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第7回 足りなかったらそのときにつくろう。

糸井 『ピクミン3』って、
小さい子どもに遊ばせてみると
どういう反応をするんですかね。
宮本 ああ、小学生までしか試してないですね。
糸井 そのへん知りたいねぇ。
宮本 たぶん、子どもにもわかる
おもしろさだと思うんですけどね。
糸井 ちっちゃい子にもわかる快感って、あるよね。
カブトムシ戦わせたりするのとか、
近いかもしれない。
宮本 そうですね。
段取り能力が鍛えられたりするかもしれない。
岩田 段取りがうまくなるのは、ありそうな気がしますね。
それは、子どもでも、大人でも。
こっちでこれをやりつつ、こっちでこれをやって、
これをこっちに運んでるあいだに
こっちでこれをやってっていうのって、
たとえば料理つくるのとかと同じ構造じゃないですか。
糸井 そうだよね。
岩田 だから、『ピクミン3』がうまくなると、
段取りがうまくなるというか、
いわゆるワーキングメモリーが
鍛えられるというのはあるんじゃないでしょうか。
宮本 あとは「方針を変える」っていうことの影響が
シミュレーションできるゲームなんですよね。
そういうことって、生活のなかでは
なかなかできないことだから、
「思い切って変えてみよう」って
チャレンジするのは、けっこういい経験ですよ。
糸井 なるほどね。
やっぱり、ふつうのゲームじゃないなぁ。
宮本 変なゲームなんですよ。
ほんとに自分が出るし、効率っていうものがわかるし。
あと、ピクミンを失ったりすると、
「ぜんぶ、自分が悪いんだ」って
つくづく思うんですよ。
糸井 あー(笑)。
岩田 ふつうは100ものキャラクターが動いていて、
自分がそのなかで直接操作できるのは
主人公キャラクターだけだとしたら、
文句のひとつも言いたくなるはずなんですよ。
だけど、これは、失敗してしまった瞬間に、
「あー、ごめんなさい、ごめんなさい」って。
糸井 「ごめんなさい」って言っちゃうよね。
岩田 「自分がやってしまった」っていうことが
はっきりと突きつけられるんですよね。
宮本 そうなんですよ。
糸井 そういうことも含めて、
つねに「退屈しないでやれる」っていうのが
『ピクミン』の特長だとぼくは思うんですけど、
考えてみたらそれって、
ぜんぶ、敵のおかげなんですよね。
宮本 うん。
岩田 そうですね。
糸井 ゲームって、まぁ、だいたいそうだけど、
「敵の物語」だよね。
宮本 (笑)
岩田 そう思います。
だから、『スーパーマリオブラザーズ』は
マリオに踏まれるきのこやカメの物語。
糸井 そうそうそう。
ボスはボスらしい敵としてそこにいて、
ボスとしてのアイディアが盛り込んである。
そこに「ぼく」が対面していくわけですよね。
だから、なんだろう、ストレスっていうか、
おもしろいこともストレスなんだよね。
岩田 はい。
糸井 「ストレスの物語」なんですよね。
宮本 『ピクミン3』は敵もそうですし、
置いてあるお宝やフルーツも
考えようによってはストレスですよね。
糸井 それを探して運ぶっていうストレス。
宮本 やっぱりストレスですよね。
岩田 それから解放されたときのよろこびと。
糸井 このあいださ、小川で、釣りをしたんだよ。
鹿児島県にあるきれいな小川で。
「ここはいくらでも釣れますよ」って言うから、
仕掛けを借りてハヤを釣ったんだけど、
とにかく、もう、釣れるんですよ。
針を投げ入れると、すぐ釣れる。
その意味ではノーストレスなんですけど、
しばらく釣ってたら、なんかもう、ほんとに、
仕事みたいになってきちゃって。
一同 (笑)
岩田 釣れてもうれしくないですか(笑)?
糸井 「うれしい」っていうことばを
