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いよいよ『ゼルダ』がやってきた!

 
「ゼルダの伝説 風のタクト」
制作チームの代表者4人に話を聞く
座談会も、いよいよ最終回です。
この座談会、開発が終わったあと、
発売まであと10日!
というような日に行われただけに
みなさんの「思い」の強く、
濃いことといったら!!
思えばほぼ日「裏E3」で
はじめてこのゼルダを見たときの
衝撃、感動、期待、すごかったなあと
しみじみ思います。
そのとき制作チームのみなさんは、
まるでマラソンを全力疾走で走るがごとく
がんばっていたんだなあ。
今回も楽しい話、いっぱい出てきますよ。
ではどうぞ!!

任天堂 情報開発本部 制作部制作課 係長
ディレクター

前作から引き続き、全体を統括するディレクターとして活躍。
携帯の待受け画面に設定した、生まれたばかりの息子
(でもなかなか会えない)の写真を支えに、がんばりました。
任天堂 情報開発本部 制作部制作課
スクリプト&イベントプランニング
フリスクを口に、娘の写真を胸に、
リリー・フランキーのエッセイを支えに、
書いて書いて書きまくりました。
任天堂 情報開発本部 制作部制作課
デザインマネージャー

プレイヤーキャラクターデザイン。
アイテムや街の人々などの監修も。音楽とふかふかのタオルと
妻の愛情を支えに、ここまでたどり着きました。
任天堂 情報開発本部 制作部制作課
デザインマネージャー

キャラクターデザイン、なかでも敵キャラを全般的に監修。
海洋堂の「激戦/兜コレクション」を見つめ、
髷物の音楽を聴きながら、描き続けました。


ほぼ日 「タクト」を振るという動作をつくるのに
本職の指揮者じゃない春花さんたちが
自分たちのイメージを大切にして
作り込んでいった結果、
いちばん「らしい」ものができたわけですね。
現実に近いリアルなものごとが
ゲームにおけるリアルとは、違うこともある。
高野 例えばプログラムでも、リアルに、
ほんとうはこういうものなんだって
組んでしまうと、たぶん面白くないんです。
そうじゃなくて、
「そういう感じでしょ?」
っていうもののほうが、
リアルに見えたりするんですね。
春花 今回の絵にも、ちょっと通じるところが
あると思うんですよ。
例えばポケットから石を出すときに、
リンクがゴソゴソって動作をしながら、
「ここかな? あるかな?」
っていう表情をします。
けれどそれは多分、
本当の人間だったら、しないんですよ。
「僕は探しています」っていう顔を
しながら探し物はしないものなんです。
でもゲームでは、
何か探してるな、って顔してるとか、
そういうふうな仕草をしてるっていうのを、
ある程度ウソついてでも強調してやった方が、
いいんです。
青沼 任天堂のスタッフは、
そういうことを
自主的にやってくるわけですよ。
だから、僕が想像して、
「こう作ってね」って命令したんじゃ、
ダメなんですよ。ぜんぜんダメなんです。
春花 青沼から、こういう感じのものを、
っていうオーダーがあったときに、
やっぱり僕の中で吟味して、
たぶんこういうことを求めてるんだろうな、
こういうふうに表現したら
わかりやすいのかな?って、
咀嚼した上で、出していきました。
ほぼ日 それがもっと若いスタッフにも、
同じように、少しずつある
チームなんですね。
高野 とはいうものの、基本的に、
ゼルダ作ってるスタッフはもう、
みんなオッサンばっかですからね(笑)。
青沼 いや、オッサン俺だけだろう。
ほぼ日 新人も、毎回参加していますよね?
青沼 その間の世代的な開きと言ったらもう‥‥。
高野 普段の会話が通じないこともあります。
青沼 仕事してる上では大丈夫ですけどね。
ほぼ日 ゼルダ・チームには
女の子成分みたいなのってあるんですか?
“女性的なもの”が、あんまり表に
出てこないというか、
ゼルダは男の子チームって感じがするんですが。
青沼 いや、女の子いますよ。
高野 リト族(鳥の一族)の部屋は、
女性スタッフが作ったんですよ。
僕らは
「いちばん偉い族長の、子供のいる部屋を」
って、それだけしか言わなかったんですよ。
僕のイメージの中では
「ふつうの子供部屋」でしかなくて、
机とイスとベッドがあればいい、
それぐらいのイメージしかなかったんです。
でも彼女たちは、子供が住んでる部屋だから、
洋服ダンスもあって、
洋服もちゃんと掛かってるだろうとか、
そこがやっぱり女の子なんですね。
僕にはぜんぜん想像できなかった。
女性が手がけたことで、
ちゃんと生活感溢れる
部屋になったんですよ。
ほぼ日 嬉しいですね。
高野 子供が遊んでるようなオモチャも、
バッて並べられてたり、
「こんな感じでどうですか?」
って訊かれて、先輩としては、
「びっくり! 全然想像してなかった!」
といいたいところをおさえて、
「俺の想像して‥‥いた、ものだよ」とか(笑)。
ほんとうはぜんぜん想像できなかったんですけど。
女性ならではの感覚は、
いろんなところで活躍してるんです。


