『ファイアーエムブレム』を噛み砕け!

 
シミュレーションRPGの王道として、
高い信頼と確固たる認知を受けている
『ファイアーエムブレム』シリーズ。

しかし、このシリーズを愛するがゆえ、
「このままでいいのか!」と立ち上がった
開発者の方がいました。



シリーズ最新作、『ファイアーエムブレム 烈火の剣』
プロデューサーの山上仁志さんは、
強い決意をもって、このゲームの開発に臨みました。

冷静で、情熱的な、山上さんに
『ファイアーエムブレム 烈火の剣』について
うかがっていきます。

山上仁志
(やまがみ・ひとし)
任天堂 開発第一部係長

── 今回、山上さんは
『ファイアーエムブレム 烈火の剣』の
プロデューサーとして、
「初めての方に、いかにこのゲームを噛み砕くか」
ということに取り組まれたそうですが。
山上 そうです。ちょっと話はさかのぼりますけど、
『ファイアーエムブレム』って、
ちょうど僕が入社したころの1993年に
1作目がファミコンで出たんですよ。
── もう、10年前ですね。
山上 ええ。僕はその開発の末期に参加したんですが、
新たに始める人にはちょっと難しいな、と
感じたんです。
当時、僕がゲームにつまると、
『ファイアーエムブレム』に詳しい先輩が
「そこはこうしろ」、「ここはああしろ」って
教えてくれたんです。それで、最後まで行けた。
つまり、横で教えてくれる人がいたからこそ
ゲームをクリアーすることができたけど、
「この先輩がいなかったら、
俺にはこのゲームはできない」と感じたんです。
── つまり、「ゲームとして問題がある」というふうに
感じたわけですか。
山上 問題があるとまでは言いませんけど、
「これでいいのかな?」と思ってたんです。
だけど、70万本とか売れるじゃないですか。
だから、まあ、これはこれでいいのかなと
当時は思ってたんですよ。
── なるほど。
山上 これまでのシリーズをとても大切にしていただいて
新作を待っていただいているファンのみなさんには
このシリーズをどんどん磨き上げれば
喜んでもらえると思います。
でも、もっともっと多くの人に
このゲームの面白さを
分かってもらおうと思ったとき、このままだと
自分が始めた時と同じようなことを
感じさせてしまうだろう、と。
「これではあかん」ということで、
このプロジェクトに
関わらせてもらうようになったんです。
── つまり、「てこ入れ」というわけですか。
山上 そうです。で、僕の目的はシンプルです。
もう一度『ファイアーエムブレム』を
任天堂の主力商品として、返り咲かせたいと。
── なるほど。
山上 具体的に何をしたかというと、
まず、ゲームの入口で、
システムをきちんと説明しようということです。
『ファイアーエムブレム』は、
すごくおもしろいゲームなんですけど、
難しいというイメージがあって、
敬遠されてしまう傾向があるんです。
であれば、誰にでもわかるようにしよう、と。
それが、今回のテーマになってるわけなんです。
── それは、入り口の難しさっていうことですよね。
ゲームそのものの深さとか、
頭を使う醍醐味の部分ではなくて。
山上 もちろん、そうです。
おもしろさの本質はまったく変えていません。
「そこへ到達するまでの時間を短くしてあげる」
ということが今回のテーマなんです。
要するに、買った瞬間から、おもしろくしたい。
だから、おもしろさの本質や、
最後の達成感は、一切変えていないんです。
── うんうん。
山上 でも、入り口だけが、
いつもと大きく違うゲームになってる。
それが今回の『ファイアーエムブレム』の特徴です。
間口を広くして、どんなユーザーさんであろうと、
黙って買ってもらったら楽しめます、
という作りにしてあるんです。
── 具体的には、どうなっているんですか。
山上 簡単にいうと、
「段階を経て、プレイヤーに上達してもらう」
という作りになっています。
たとえば、まず、剣の説明をします。
それがわかったら、剣だけを使って、
ある町を攻略する。その段階で、
剣は何に強くて、何に弱いんだということを
しっかり説明する。それができたら、
今度は弓が登場する、という感じです。

