フレッシュな若手乗組員たちが
『岩田さん』を読んでみた。
(軽く落ち込んだりもした)【後編】
2019-10-11

任天堂の元社長、
岩田聡さんのことばをまとめた『岩田さん』を、
比較的社歴の浅い若手乗組員たちが読んで、
あれこれ感想を言い合ってみましたよ。
参加したのはこの5人です。
ふみ:
UXエンジニア。
社歴3ヶ月。27歳。
最近、アイスランドに興味がある
ひな:
「CACUMA」などの商品開発担当。
社歴4年。26歳。
アンミカのモノマネを練習中。
まりさ:
商品やページのデザイン担当。
社歴2年。28歳。
おみやげなどの包装を集めてしまうらしい。
なお:
ほぼ日の受付担当。
社歴6ヶ月。31歳。
休日は映画三昧とか。
アリサ:
管理部所属、いろいろ担当。
社歴3ヶ月。23歳。
この会の言い出しっぺ 。
【後編】
「努力することが
おもしろく感じられた」
っていうところが、
すごくうれしかった。
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もうひとつ、『岩田さん』のなかで
印象に残ってるページを挙げてもいいですか?
このことばもいいんですよー。
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ほんとに折りまくりですね、ページ(笑)。
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だから付箋がなかったんだって。
ほら、この、ボトルネックの話。
「もっとプログラムを速くしてください」
というときには、
ボトルネックになっている部分がかならずあって、
それが全体を遅くしているんですね。
プログラムの世界では、よく、
「全体のなかの1%の部分が、
全体の処理時間の七割から八割を消費している」
などといわれるぐらい、そこばかり
何回も処理しているということがあり得ます。
ですから、そのボトルネックになっているところを
直さないかぎりは、そうじゃないところを
いくら直しても意味がないんですね。
ところが、人は、とにかく
手を動かしていたほうが安心するので、
ボトルネックの部分を見つける前に、
目の前のことに取り組んで汗をかいてしまいがちです。
──『岩田さん』P.48より
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わかる‥‥。
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そうなんですよ‥‥。
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また落ち込んでる(笑)。
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やっちゃいますよねぇ‥‥。
とくに仕事をはじめたばかりの頃って、
不安になってとりあえず
手を動かしちゃったりするんですよね。
デザインだと、とくにそうで、
やろうと思えばいくらでも手を動かせちゃうので、
もう、何パターンもつくっちゃったり。
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あー、なるほど。
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でも、そういうことをしてても意味がなくて。
本当は、なにがボトルネックなのか、
それを見つけるのに時間をかけるべきで。
で、それが見つかっちゃうと、
本当にひゅっと終わることがある、仕事って。
細かいことを直していても、
全体はずっと変わらない。
時間だけが経っていって、なにも変わらない、
というのが一番最悪だと思うんですけど、
あの、なんか、わたし、しゃべりすぎじゃない?
一同
(笑)
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そんなことないですよ(笑)。
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みんなの印象に残ってるところも聞きたいです。
みんながページを折ったのはどこ?
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いや、誰も折ってないから。
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こころのページですよ、折るのは。
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意味わかんない。
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わたしは、「ばかもん!」の
ところがすごく胸に来て。
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ああ、わたしも。
新人って、どういうわけか、
明らかに説教しやすい人と、
しにくい人がいるんですよ。
安心して「バカもん!」と言える人と、
腫れ物に触るように叱らないといけない人がいるんです。
これって、じつはものすごい差なんです。
こちらから与えられる量も、
その人が吸収できる量も、
ものすごく変わってくる。
「バカもん!」と言われやすい人は、
ものすごくたくさんのことを短期間に学べるんです。
──『岩田さん』P.56より
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岩田さんのおっしゃること、
すごくわかる気がして、
できることならわたしも
「バカもん!」と
安心して言われるひとでありたい‥‥
でも、それってどうやるの! って(笑)。
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わたしも、そこ、ちょっとつらかった。
自分はどうだろう、って。
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この本、そういうところがありますよね。
すごい、そのとおりだ、って思いながら、
「自分はどうだろう?」って。
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そう、読み進めながら、
反省タイム挟んじゃいますよね(笑)。
ここからどうしていこうかな、
というシンキングタイムがはじまる。
読みやすくて、わかりやすいんですけど、
激しく刺さってしまうような。
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読みながら、手が止まる感じ。
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そうそう、全体的に、読みながら、
すごく振り返っちゃう。反省しちゃう。
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でも、安心するのは、岩田さんって、
なんか「人に期待しすぎない感じ」があるんですよ。
自分はこうしてます、というだけで、
他人に同じことは求めてない。
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そう、そう。
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自分ができてるのにそれを他人に求めないって、
ほんとうにすごいなと思うんです。
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あと、岩田さんの口調って、
「○○しなさい」っていうことがまったくなくて。
淡々と、私はこうしていました、という話し方で。
だからこそ勝手に反省しちゃうんですね、きっと。
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あー、そうですね、それ不思議ですね!