ほぼ日 これができたから、グワッて進んだぜっていう、
転換点はありましたか?
青沼 目かな?
ほぼ日 目!? リンクの目ですか?
高野 ええ。まるで猫みたいな大きな目。
スタッフのあいだでは、
よく猫目、猫目って言われてたね。
春花 あの目を、もっと使おうって言ったのは、
宮本なんですよ。
青沼 「E3」で発表したときに、
海外の人たちは、あれをすごく
東洋のイメージにとらえたらしいんです。
しかもそれは猫の目に近い、みたいな。
今のリンクの目より、もう少し
ほんとうに猫目に近いような
目だったんですよね。
そこから始まって、
逆にそれをもっと使って、
目をもっと生きさせるような方向に
持ってこうよ、っていうことを、
宮本が提案したんです。
「そこまでいろんな人が、
 目に注目するんやったら、
 それをもっと使おうよ」っていうことで。
ほぼ日 あの目を「生かす」方向が決まって
一気に進んだってことなんですね。
青沼 目がキョロキョロキョロキョロ
いろんなとこ動くっていうのを
入れたときに、ガラッと変わったよね。
でも、それも、たしかに宮本からの
提案だったけれど、
具体的にみんなに
「こうしてね」って話をしたわけじゃなくて、
いつの間にやら出来上がっていきましたね。
春花 そういうふうにみんなを動かしたのは、
宮本さんのプッシュが大きかったんですよ。
絶対やりなさい、ぐらいのプッシュだったもの。
そして、いままで出来ていたデータを
ぜんぶ「なし」にして、作り直すわけだから
けっこう大変やったんです。
でも「それは絶対やらなあかん」ということで、
数日潰して、それをひたすらやるような、
家内制手工業的な作業をしましたよね。
ほぼ日 数日で出来ちゃうのも、すごい。
春花 それができた瞬間ですよ。
みんなが「あららららら!」
みたいな、ことになって。
高野 目を中心に、ネタはどんどん生まれたよね。
目を動かそうぜってことになったあとは、
たとえば“手紙を読む”という動作にしても、
プログラマーが自発的に
「これはやっぱり動かさなきゃ、
 手紙を読んでるんだから、
 文字がスクロールしたら、
 リンクが読んでなきゃおかしいよ」
って言い出したりね。
そうすると表情もすごく豊かになった。
春花 状況によっては、向こうに人がいるとか、
ここに敵がいるとかっていうようなときに、
リンクの目が、勝手にそっち見るように
なっているんです。
リンクの目を通して、
何が起こっているのか、
その世界がどうなっているのかが
わかるようになり、
周りにあるものの存在感が、
グッと押し上げられたんですよね
高野 僕も、スクリプトが書きやすくなりましたよ。
困ってるとか悩んでるという表現は、
ふつうは口とか眉毛とかで表現するんですが
さらに目が動くことによって、
あらゆるキャラクターが自発的に
しゃべり出すような感じがするんです。
例えば「妹を助けたのか?」って
ちがうキャラクターに訊かれたときに、
ふつうだったら、相手のセリフで
「そうか、妹さんは助かってないのか」って
言わせたりするんですね。
でも、その時、リンクの目が下を見て、
うつむいてしまったら、
相手には「同情する」って気持ちが生まれますよね。
すると自然に、相手のキャラクターが
「そうか、何も言うな」
って言う。
そんなふうにセリフが生まれてきたんです。
リンクの目の動きがなかったら、
説明的なセリフが多くなったでしょうね。
そしてプレーヤーにも、
リンクの表情を通して、
妹は助かってないんだなってわかる。
ほぼ日 そうか、リンクの目の表情が豊かなことで、
ほかのキャラクターも、生き生きしてくるんですね。
高野 ほかのキャラクターたちも、
すごく意識して
モーションを付けるようにしたね。
青沼 周りも、目を動かさなきゃ
いけなくなってくる。
高野 大げさなしぐさじゃなくて、
「目でわからせる」ってことだね。
目が動かなかったら
身振り手振りで作っていた大変な部分が、
ちょっとした仕草だけで
わかるようになったのは、よかった。
ほぼ日 リンクはプレーヤーにヒントを出してくれている
わけですね。
敵がどこの方向にいる、だとか、
目の表情を追えば、わかる。
青沼 そういう対話が、
プレーヤーとリンクの間に
生まれるわけですよね。
高野 64のときそうだったんですけど、
リンクっていうと、
必ず背中を向けてるっていうものが当たり前でした。
目が動くっていうのがわかると、
カメラを前に持っていって、
俺がやってることは、合ってる?
みたいな感じでリンクの目を確認したり。
リンクが違うとこ見てると、
あ、違うとこがあるんちゃうか、
それがまたヒントになったりとか。
滝澤 というプレイをして欲しいですね。


