寿 2014年の新春企画  おもちをつきに、 ちょっと伊賀まで。
あけましておめでとうございます。 お正月をきよらかに彩る純白の‥‥おもち。 縁起がよくて、そのうえおいしい。 食べたいですかと問われれば、食べたいですと答えます。 しかも、つきたてのおもちが食べたいです! 伊賀の「土楽」さんにおじゃまして、 びたーん! ばちーん! と、やってきました。 「おもちをついて食べた」という ただそれだけの内容ですが、 おめでとうの気持ちをぎゅうっと詰めてお届けします。 糸井重里のごあいさつを添えて、どうぞ。
1/1 第1回 ありがたみのかたまり
1/2 第2回 ついて、ついて、ついて‥‥食べる!(土楽にて)
1/3 第3回 お雑煮を2種類、いただく(土楽にて)
1/4 第4回 もちつきの余韻
第1回 ありがたみのかたまり
2013年の年の瀬に
三重県伊賀市の「土楽」さんを訪ね、
みんなでもちつきをしてから2日後のこと‥‥。

ここに、ぎこちないかたちの「鏡もち」があります。
自分たちでついたおもちを丸めて、つくった「鏡もち」。
そのおもちの前に、糸井重里がスッと座りました。

さあ、2014年・新春企画をはじめましょう。
まずは新年のごあいさつから。
糸井 えー‥‥
新年あけましておめでとうございます。
─── おめでとうございます!
糸井 いまはまだ12月ですが、
こういうセッティングもしてありますので、
ぼくは当然のこととして新年のあいさつをしました。
─── ありがとうございます。
糸井 赤いくびまきもしてきました。
─── おめでたいです。
糸井 ‥‥で?
なにをお話しましょう。
2日前のもちつきを振り返ればいいのでしょうか。
─── もちろん、もちつきのお話も。
でもまずは、
「おもちの話」からうかがわせてください。
糸井 もちつきではなく、もちそのものの話から。
─── そうです。
おとといのもちつきはとてもたのしかったのですが、
なんと言いますか‥‥
新春というよりも
あの日は「すばらしい年末」の風景でした。
糸井 ああー、たしかにそうでしたね、
ものすごい「忘年感」でした。
もちつきというのは、お正月の準備ですから。
─── はい。
ですので、まずは元日らしく
新年のごあいさつと
縁起のいいおもち本体の話から、
このコンテンツをはじめたいと思ったのです。
糸井 そうですか。
‥‥ま、そのあたりの構成はお任せします。
なにしろまずは、
「もち」そのものの話。
─── お好き‥‥ですよね?
糸井 自分がとくべつな「もち好き」かというと、
それを強く意識したことはないです。
ふつうに好きなんだと思いますよ。
たくさん食べるわけでもなく。
あんこと同じですね。
自然なつきあいです。
─── あんこと同じように好き‥‥。
わかりました。

そのおもちを、
人はみな、なぜお正月に食べるのでしょう?
縁起物だというのはわかるのですが‥‥。
糸井 それを語るには、
昔と今を比較してみる必要があります。
─── 昔と今を‥‥。
糸井 そうすることで見えてくることがあるんです。
昔の人は、なぜそんなにも、
神様にお供えするほどまでに、
もちをたいせつに考えていたのか。
─── ‥‥なぜでしょう。
糸井 今の人はみな、年中あるもののひとつとして
もちを食べています。
でも昔は、米をつくること自体が命がけでした。
税金もお米でしたよね。

なかでも、もち米は、
ありがたみのかたまりのような存在だった。
─── ありがたみのかたまり。

糸井 「もちをたくさん食べると母乳がよく出る」
と言われるくらいに、
昔はたいせつな栄養源でもありました。
肉をよく食べる西洋人とちがって、
アジア人は必須アミノ酸が不足しがちですから
大食いをすることで
栄養を補っていたという説があります。
─── 日本人は、大食い。
糸井 ぼくが学生のころにはまだ、
「どんぶり飯を何杯食った」
という自慢話が当たり前にされていたんです。
量で栄養を満たす時代だったんですね。
─── 米の量が、ありがたかった。
もちは、ありがたみのかたまり‥‥。
糸井 そういう感覚が、
ぼくらのなかに残っているんじゃないでしょうか。
─── ‥‥ああ。
糸井 昔の人がもちを思う心と、
今の人が思っている心とを重ねあわせてみる。
そして思いを馳せる。
それが正月をむかえる儀式なのかな、と思います。
─── ‥‥たしかに、
もちつきという儀式を体験しながら、
自分のなかで何かが
よみがえってくるような感覚がありました。
糸井 もちつきという行為には、
過去からの記憶を呼び起こして
自然と力をこめさせる何かがありますよね。
演劇的というか‥‥
儀式としてとても強いものだと思います。
─── 振りおろされた杵(きね)が、
もちを叩くあの音‥‥。

ばちーん!

糸井 濃密な時間です。
─── 沸く、というか‥‥
みなぎる、というか‥‥。

びたーん!
  ぼすっ!
  ずどっ!
  ぱーーん!

─── ‥‥たのしかったのですが、
たのしかっただけじゃなく、興奮がありました。
糸井 ええ。興奮しますね。
─── ありがたみのかたまりを、つきあげる興奮。
糸井 そう。
─── ‥‥ありがとうございます。
とてもいい導入になりました。

ここから、
ぼくらが体験してきた「土楽」さんでの
もちつきをレポートしていきたいと思います。
糸井 なるほど。
ま、構成については自由にやってください。
─── 時間を2日前に戻します。
われわれは、伊賀焼きのふるさと、丸柱へ。

─── 土楽のお母さんと四女の道歩さんが、
準備万端整えて、出迎えてくださいました。

─── こんにちはー!
よろしくおねがいしまーす!
道歩さん ようこそー!
お母さん いま準備していたんです。
もうすぐね、もち米が蒸しあがりますよ。

─── す、すごい、4段重ねのセイロ‥‥。
湯気が、湯気が‥‥。
(次回いよいよ、つきます!)
2014-01-01-WED
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