2013/08/22 16:02
ハリ先生の卓球時代〜
電動野球盤時代。

ちなみにですがハリ先生、
高校時代って、何部だったんですか?

「中学から6年間、卓球部でした。
 世界チャンプにもなった
 ニッポンの河野満選手に、すごく憧れてね。
 プレースタイルも
 河野選手の『前陣速攻型』にしたり、
 河野選手のラケットの写真を
 ためつすがめつ、えんえん眺めたり‥‥。
 そんな6年間でした」

卓球とは、意外ですね。

でも現役で阪大の工学部に入るからには
受験勉強もしてたんですよね?
物理も数学も、好きで得意だったわけですし。

「いや、僕はデザイナーになりたくて。
 デザイナーに憧れてたんです。
 将来はきっとデザイナーになるんだろうな、
 くらいに思っていました。
 でも、高校3年生に上がってから
 美大の受験には
 デッサンがあるということ知ったんです。
 そんな練習、してなかったんです」

まずいじゃないですか。

「だから、そのことを知ったとたんに
 すてばちな気分になりました。
 無理じゃん、と。
 そこで、毎日毎日、放課後になったら
 友だち数人と集まって
 エポック社の電動野球盤に耽りました」

それは‥‥逃避行動?

「いま思えば、完全にそうです」


2013/08/22 16:37
ハリ先生の阪大時代。

では、どうやってそこから阪大へ?

「将来はデザイナーだと思っていたのに
 美大は難しそう。
 では、どこの大学なら入れるんだろう‥‥と
 自分の成績をよく分析してみたら
 ひねった問題は解けないんですけど、
 基礎的なことは、
 わかっていたみたいなんです。
 そこで、あれもこれもと欲張らずに
 教科書を中心に勉強しました。
 物理や数学が
 もともと好きだったってこともあるし
 運も良かったんだと思うんですが
 なんとか大阪大学工学部の環境工学科に
 合格することが出来ました」

ハリ先生の「憧れ力」が役だったわけですね。
でも「環境工学科」とは、なぜその学科に?

「当時、ロキシー・ミュージックの
 ブライアン・イーノなどが
 環境音楽というジャンルをやっていて
 すごく新しく見えて、好きだったんです。
 環境音楽というのは
 たとえば空港に流したらマッチする音楽、
 みたいなものですが、
 つまり、作者のメッセージが前に出るより
 ある空間のためにつくる音楽です」

はあ。ここでも「好き」がきっかけですか。

「環境工学部ってどんなことをやってるのか
 ぜんぜん知りませんでしたが、
 そういう、自分じゃなくて空間のために‥‥
 みたいな新しい考えかたに
 触れられるかもしれないなあと思って」

なるほど。「環境」とついてれば。

「あとはまあ、他の学科に
 ピンとこなかったというのもあります。
 『冶金』みたいな学科もあったんですが
 本当はぜんぜん違うんでしょうけど
 当時の僕には
 完全に鍛冶屋のイメージしか沸かなくて」


2013/08/22 17:03
教科書なんて屁である。

ハリ先生、ひとつ質問なのですが、
こんなこと聞いても
仕方ないかなとは思うんですが、
ぼく、数学の問題を解くとか、
何がおもしろいんだか
まったくわからなかったんです。

ハリ先生は、あの単純な計算問題なども
「ああ、おもしろい」と‥‥?

「いや」

おもしろくない?

「先ほど、都築卓司さんの
 『はたして空間は曲がっているか』に
 衝撃を受けたと言いましたが‥‥」

はい、聞きました。

「だって、空間は曲がっているんですよ?
 そんな話にくらべたら、
 教科書に書いてある計算の問題なんて
 まるで『屁』のように感じました」

教科書は、屁‥‥。

「ですから、
 都築先生の考えてることのレベルに
 達するためには
 こんな、問1とか問2みたいな
 つまんないところで
 つっかかっているわけにはいかない。
 そう思って、
 どんどん先に進んでいったんです。
 そういうところは、ありましたね」

なるほど‥‥。


2013/08/22 17:10
質問コーナーその1

それではそろそろ、
読者のみなさんからの質問コーナーに
参りたいと思います。

理系の質問が来ているので
いくつか、お答えいただきましょう。

────────────────────
センター試験で、
理系の教科を伸ばすコツはありますか?