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さらっと大事なことだけをおっしゃってる。
で、うまくいかないことに対しても、
「どうしてできないの?」っていうんじゃなくて、
そういうものですよね、って感じで。
たとえば、ほら、ここ。
わたしは思うんですけど、
考えてもしょうがないことに
悩むんですよ、人って。
悩んで解決するなら
悩めばいいんですけど、
悩んでも解決しないし、
悩んでも得るものがないものを、
人間って、考えてしまうんですよね。
──『岩田さん』P.95より
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すごい。
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やさしい。
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神様ですか、っていう(笑)。
一同
(笑)
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就活生のときに読んでいたら、
こういうトップがいるところにいきたい、
と思ったかもしれない。
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あーー。
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そういう意味では、ここも印象深かったです。
わたしは
「人は全員違う。そしてどんどん変わる」
と思っています。
もちろん、変わらない人もたくさんいます。
でも、人が変わっていくんだということを
理解しないリーダーの下では、
わたしは働きたくないと思ったんです。
自分が変わったら、それをちゃんと
わかってくれるボスの下で働きたい。
だから、自分も社員のことをいつもわかっていたい。
──『岩田さん』P.28より
一同
はーーー。
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なんか、ただただすごい、
みたいな気持ちになっちゃうけど、
岩田さんの言うことって、
こういう大きなことばがあるかと思うと、
すごく具体的だったりもしますよね。
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そうなんですよ。
たとえばここなんかは、ものすごく現実的。
大革命をするから、5年待ってください。
その間は利益は出ませんと言ったら、
社長はクビになるんですよ。
だから、毎年、一定水準の利益を出しながら、
でも、変えていかなきゃいけない。
いってしまえば、飛びながら
飛行機を修理するみたいなところがあって。
──『岩田さん』P.38より
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うわぁ、リアル!
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「飛びながら修理する」‥‥。
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わたしは、何かあったときに、
「止まって修理に没頭する」タイプなんですよ。
でも、そのあいだも、ずっと機体は動いていて、
そこに自分は乗ってるんだっていうことを
ついつい忘れてしまったりする。
だから、この「飛びながら修理する」という
イメージはずっと持っておきたいなと思いました。
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わたしも最後にひとつ挙げます。
さっき言ったように、わたしはこの本を読みながら、
「自分はどうだろう?」って
落ち込んでしまうところもあったので、
本の最後の章に書いてあった
このことばを読んで、すごくほっとしたんです。
それは、歯を食いしばって
ものすごく努力するようなことではありません。
ちょっとずつ努力をして、それに対して、
「あ、ちょっとわかったな、おもしろいな」という、
自分の変化の兆しみたいなものを
ご褒美として感じ取ることができたら、
わたしはそれを続けることができるんです。
ひとつひとつはとっても小さいんだけれども、
わかったり、つながったりすることで
努力することがおもしろく感じられて、
その連続で身についていくような感じなんです。
──『岩田さん』P.211より
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「わたしは努力しました」っていうんじゃなくて、
「努力することがおもしろく感じられた」
っていうところが、すごくうれしかったです。
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そうなんです。成功した人って、
血の滲む努力をしましたとか、
毎日朝まで働いてとか、
そういう話が多い気がするんですけど、
そういう話じゃなくて、
少しずつでいいんだよって
書いてあるように受け取ったので、
すごく前向きな気持ちになれました。
さて、そろそろ終わりにしようと思いますが、
最後にみなさんに質問です。
この本は、どういう本だと感じましたか?
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たぶん、本屋さんに行くと、『岩田さん』は
ビジネス書の棚にあると思うんです。
わたし、ビジネス書はけっこう読むんですけど、
けどそれと同じテンションでこの本を読むと、
ちょっと違和感があると思うんです。
たしかにこの本はビジネスに役立つことが
たくさん書いてあるんですけど、
ふつうのビジネス書とは違う。
ことば選びなんかは小説とか
物語っぽいと感じるところもあります。
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物語っていうのはわかります。
なんか、岩田さんがここにいて、
語りかける感じに書かれていますよね。
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人にすすめるとき、なんて言えばいんでしょうね。
岩田さんの人生論なのかな。
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一種の自己啓発ともいえるのかな。
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いろんな読み方ができるから、
ひと言では言い表しづらい、
でも、それがこの本のよさでもある。
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仕事の役に立つのは間違いないですけど、
それだけじゃないですよね。
「おもしろく仕事をしたい」
っていう人にいいのかな。
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人生のヒントがたくさんつまっている気がします。
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自分で環境を変えられる、
変えたいと思う人は、
読んですごく前向きになれるかもしれない
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必要とされる人になるには、みたいな感じかな。
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わかりました。
どうもありがとうございました。
一同
ありがとうございました!
( お し ま い )
『岩田さん』(ほぼ日ブックス)はこちら。