── なるほどなるほど。
山上 ですから、今回の『烈火の剣』は、
始まった瞬間、ひとりしかいないんですよ。
── ああ〜、そこまで徹底してるんですね。
山上 昔は、最初のマップでいきなり、
敵味方合わせて10人とかいたりしたでしょう?
── そうですね。盗賊や海賊が、
わらわらっと町を襲ったりして。
山上 ええ。いきなりいろんな武器を持った敵がいて。
そんなの覚えられないですよ。
── ユーザーが『エムブレム』ファンであれば、
まったく問題ないんですよね。
とくに『エムブレム』って、
ファンが待ち望んでいたりしますから。
山上 ええ。
── でも、考えてみると、
ゲームの入口で段階を踏んで、
おもしろさを少しずつ説明して、
ユーザーを導いていくというのは、
任天堂のもっとも得意とする部分なんですよね。
たしかに、過去の『エムブレム』には
そういった部分が薄かったかもしれない。
山上 そうです。いきなりなんですね。
で、我々も、その「いきなりさ」には
気づいてたんだけれども、同時に、
「それが『ファイアーエムブレム』だ!」
っていうふうにも思ってたので、そこを崩すと
『ファイアーエムブレム』じゃなくなるっていう
恐怖感があったと思うんですよね。
── なるほどなるほど。
作り手も受け手も、あのゲームにいつのまにか
様式美みたいなものを
感じ取っていたのかもしれないですね。
だからこそ、古いファンはより深く熱狂し、
新しいファンがなかなかつかなくなるという。
山上 まさにそうです。ただ、私は、
入口の「いきなりさ」を排除することが、
ゲームの本質を崩すとは思えないんです。
ゲームの最終的なおもしろさが
過去のシリーズと比べて
なんら遜色がないものに仕上がっていれば、
入口を変えてしまっても
ゲームそのものの魅力は変わらないと。
だからこれをやって大丈夫なんだっていうことを、
ずっとチームのみんなに説明してまわったんです。
── 入口の誘導をきちんとやろう、と。
山上 はい。ですから、今回の『烈火の剣』には
チュートリアルっていうものが存在しません。
序盤のゲームそのものが、
チュートリアルを兼ねてるんです。
最初のうちは、『ファイアーエムブレム』特有の
ひりひりするような駆け引きは
あまり感じられないかもしれませんが、
『ファイアーエムブレム』には
魅力的なストーリーがありますので、
「先を知りたい」っていう衝動に引っ張られて
どんどんどんどん攻略していきたくなると思います。
その結果、気がついたときには
従来の『エムブレム』ファンに近いレベルの
プレーヤーになっていて、そこからは、
『エムブレム』の楽しさを十分に
楽しむことができるようになっています。
── なるほど。じつに明快なコンセプトですね。
山上 はい。やはり、買ってもらった方全員にね、
最後まで遊んでほしいんです。
これは個人的な意見になりますが、
僕は、4800円を払って買ったゲームがあって、
そのゲームが難しくて半分までしか遊べなかったら、
「2400円ぶんを返せ!」と言いたい。

── うわあ(笑)。
山上 ですから、ゲームの全体的な難度も、
少しだけ抑えめにしてあります。
やはり、そのゲームを最後まで遊ぶという気持ちを
ユーザーのみなさんに感じていただきたいんです。
やたらと難しいことに挑戦させるのではなく、
ストーリーを含めて
ゲーム全体を楽しんでほしいと考えて作っています。
── 「手強ければ手強いほどいい!」という、
シリーズの濃いファンもいると思いますが。
山上 そういう人のために、
ハードモードを用意しました。
基本的なストーリーなどは同じですが、
「こんなのどうやってクリアするの?」っていう、
難度の高いモードになっていますので、
従来の非常にシビアな『エムブレム』が
好きなファンの方も満足してもらえると思います。
── なるほど。
山上 かなりシビアになっていると思いますよ。
というのは、より広いお客さんに向けて、
ノーマルモードの難度を低くしたぶん、
ハードモードは迷いなく
難度を上げることができたんです。

(続きます!)
2003-04-28-MON