(匿名希望)
───────────────────

「これは、具体的に切羽詰まっていた
 僕がやったことなんですけど
 やはり、あれこれ手を出さずに
 教科書をちゃんと勉強する。
 これに、尽きるのではないでしょうか。
 基本のところを押さえておけば
 なんとかなる問題って、案外あります。
 そのあと、難しすぎない問題集を
 一冊とおして、最後まで解いてみるんです。
 そして、解き終えたら、
 もういちど、最初からやってみる。
 基礎が身につきますし、
 これだけはやったという自信にもなるし」

なるほど。

「ああ、目の前には
 大海原が広がってるなあと思っちゃうと
 不安な気持ちになりますよね。
 でも、ひとつこれと決めて
 それだけはやったと思うことができれば
 大海原だって、意外に何とかなるかもと
 思えるんじゃないでしょうか」


2013/08/22 17:11
質問コーナーその2

────────────────────
高1の女子です。
数学嫌いではないのに、数学ができません
(点数が‥‥)
親からもから「数学嫌いでしょ?」と
言われ続けています。
どうしたら数学と
うまく付きあっていけるのでしょうか。
また、点数が悪いので
行きたいと思っていた理系に進むことも
止められています。
夢ももういっそ諦めるしかないのかな、
とも思います‥‥

どうすりゃいいんでしょうか?
───────────────────

「難しい問題ですが、自分の経験からして
 『嫌いではない』という部分を
 『好き』にまでもっていけたら
 きっとわかるようになるし、
 テストの点数も上がってくると思います。
 なので、こういうのは、どうでしょうか。
 数学の分野には
 何人もの数学者が360年もかけて解いた
 フェルマーの定理とか
 おもしろい話が、たくさんあるんです。
 そういう物語や
 数学に関する読み物をもっと知って、
 自分の中の『好き度』を上げていくんです。
 教科書の問題を解くより
 回り道になるような気がするかも
 しれませんけど
 でも、自分の中の『好き度』を上げていけば
 きっと、成績も上がると思う。
 好きこそものの上手なれと昔から言いますし」


2013/08/22 17:13
ありがとうハリ先生。

ハリ先生のお話を聞いていると
要所要所を
「何かに、強烈に憧れる力」で
突破してきている、
そのような感じがいたします。

そう、こんなことも言っておられました。

「好きになれたら、
 そのことにたいして根気が出てくる。
 好きになれないのに、
 問題集を解こうとしたって続かない。
 だから、まずは
 何が好きかを見つけるのがいいのでは
 ないでしょうか。
 そこがすべての出発点じゃないかなと
 思います」

興味を持って「好き」になったものが
思いもかけないところで
ちょっと姿を変えて
「好きになってくれた人」を助けてくれる。

そんなふうに、思いました。

なお、ハリ先生の取材では、
他にも、おもしろい話がたくさん出て
「大学卒業までに8年かかった話」
とか
「民族舞踊を研究していた時期があり
 コサックダンスも踊れた」
とか
「エッチな映画館を借りきって
 フェリーニ映画の
 自主配給をしていた時期がある」
とか
時間の関係で
残念ながら割愛させていただいた話が
たくさんあることを
ここにお知らせしておきますね。

ハリ先生、ありがとうございました!
たのしかったです。


2013/08/22 17:15
八尾研司先生です。

さて、つづいての先生は
プレジデント社で
プレジデントファミリー誌の
編集長をつとめる、
八尾研司(やおけんじ)先生です。

昨年たいへんお世話になった
斉藤賢太郎先生
社の先輩にあたるかた。

八尾さんは
同志社大学経済学部卒業、
化学メーカーの営業マンを経て
プレジデント社へ。
編集の世界に来た理由は
高校のときスポーツ新聞の記者になりたかったことを、
就職5年目にして「思い出した」からだそう。
大学のときは「就職できればいいや」で
いちばん最初に決まった会社に入ったそうですが、
親友である日刊スポーツの記者の存在が
八尾さんを転職へいざいないました。
そうして東京駅の本屋さんで
転職雑誌を見たとき表紙に書いてあった
プレジデント社に日程ぎりぎりで応募。
27歳から編集者になりました。

最初に配属されたのはプレジデント本誌編集部。
「なにも仕事させてもらえなかったです!」
と元気に笑います。
「棒ゲラって何? ぼうだら?」
編集出版用語もなにもわからなかったそうですが、
5年ほどして、小中学生のこどもを持つ親を対象にした
子育て・教育・受験雑誌である
「プレジデントファミリー」誌に転属、
いまは編集長をつとめています。

画像は、左が斉藤先生、
右が八尾先生です。


2013/08/22 17:28
八尾先生の受験生時代は?

八尾先生の受験勉強のことを聞きました。

「受験勉強を始めたのは遅かったんです」

というように、
初めて受けた模試で
結果を見てがく然としたのが、
公立高校の3年生になったばかりの4月。
偏差値は48だったそうです。

国公立は無理!
でも浪人はできない!
地元にいたい!
時間がない!

