絵は専門外ですが、
 『余白をきれいにする』
 というのは、
 気をつけたほうがいいと思います。
 なにも描いていない
 『余白をきれいなまま維持する』
 というか」

そういうことってやっぱり大事?

「大事ですね。
 あとは額に画用紙を貼るときの
 ガビョウのとめかた、とか。
 点数がそれで引かれるようなことは
 ないのかもしれませんが、
 その人が絵をどう扱っているのかって、
 絵を見る人なら気にするというか、
 『同じ、絵をこころざす者』として
 やっぱり、気になりますよね」

2015/08/21 17:10絵ばっかりで勉強が‥‥。

もうひとつ、質問を。

「初めてメール送ります。
 私は今年受験生で
 美術大学を目指しているのですが、
 部活や絵の予備校を言い訳に
 夏休み中全然勉強をしませんでした‥‥。
 1番苦手なのは英語なのですが、
 皆と差が出ていたらどうしようと思いつつ
 やる気もでず‥‥な状態です
 苦手な勉強に対してやる気を出すには
 どうしたら良いですか?
 また、英語が楽しくなれるような
 暗記方法などあれば教えて下さい!
 よろしくお願いします」

これは、まあ、
絵とは関係がないかもしれないけど‥‥。

「いえ、でも、私もまさにこういう感じで。
 だから、私を反面教師にして
 がんばってほしいです(笑)。」

勉強しなかった?

「しなかったです。
 とくに浪人時代は、学科の配分が低い
 芸大一本に絞っていたこともあって、
 ずっと絵を描いてましたね。

 でも、私立の美大は
 総合点で見るところも多いですし、
 やったほうがいいと思います。
 
 あと、とくに英語は、
 大学に入ってから必要です。
 外国の講師の方に
 英語でプレゼンしたりすることもありますし。
 絵で海外に出て行きたい、
 みたいな人はとくに
 やっておいたほうがいいと思います!」

ちなみに、英語にかぎらず、
「やる気が出ないとき」っていうのは
どういうふうにしてた?

「うーん、休むことですかね、やっぱり。
 いさぎよく休んで、つぎの日にがんばる。
 ただ、休みたいときって、
 ほんとに疲れているときと、
 たんに怠け心のときがあるので、
 そこはきちんと、
 見極めたほうがいいと思います」

2015/08/21 16:44描くことと、発表すること。

つぎの質問です。

「大学で絵を描いています。
 いま、絵を描いていられるのがうれしい。
 ただ、描くことと、みせることの
 あいだがわからないでいます。

 まわりの人たちは、コンクールに出したり、
 海外へ行く準備、個展を開いたり、
 たくさん動いています。

 描いていないとき、
 そのことをすごく不安に思います。
 その意欲が湧かず、その先にある
 『絵を売る』ことが想像できません。
 
 絵を描いていないとき、
 絵を描いていることが、とても怖くなります。
 絵を描けなくなる日がくるという
 予感がすごくあるのです。
 (はる)」

なかなか、むずかしいテーマです。
たぶん、絵に限らないことですよね、これは。
どう思いますか、あいちゃん。

「アドバイスができるわけじゃないんですけど、
 よくわかります、この気持ち。
 じぶんもこんなふうに不安になります。

 まわりが賞をとったり、留学したり、
 個展を開いたりしたら、焦ります。
 『絵を売る』というのも抵抗があったり。
 
 だけど、じぶんの絵がいくらになるんだろう、
 みたいなことは友だちと話したりするし、
 描いた絵が離れて行くのはいやだ、
 っていうような気持ちもあるし‥‥。

 だから、ほんとうに、
 このメールには共感します。

 私はいま大学を出ているので
 ちょっとだけこの方より
 知ってることが多いと思うのですが、
 大学を出たら、絵って描く必要がなくなるんですね。
 いま、大学にいるから、描く機会がある。
 でも、絵って、描かなくてもいいものですから。

