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『どうぶつの森』 遊んだ人と作った人。

第5回 絵はそのままにしろ

糸井 このゲームって、
人の心の鎧を脱がすゲームと言いましょうか、
ひねくれている人であっても、
ゲームの世界にスッと入っていけるような
作りになっているじゃないですか。
岩田 うんうん。
糸井 そこらへんの仕組みをお聞きしたいなぁ。
江口 そのあたりを話すにあたって、
まずはこのゲームの成り立ちを説明しますと、
このゲームって最初は
動物を引き連れて戦うゲームだったんです。
糸井 ‥‥それはけっこう驚きますね(笑)。
野上 最初はニンテンドウ64(※)の拡張機器である
64DDというハードで作ってたんです。
大容量がウリだったので、広大なダンジョン、
広大な平原を実現させるべく作っていたのですが、
64DDで開発することが中止になり、
通常のROMカセットで作ることになったんです。

※ニンテンドウ64
1996年に発売された据え置きゲーム機。
3Dグラフィックの表示能力に力を入れ、
ゲームの新たな可能性を広げた名機である。
『スーパーマリオ64』や
『ゼルダの伝説 時のオカリナ』など名作多し。
糸井 じゃあ内容を削ってサイズダウン
しなくちゃならなかったんですね?
江口 そうです。
データを4分の1以下にしないといけない、と。
岩田 さすがにこれじゃダメだと判断しましたね。
江口 それなら発想を変えて、動物は活躍するというよりは
話し相手になってもらったり、
いっしょに暮らす人になってもらうのはどうかな、
って考えたんですね。
糸井 また、それはガラっと変えましたね。
岩田 そもそも、このソフトは、1台の機械で複数の人が
時間をずらして遊ぶ、というテーマを
ずっと持ち続けて作られてるんですね。
それこそ、動物を引き連れてるころから。
糸井 うんうん。
岩田 自分が仕事に行ってるあいだに子供が遊んでて、
帰ってきたら、その子供が遊んでいた様子がわかる。
さらに、自分が何かをしたことが、子供もわかる。
そういう時間をずらして
世界を共有する遊びを目指してたんですよ。
糸井 なるほど。
その根本的なコンセプトを
別のアイデアで実現させようと考えたわけですね。
岩田 そうなんです。
それでいて、本当に運命って不思議だな
って思うのが、このゲームはその後
ニンテンドウ64用ソフトとして登場し、
そこそこ話題になって売れたんです。
「じゃあ増産しよう」となったけど
時計を制御する特殊なチップが使われているせいで
「納期4ヶ月」と言われてしまったんですね。
糸井 それはかかり過ぎですね。
岩田 えぇ。しかも、
そうこうしているうちにゲームキューブ(※1)の
発売が迫ってきてしまったんです。
そのとき、宮本さん(※2)が「じゃあ、もう、
ゲームキューブで作ろう」って言うんですよ。
で、ゲームキューブ版が開発されることになって
宮本さんが最初に指示をしたのが
「絵はそのままにしろ」。

※1 ゲームキューブ
任天堂が初めて光学ディスクを採用した
据え置き型ゲーム機(2001年発売)。
そのソフトはWiiでも遊ぶことができる。

※2 宮本さん
あの『スーパーマリオブラザーズ』を作った
マリオの生みの親。
任天堂株式会社専務取締役。
糸井 へぇー。
岩田 ニンテンドウ64からゲームキューブになれば
グラフィックの性能はグンと上がって
ほかのゲームはどれもキレイなんですよ。
ところが『どうぶつの森』だけは
ゲームキューブらしい
美麗なグラフィックではなかったんですね。
でも、美麗なグラフィックの『どうぶつの森』を
出していたら、絶対に
ニンテンドーDS版は作れていないんです。
糸井 それは贅沢にした絵を
DS版に置き換えるのが困難、ということですね?
岩田 そうです。
DS版がなければ『どうぶつの森』は
こんなにみなさんに遊んでもらえる商品には
なり得てないでしょうからね。
不思議な運命ですよ。
野上 まさに幸運だと思います。
糸井 じゃあこれはちょっと
ご本人からお聞きしないといけないですね。
「絵を変えちゃいけない」と言ったのは
どういうところからなんですかね、宮本さん?
(つづきます)