ほぼ日 逆に、「プレーヤー=リンク」という近さが、
ちょっと離れる気はしませんでした?
リンク=自分じゃなくなりません?
自分の名前を付けたものの、
最初のうちは、ちょっと躊躇したりして‥‥
春花 そうそう。だいたい自分の名前を
付けますよね? そうすると、僕も、
やっててリンクの顔を見るんですよ。
で、リンクがいろんなとこ見るんで、
自分自身じゃなくなった感じが
するんじゃないかと気にはなったんですが・・・・。
青沼 目線を入れたときには、
確かにそれは感じたんだけど、
僕的には、もう、息子だと思って見てるもので。

(一同笑)
滝澤 でも、逆に言うと、
感情移入度みたいなのは
高まったと思いますよ。
青沼 自分と一体化しているものではない誰かを、
自分が操作するみたいな遊び方だね。
高野 しぐさが、自然だからね。
そういうときに自分だったらこう動くな、
というしぐさを、リンクもするんですよ。
それも、さりげなく。
青沼 自分がそこにいるわけじゃないですよね。
ゼルダの世界にいるのはリンクであって、
自分ではないってところが、どうしてもあるんです。
そこを一体化させるって、
もっともっと追求したら、
違う道があるのかも知れないけど。
逆にそこをバスッと切って、
そこにいるリンクが何を見て、
どう動いてるの? っていうのを、
自分で体感しながら操作するというのが、
ひとつの臨場感だと思っているんです。
高野 この子、どうにかしてあげなきゃ、
っていう気持ちになりますよね。
青沼 そうそう。だからそのリアクションを、
うまいこと自分が吸い上げてやらないと、
なんか悪いんじゃないかっていう
感覚になるとかね(笑)。
そういう感覚が出てきたところが、
間違ってなかったな、
っていう感じがしてます。
ほぼ日 それにしても‥‥みなさんの
モチベーションとかって、すごいですよね。
いいものにしようという気持ちが
全スタッフにあるじゃないですか。
それはやっぱり、ゼルダっていう
共通経験があるからなんですか。
青沼 僕らに限って言えば、
ほんっとにもうこの4人は、
「時のオカリナ」のときから
ずーっと一緒ですから。
もう、腐れ縁のように。
高野 そしてね、僕らだけじゃなくて、
ゼルダを好きでいてくれるファンのみなさんも
一緒なんですよ。
ファンの人にとっての「ゼルダ」を考えると、
とても大きいものだろうなと思うわけです。
僕はそういうプレッシャーが
すごくありました。
単純に続編とかっていうので、
まとめてしまうとダメだと。
ほぼ日 でも、そうだったら、
多分、リアル・リンクに
なってるんだと思うんですよ。
「ゼルダってこういうものだ」
という声をきいていたら。
でも、あえて、みなさんは、
リアル・リンクにしていない。
青沼 それは挑戦ですよね。
やっぱり、みんなが思うような、
普通のゼルダ作って返したって、
面白くないじゃないですか。
やっぱりこっちにも、
たくらみがあるわけですよ。
春花 リアルなもの出したとしても、たぶん
「あ、やるのね、これ」っていう
スッ、てそのまんまスルーしていく
感じになってくと思った。
高野 逆に言ったら、そういうことができる、
任天堂って会社自身も、
僕らからしてみたら、良かったんです。
ここまで冒険をさせてもらえたっていうのも、
恵まれてると思いますね。
青沼 ゼルダっていうものが、
何でも内包できるものになっている、
という共通の思いがあるんです。
だから、どんな選択肢があっても、
ゼルダっていうゲームっていうのは、
変わらずにあるっていう部分が
あるんでしょうね、きっと。
春花 ゼルダを作るっていう部分では、
変わらないんです。
高野 ユーザーがホントに、
「ああ、やっぱりこれはゼルダなんだ」
って思ってくれたら、いちばん嬉しいですね。
青沼 うん、でも、そういうものにしてますけどね。
春花 けっこうそういう自信はありますよね。
青沼 僕ら、ゼルダを作りながら
遊ばせてもらってるんでしょうね。
作りながら遊ばなきゃ面白くないよ、って。
そのための第一歩っていうのが、
あの絵だったんでしょうね。
僕らもね、もう3回目ですから。
ゼルダを作るのは。