 実際、私はいま、絵を描く機会が少なくなってます。
 でも、一生描かなくなるとは思ってない。
 このあときっと描くという予感がある。

 だから、この方も、
 いま絵を描くことが好きだったら、
 将来、描かなくなる時期が
 くるかもしれないけど、
 きっと描くことになるから大丈夫です。

 『描かなくなる日』は来るかもしれませんけど、
 『描けなくなる日』は来ないから。

 あと、もうひとつ。

 コンクールには出してみたほうがいいと思う。
 まったくじぶんのために描いている、
 というのではない限り、
 発表もしたほうがいいと思う。
 そうしないと、誰も絵に気づいてくれません。

 いまはコンクールじゃなくても、
 いろんな発表のかたちがあるから、
 どんなかたちでも絵を世に出してみて、
 どういう反応があるのか、見てみる。
 その反応が、
 つぎのなにかの機会につながるかもしれない」

大学時代のじぶんについて、
そういうテーマで
言ってあげたいことはありますか?

「じぶんはやっぱり、
 コンクールとか個展とか、
 そういうことに対して活発になれなくて、
 正直、ちょっと後悔もあります。

 大学時代は時間もあるし、
 大きな絵も描けたから。

 あと、やっぱり、発表して、
 『美術をやってない人の目に
  触れる機会をつくる』
 っていうのは大切だなって思います」

こういうテーマって、
いまももちろんそうだし、
あいちゃんが学生のころも‥‥。

「もう、ずっと話してました(笑)。
 そういう意味では、まだ考え中です。
 なにがいちばん納得できるのかな、って」

そういえば、奈良美智さんも、
糸井と話したときに
そういう若い頃のことを話されていました。
興味がありましたら、
以下の対談も参考になさってください。

『The Apple in My Heart 奈良美智さんの中へ、ほんの少し。』

『NOWHEREMAN IN THE SPACESHIP  ひとりぼっちの絵描き』

たとえば「この回」など。

2015/08/21 15:43猫の絵、完成。

猫の絵が完成しました。

ちなみに名前はクマ。
男の子だそうです。

「家にいると絵が描けないんですよ。
 この子がジャマしてくるので(笑)」

最後に首輪を描いて、
完成しました。
かわいいです。

2015/08/21 15:36旅先でササッと描くには?

さて、読者の方からの質問に
答えてもらいましょう。

「毎年夏恒例のこの企画、楽しみにしています。
 質問です。
 旅先で気になった風景、
 人々や物をササッと書きたいのですが、
 3次元のものを平面に再現するのが苦手です。
 どうすればササッと
 うまく描けるようになるでしょうか。
 (アアルト)」

ああ、旅先でササッと、わかります。
土屋耕一さんとか、伊丹十三さんとか、
和田誠さんとか、あんな感じで、
ササッと描きたいんだよね。
ほぼ日手帳とかにね。

ポイントは「ササッと」だよね。
さあ、どう答えますか。

「ええと、たとえば、どうしようかな」

じゃあ、たとえば、そこの紙コップを
ササッと描くとして。

「はい。
 輪郭なんかは、もう、ほんとにササッと。
 正確じゃなくてもいいと思うんです。
 『こんな感じ』くらいで。
 それよりは、陰影とかで、
 その『感じ』を出していく。

 大きさとか奥行きとかは
 正しく描かなくていいけど、
 たとえば、線の強弱なんかは
 きちんとつけていったほうが
 味が出ると思います」

線の強弱って?