そんな条件から、
受験勉強をして偏差値を上げて行くことを前提に
関関同立を志すことにしました。
お兄さんが通っていたのが関西学院大学。
いっしょじゃつまらないからと絞り込んだ志望校が
同志社大学だったそうです。
「どうせ行かしてもらうなら
 すこしでもいいところに行きたい」
と考えての決断でした。

受験科目は3科目。
国語・英語・社会(世界史)。
どれもこれもダメだったなか、
最初に手を付けたのが英語でした。
なぜなら「問題文すら読めない」という
学力だったから。
まず英単語がわからない。
単語がわからないと文章が読めない。
問題文のなかの日本語しか読めない。
ずっと先に進んでいる同級生と
同じことをやっていてもしかたないと、
ベネッセの付録だった真っ赤な
『単語3000』という小冊子を
ぜんぶ覚えると決めたそうです。

それは「A」という単語から載っているくらい、
レベルが自分向きだったと。
しかも小さくて、
いっぱい入ってるから効率がいい。
これしかない!
買ったほかの参考書のは捨て、
ぼろぼろになるまで毎日覚えました。
1日1ページでは間に合わないので
三か月で覚えられるようにページを割って
覚えていったそうです。

次にやったのは熟語。
英単語は組み合わせで意味が変わるので、
これもわからないと問題文がわかりません。
これは「桐原」の参考書を1冊だけ。
なんとこの2冊だけを
受験のための基本参考書としました。

社会も1冊だけ。これも「桐原」の1問1答。
夏休みが終わるところで
問題文の1文字目を見たら
すぐ答えられるまで覚えたそうです。

完璧じゃないけど英文がわかり、
世界史も覚えた秋、
48だった偏差値は
70台になっていました。
なんと国語は捨てたそうです。
もう時間がなかったと。

社会は何点とれたかわかったけれど、
英語は最後までわからなかった。
国語はもののみごとにわからなかった。

あとは赤本で傾向を絞っての勉強をすすめ、
同志社に現役合格をはたしました。


2013/08/22 17:34
効率のよい勉強法って。

同席してくださった斉藤先生が、
「八尾先輩は、ほんとうに効率よく
 勉強をしたんですね」と。

取材をした東大生たちを思い出すと、
彼らは「間違い」に対して、
ポジティブさとまで言わないけれど、
ネガティブな感情がないのが特徴なんだそうです。
のびる子にとってテストというのは
「理解が足りてるかどうかわかるためのツール」
なんだそうです。そして多くの東大生が
受験勉強時代にやっていた習慣があって、
それは「なんでわからなかったか」を
ひとこと書く、というもの。
ツイートみたいな感じでメモをしておく。
あとから見直すことすらしないらしいんですが、
「間違えた記憶が残る」のが大事なんだそうです。

基本的に点数を上げるには
間違えたところを間違えないようにすることが
いちばんの近道なので、
それを潰していけば点数が上がっていく。
すごく効率のよい勉強法なんですって。

いっぽう、できる子の親というのも、
「なんでこの点数なんだ!」と
数字に感情を載せることをしないそう。
「点数は点数」と
フラットに見ることができる親の子は、
こどものテストにたいする気持ちも
フラットにしていくのだそうです。


2013/08/22 17:42
TO DOリストでパニックをおこさない方法。

さて、そんな斉藤先生に
まず質問がとどいております。

ほぼにちわ。
私は高校生の頃、数学の宿題を
期限内に終わらせることができず
(友達のを写すということすら
 間に合いませんでした)、
ほぼ白紙の状態で提出して
そのまま踏み倒す、ということを
3年間続けてしまいました。
そのせいか、大人になっても締め切りを守れず、
周りに迷惑をかけてばかりです。
昨年、斉藤賢太郎さんが
「TO DOリストを作るとよい」と
おっしゃっていました
が、
TO DOリストを作っていると、
あれもこれもそれも
できていないことばかりが目について、
どれくらい時間がかかるかも見積もれず、
かえってパニックを起こしてしまいます。
パニックを起こさずに
TO DOリストと向き合うには
どうしたらよいのでしょうか。

(山形県・むら)


「超きもちがわかる!」
と斉藤先生。
こんなにもいっぱいあるのか!
とパニックになるきもち、
とってもよくわかります、と。

つくりかたのコツは、
「ものすごくしょーもないこともいっぱい書く」
だそうです。
たとえば、

●ページを開く
●えんぴつを出す
●かばんを整理する
●机を整理する

そんなことまで。
それは意識的に書く。
斉藤先生、いまもそうしているそうです。
そして、

●誰々に電話する
●編集長に何々を確認する

書くまでもないような、
10秒くらいで終わることも
意識的に書きます。
TO DOリストって、つい

●新企画1本
●原稿アップ

とかそういう大きなことだけを書きたくなるけど、
そうじゃないんですね。

「そして、小さなことから始めるのが大事です」
それでも「やった」は「やった」。
いつの間にか3つもおわってる!
と、だんだんノリノリになっていくそう。

そして、大量のTO DOを前にがく然とするかも
しれないけれど、
「すごくかんたんなことも書いてあるんだから!」
「そんなにたいした山じゃないから大丈夫!」
「手抜きポイントもあるじゃない?」
ということが自分にはわかってる。
高い山に見えても一歩目の攻略はできる。
だから挑みやすくなる。

なるほどー。

「書くのは朝がいいですよ。
 別に夜でもいいんですが、
 ここしばらくの経験から、
 ぼくは会社に行く電車で書くようにしてます。
 そうすれば着いたとたんに始められます。
 これやったら帰る!
 というところまで書きます」

むらさん、ぜひやってみてくださーい!


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