大橋 「a.」は、たとえばお母さんが買ったのを、
娘さんが着たいと言ってくださったりするんです。
糸井 はい、はい、きっと、そうですよね。
大橋 お母さんと一緒に来て
自分用にと買ってくださるっていう
若い人もいて。
特に地方で展示会をすると
親子でお出でになるんですよ。
糸井 よく分かります、それは。
大橋 『大人のおしゃれ』で、
もたいまさこさんに着ていただいたら、
もたいさんファンの若い人がいらして、
「もたいさんが着てた、あれ!」
と言って買ってくださったり。
それで、「a.」をつくって、並べていく中で、
50代以上の服と言ってはいるけれど、
年齢はあんまり関係ないのかなぁと
だんだん、思えてきました。
皆さんに着てもらえればいっか!
みたいに、今は思ってます。
糸井 おそらく、その、今、仮に
おばおばファッションて呼んでる、
洋品店型というか、スナックのママ型というか。
田中 (笑)。
糸井 その、ゴージャスに持っていきたい感じ。
田中 柄もそうなんですよね。
糸井 そう、柄。
「柄を大きく使って、
 年取ったら派手なものを着た方がいいのよ」
っていう発想のジャンルがあって、
それはもう時代としては終わってたはずなのに、
何となくみんなが着てる。
大橋 そうですねー。
糸井 うちの子どもがものすごく小さいときに、
前を歩いてた女性の頭を見て、
「おばあちゃんと同じ美容院だ」と言ったんです。
おばあちゃんは前橋に住んでるのに、
東京でおばあちゃんと同じ美容院の人がいると思った。
つまり、洋品店のファッションがあるように、
美容院も「こういう年の人たちの
髪の毛はこうですよ」というものがあって、
そこから抜け出すことは難しかった。
洋服なら、おそらく、
すごくお金を持ってる人は、
海外のブランドに走っちゃう、
ていうことですよね。
大橋 そうですね。
糸井 田中さんは雑誌を作ってるときには、
おばおばファッション、
触らなくても済んだわけですよね?
田中 そうなんですね。
おばおばファッションは
触らなくても済んだんです。
糸井 というか、触ってる雑誌は
今までもないんですよね、きっと。
雑誌が、そこを触んないのに、
事実はいっぱいあるんですよね。
田中 そうなんですよ。
たぶん、そのおばおばファッションの人たちは、
きっと、いい雑誌ができれば読んでくれる、
数少ない人たちかもしれないとは
思うんですけどね。
糸井 そうですねー。
いま、ぱっと閃いたことなんだけど、
「a.」は、発想として、
「新しい着物」かもしれない。
つまり、母のものを娘に渡せて、
リメイクしても着られそうだなみたいな。
西洋人じゃなくて
日本人からこれが生まれたっていうのは、
ひょっとして着物なんじゃないかなって思った。
大橋 うん、うん。
糸井 出てくる源は、全然違うんだけれど。
カットなんかは考えた部分ていうのは
おありですか?
ぼくが見た目では
ちょっと平面を意識してるなぁ、と。
大橋 みんな、それぞれ体のつきが違うから、
それでも大丈夫なようなものが
あったらいいなと思って作ったんですけれど、
確かにほんとに平面ていえば
平面かもしれないですね。
糸井 そこが、畳んである着物を見るときと
同じ印象だなって。
大橋 ああ、なるほど。
糸井 アメリカのポップスの、
プロモーション的なビデオとか見てると、
絶対、立体じゃないですか。
出てる女の人たちの服から、その体から。
大橋 そうですよね。体がもう。
糸井 で、「a.」は、
ぶかぶかに着る人がいても、
タイトに着る人がいても、
服とあなたの関係で
どうぞお決めくださいっていうことですよね。
田中 ああ、ほんとにそうですね。
糸井 それも着物っぽいじゃないですか。
大橋 ああ、そうか、なるほど。
糸井 うん。まくり上げちゃって
ベルトしたって構わないとか、
大橋 ほんとにそうだと思いますね。確かに。
糸井 これね、日本人しか
こういう発想なんないんじゃないかなって、
今、急に思ったんです。
大橋さんはあんまり
東洋とか西洋とか意識してないですか?
大橋 あんまり意識してませんでしたね(笑)。
糸井 そうですよね、きっとそうですよね。
こんな柄は日本にはないんだけれど、
なーんか着物、感じるんですよ。
(つづきます)