「手前のものは濃く描く。
 遠くのものは薄く描く。
 コップも、こっち側のほうは濃く。
 向こう側を薄く描くだけで‥‥」

あああ、なるほど。

「風景を描くときも、
 形は正しくなくていいんですが、
 遠くの山は薄い線で、
 近くの自動車なんかは濃い線で描く。
 あとはじぶんの記憶が
 フォローしてくれますから、
 形よりも、線の強弱で
 そのときの『感じ』を残していく。
 人を描くときも、
 顔が似てるかどうかよりも、
 こういうふうに座ってるなっていう感じで
 ポイントポイントを描いておく」

いやあ、すばらしい。
なんか、描けるような気がしてきました。

2015/08/21 15:08絵を読めるようになること。

じぶんの絵がうまくなってるとか、
どうやってじぶんで判断するの?
誰かに評価してもらうということは
もちろんあるだろうけど、
毎日のじぶんの絵が、描けているかどうか、
じぶんで判断するのって
むずかしいんじゃないかという気がするけど。

「線をまっすぐ引けるようになる、とか、
 そういう技術的なことは、
 やってればうまくなります。
 それはもう、とにかく、描いていく。

 それ以外の、技術的じゃないところで
 じぶんがうまくなっているかどうかは、
 『絵を読めるようになること』が
 とっても重要だと思います」

絵が読めるようになること。
それは、評価できる、というようなこと?
理解を深める、ということ?

「たとえば、絵があって、
 その絵の、『顔』の、
 とくに『目』がいい、というときに、
 なぜ、『目』がいいと思えたのか。
 
 それは、たとえば、
 『目』を際立たせるために、
 絵の中心に置いているとか、
 まわりの色がそのために調整されているとか、
 きちんと読み取ることができるんです」

つまり、理由とか、原因とか、材料とか、
そういったことを「読む」。
精神的なことでなく、どちらかというと物理的に。

「そうです。それができたら、
 じぶんが描くことに活かせます。
 そういうふうに『目』を描きたいなら、
 そこで『読んだ』ことを、
 こんどはじぶんの手で再現する」

なるほど、なるほど。
それは、あいちゃんは、
じぶんでできるようになったんですか。

「予備校に行ってるときの先生が
 あるとき、教えてくれたんです。
 私の好きなボナールの絵について、
 『この絵は、窓の向こうに風景があって
  その両端に補色を置いてるから、
  窓と、部屋全体の、
  空間がうまく表現されているんだ』って。
 あとは、コントラストのこととか、
 見ている人の目がどうしてそこに行くのか、
 ということを、ひとつひとつ‥‥」

つまりそれは、言語化。

「言語化ですね」

言語化できると、じぶんでできるようになる。

「そうですね」

それって、
いわゆる「魂で描け!」みたいなこととは、
真逆ともいえるね。もう、物理的な、技術の話。

「でも、『魂で描け!』も大切で、
 『魂で描く』もの、絵の主役のためにも、
 そのまわりにある脇役たちは
 きちんと技術で演出できたほうがいい」

あーーー、なるほど。
いや、おもしろいです!

「そうですか(笑)?」

2015/08/21 15:02うまく終わられたら。

うまく描けたかどうか。
じぶんの絵がいいかどうか。
点数もグラフもないのに、
絵を描いている人は
どうやってそれを判断するんだろう。

「うーーん‥‥表現がむずかしいんですけど、
 じぶんにとって、
 きちんと終われた絵はいい絵なんです。

 描きながら、
 『あとこことここをこうすればいい』って
 終わりが明確に見えてきて、
 そこに向かっていくような感じ。

 逆に、『どうすればいいのかな』って、
 どんどん足していくような絵、
 むしろ終わりが見えなくなっていくような絵は
 あまりよくない絵です。

 うまく終われた絵は、
 たとえ、『デキがよくない』としても、
 それは、なんというか、
 『次の絵を描くために必要な絵』だから
 活きていく絵なんです」

2015/08/21 13:26猫の絵を

せっかくですから、
なにか描いてもらいましょう。

なんでもいいよ、と言ったら
「じゃあ、猫の絵を描きます」と。

友だちの家のガレージに
野良猫が仔猫を生んだそうです。
それをひきとって、かわいくてしかたがない、と。

というわけで、話をしながら
のんびりと描いてもらいます。

お、出た出た、絵を描いている人の道具。

「なんだか、きたなくて(笑)」

いえいえ、かっこいいと思います。

2015-08-21-FRI