疑いだしてしまうくらい釣れちゃうんですよ。
だって、サビキに餌を入れて、
針をたくさんつけて入れたら
いっぺんに2匹とか3匹とか釣れる。
これ、餌を入れなくても
釣れるんじゃないかなと思って、
サビキに餌を入れずに空針で入れてみたら、
それでも釣れるんだよ。
一同 (笑)
糸井 で、やっぱりその釣りは
ゲーム性がないっていうことで、
オレはやめちゃったんです。
岩田 敵のいないゲームが、
おもしろくなかったんですね。
ストレスのない状態が
たのしいかというとそうじゃない。
糸井 そうそうそう。
だからやっぱり
「アイディアは敵の中にあり」というか、
自分がそのアイディア以上のことをやって、
乗り越えていくことが楽しいんですね。
宮本 そうですね。
まぁ、釣れないとイヤですけどねぇ。
糸井 うん(笑)。
宮本 釣れないとイヤですけど、
でも、隣の人が1匹釣ったら、
それでもう、OKですよね。
「あ、釣れんねや」っていうことを
見せられるだけで、ずっと遊べる。
岩田 そうですね。
糸井 だから、ちっちゃい魚が、なんの苦労もなく、
ただただ、どんどん釣れるのと、
隣の人だけ釣れて自分だけが釣れてないのと、
どっちがいいかって言ったら‥‥。
宮本 隣の人だけ釣れて自分が釣れてないほうが、
遊びとしてはおもしろいかもしれない。
糸井 そうなんですよ。
だから、ストレスって、
遊びのなかでは歓迎すべきもの。
岩田 はい。
糸井 そういう意味では、ずっと話してきましたけど、
正直、『ピクミン3』という遊びには
いまぼく、かなり誘われてますね。
宮本 あ、うれしい。
ぜひ、遊んでください。
糸井 たぶん、遊ぶと思います。これは。
ぼく、最初の『ピクミン』は
だいぶ遊びましたから。
岩田 ちなみに、最初の『ピクミン』って、
すごくストイックなゲームで、
ゲームのなかの日付けで30日以内に
ミッションをクリアーしなければ
いけなかったんですよ。
だから、上手じゃないとクリアーできなかった。
今回の『ピクミン3』は、
厳しい日にちの制限はありません。
何日かかってもかまいません。
だから、ゆっくり段取りをしながら進めれば、
まぁ、ほぼ、最後までクリアーできます。
糸井 なるほど。
岩田 でも、世の中には、ぜんぶのミッションを
すごく少ない日数でクリアーする人もいる。
それを聞いて、めらめらと燃えるタイプの人は
もっともっと日付けを短縮することに
チャレンジしたくなるんですよ。
だから、初心者にも、突き詰めたい人にも、
ちょうどいいストレスが用意されているんです。
糸井 それ、最高じゃないですか。
宮本 シリーズの流れでいうと、
1作目の『ピクミン』を遊びやすく、
遊び続けられるようにしたのが
『ピクミン2』なんです。
で、『ピクミン3』は
最初の『ピクミン』の原点にもどって、
徹底的に自分に挑戦できる遊びにしてみました。
岩田 だから、宮本さんは、
アクション要素のあるゲームの
上手な人と上手じゃない人の差が
これほどまでに広がってしまった世の中に、
「これなら誰でもできるんじゃないの?」
っていうものとして
『ピクミン3』を投げ込もうとしてるんです。
それがどういうふうに受け入れられるのか、
私はとてもたのしみで、わくわくしてます。
糸井 宮本さん、自信作ですね。
宮本 そうですね。
いろんな快感がいっぱいあるゲームなので
自分の好みに合わせて、
いろんな人に遊んでもらいたいですね。
糸井 いや、だいぶ誘われました。
今日はどうもありがとうございました。
宮本 ありがとうございました。
岩田 ありがとうございました。
(『ピクミン3』の鼎談は今回で終わりです。
 最後までお読みいただき、
 ありがとうございました。)

 

2013-07-24-WED