(一同爆笑)
青沼 変革や、自分たちの問題定義を持たないと、
先進めないな、っていう部分もあるしね。


ほぼ日 ますますみなさんがつくる次回作も楽しみですね。
ゼルダなのか、完全新作なのかわからないけど、
このチームが何やるんだろうとか、
このスタッフが何をやるんだろうっていうのが、
すーごい楽しみになってきました。
ところで、このあと、イトイと宮本茂さんが
対談をするんですけれども、
みなさんから訊いておきたいことって、
ありますか?
春花 本音で?
ほぼ日 本音で。
高野 最初に絵をみたときにどう思ったかっていうの、
聞きたいですよね。
マジで、どうだったのか、と。ね?
じつは僕と滝澤、両方とも、結婚のとき
宮本に仲人してもらいまして。
挨拶で自宅に行ったときも、
やっぱり仕事のことがすごく気になって、
「あの絵は、どうなんですか?」
とかって(笑)。奥さんの前で
訊いた憶えがあります(笑)。
苦笑いで「いいんじゃないの?」って
言ってくれてたんですが‥‥
ほぼ日 ホントはどうか?
高野 うん、ホントはどうなの?
って訊いてみたいですね。
ほぼ日 それとも、あ、正解が出たなって思ったか。
高野 訊いてください。
「アイタタタ」でも
「やってくれるわ」でも
スタッフとしては知りたいところですよね。
ほぼ日 「僕は好きだけど」って言ったらしい、
とか、ちょっと聞いたんですけど。
滝澤 「だけど」がコワイ!
ほぼ日 リアル・リンクを求められてる現状とかを
考えつつおっしゃったのかも。
高野 京都の人間だから、
隠してるんじゃないかな、って(笑)。
ブブ漬けでも、って感じで(笑)。
ほぼ日 わかりました、訊いてみます。
本日はどうも、ありがとうございました!
(次回はいよいよdarling宮本茂対談! お楽しみに!)

その4 春花さんの場合
「CDとタオル 」


まず、越路吹雪さんのベスト。
それと、基本的に映画のサントラが結構好きで。
中でも「ジャッキー・ブラウン」のサントラは
久しぶりにヘビー・ローテーションで
聴いてましたね。もう、好きで。
あと、「タクシー・ドライバー」はね、
これをヘッドフォンで聴いていると、
デ・ニーロの雰囲気になりきることができるんです。
つまり「今、俺に喋りかけるなよ」
っていうふうなオーラを出すわけ(笑)。
でね、さらに、こうして‥‥
(タオルを頭にかぶる)
顔がかくれるでしょ?
何かに似てませんか?
「ロッキー」ですよ〜。
しんどくなったら、かぶるんです。
そうすると、落ち着くし、
話しかけられる率も減るし、
集中できるんですよ〜。
滝澤さんの証言:
デ・ニーロだったの? ロッキー?
話しかけてほしくなかったのか。
わからなかった‥‥(笑)。
僕つい、「春花さん?」って、
よう話しかけてましたよ。すいません。
高野さんの証言:
春花、自分の中では、モヒカンの
デ・ニーロだったり、
傷だらけのロッキーやったんやね。
ごめんね、わからなくて‥‥。
青沼さんの証言:
春花32でしょ?
僕(39)が言うならまだわかるけど
越路吹雪やデ・ニーロに
キャーキャー言ってるのって、
古くないか? いいんだけど、別に。

撮影協力:
THE RIVER ORIENTAL KYOTO
http://plandosee.co.jp/tro/

この座談会は、鴨川沿いの大きなレストラン
「ザ・リバー・オリエンタル・キョウト」で
収録されました。
昭和初期の巨大な木造建築は、
もともと豪奢な割烹旅館「鮒鶴」だったもの。
アジアのリゾートふうのしつらいを加味し
レストラン、バー、パーティールーム、
結婚式もできる教会などをもつ施設に
生まれ変わりました。

京都市下京区木屋町通り松原上ル美濃屋町180
Tel. 075-351-8541
Fax. 075-351-5688
阪急河原町駅より徒歩6分、
京阪五条駅より徒歩3分、
JR京都駅からタクシーで約10分

営業時間:
ブライダル 10:00〜20:00
レストラン 17:30〜23:00
バー 21:30〜03:00
2002-12-16-MON