「僕らも「どうぶつの森」について話したい!」



今回、お話をする乗組員
シェフ、モギ、やえ、ベイ

『どうぶつの森』は現実どおりの
時間が流れていくゲームなんだけど、
やえちゃんとモギちゃんの村は
ゲーム内の時計をずらしてあるんですよね。
モギちゃんは12時間で、やえちゃんは‥‥。
4時間40分です。
すごい半端だね。
僕、時差をつけずにプレイしてるんで、
うちのたぬきちの店はすぐ閉まっちゃうんです。
で、家に帰ってプレイしたときに、
その時差がすごくありがたいんですよ。
そう言ってもらえるとなんかうれしいですね。
朝まで魚を持ったまま寝たくないんですよ。
武井さん(シェフ)もずらせばいいじゃん。
僕自身がそういうことができない性分で。
うちも、2、3時間くらいずらしてありますよ。
私は最初6時間ずらしてたんだけど、
それでも間に合わないってことがわかって、
12時間ずらしてあります。
これだと「昼夜逆転」になって
すっごく遊ぶのがラク。
遊ぶのがラク(笑)。






12/17 21:01
あ、時差‥‥


「パオバブ村」にも行ってきましたよ。
あれ? ゲート前に、いない。
どこかにいるはずだけど‥‥
と、探したら、
博物館前の木陰に、
あちらの方角を向いて
小刻みに震える
まったく顔のわからない状態の女が。

これか?

‥‥日本髪っぽいので、たぶんそうですね。
しかしなぜあっちむいてるんだろう。

まぁいいや。
そうだ、コンビニ寄ろう!
なんか、いいもの売ってるかもしれない。

‥‥あ。

そうだ、この村、時差があるんだった!
(時計をごらんください)
がびーん。

そうすると、夜遅くに家に帰ってから
朝、家を出るまで、たぬきちの店は開いてるもん。
なるほどね。
でも、時差をつけ始めると僕の性分だと
日にちまでドンドン動かして
1年分の魚とか1年分の虫を
捕りたくなっちゃうかもしれないんだよね。
武井さんの場合、それはありますね。
でも、それは遊びとしてもったいない。
あのしっかりと流れる時間の中で遊びたいんだよね。
なるほど。
僕の場合、ちょっといじったときがあって。
うんうん。
カブ価を調べようと思って時間を戻したんですが、
そうしたらカブがすべて‥‥。
一同 あちゃー。
だから、時間をいじるのはちょっと
トラウマになっちゃったんです。
これ以上いじるのはやめようと思いましたね。
私も怖いからカブを買ったら
絶対にいじらないようにしてるよ。
やっぱり時間をいじってできることに
きりがないからね。
でも、僕、いま買ってるカブを売り忘れても
あんまり後悔しないかも。
そうそう。
私も大量に腐らせたことがあるんだけど、
それをやっちゃうと、カブに関して失敗しても
「ま、そういうときもあるよね」
っていう寛大な気持ちになりますよね。
それはイヤだなぁ。
やっぱりカブって人を狂わせるような何かがあるよね。
うん、あるある。






01/15 11:57
523ベル!

朝会社にきたら、
さんが、
なにやらを話している。

なになになになに?

「うちの村でカブ価が
     523ベルなの!」

えー、なんの話かといえば、
「どうぶつの森」の話です。
どうぶつの森には、
「カブ」というものが売られていて、
その値段は日によって違うのです。
安値でかって高値でうれば、
森のなかで大金持ちです。

さっそく が、
確認をします。

「ぎゃああああ!
     こ、これは!
     これは!」

どうやら、
は昼休みに
自宅に帰って、
カブを売ってくるようです。

たとえば残業して遅くに帰ったとしても
顔も洗わずにWiiの電源を入れちゃうわけですよ。
カブ価をチェックしたいがために?
そう。
で、いっぺんプレイを始めちゃうとずっとやるから
このコンテンツの連載があった2ヶ月間、
1冊も本を読んでないことに気づいちゃった。
余暇として使う時間を
『どうぶつの森』に注いだわけですね。
もう、ほんと恐ろしいゲーム(笑)。
(つづきます)
2009-04-16-THU
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