ワタリウム美術館で
齋藤陽道さんの写真展「宝箱」が
開催されていますよ。

こんにちは、「ほぼ日」の奥野です。

写真家・齋藤陽道さんの写真展が
ご近所のワタリウム美術館で開催中というので
よく晴れた日の午前中に
ちらっと、のぞきに行ってきました。

それが、とても雰囲気のいい空間だったので
レポート記事を書きますね。



ではまず、
ご存知のかたも多いと思いますが、あらためて。

齋藤陽道(さいとう・はるみち)さんとは、
今年30歳になる写真家で、
いつも大きなリュックを背負っていて、
青年らしく痩せていて、
うまれつき耳が聞こえなくて、
ひろびろとした、気持ちのいい写真を撮る人で、
それら気持ちのいい写真は
ペンタックスの67というカメラで撮っていて、
おいしいものを食べると
ものすごくナイスなリアクションをする人です。

(最近ですと、仙台で牛タン定食を食べたときとか
 糸井重里の作ったカレーを食べたときなどに
 たいへんナイスなリアクションをいただきました)

以前に「接点、仲介する者。」というコンテンツに
ご登場いただいたので、
写真集『感動』を持ってまーすって人も、いますよね。

そんな齋藤さんですが
今回の「宝箱」くらい大きな規模の展覧会は
はじめての経験だそう。

数週間ほど前から、
そうとう気合の入った感じで準備していたので
どんななってるんだろうと訪問すると、
2階・3階・4階のスペースをすべて使って、
齋藤さんの作品が
それこそ宝箱の中みたいに、ぎっしりと。



これは、見応えがありました。

処女作『感動』からの作品をはじめ、
敢えて、燃える太陽の光をフレームに入れて
人物(ゾウ含む)を撮る「絶対」シリーズ、
土手の下から
青い空と散歩する人たち(ヤギ含む)を
仰ぎ見るように撮った「ソラポ」シリーズなど、
現在の齋藤さんの作品を見渡すことのできる、
たっぷりとした展示構成です。

個人的に、とくに印象に残ったのは3階の展示。
テーマは「無音楽団」でした。

上記の「接点、仲介する者。」のときに
いっしょに沖縄まで撮りに行った
台湾のアーティスト・スミンの写真もありました。

3月の沖縄は思いのほか蒸し暑くて
まだ冬の格好で行った僕らは
汗ダラダラになったことを思い出したりしました。





2013年6月に
青山ゼロセンターで開催されていた展覧会、
「せかいさがし」からも。



また、最上階・4階奥のちいさなスペースでは
齋藤さんの展覧会ではおなじみのスライドショーも
上映されていました。



これ、無音のスライドショーなんですけど、
何とも言えない「おもしろさ」があるんです。
作品のランダムな連続のなかに、
なんか「つながり」が見えることがあったり。

ぜひ、のんびり観てみてください。



ともあれ、これだけたくさんの齋藤さんの作品を
いっぺんに見たのは、はじめてでした。

遠めから撮っているのに、なんとなく近い?
そこに写っている「人間」や「動物」や「もの」に
齋藤さんの「気持ち」が
レンズの先から
ぐぐーっとのびて、とどいているような感じ‥‥。

専門家じゃないのですみません、つたないのですが、
なんだかそういうことを思いました。

ひととおり展示を見て回ったあとに
齋藤さんと、ひさびさに、筆談で話しました。


齋藤さんの作品を凹凸で表現し、指先で感じる「写点真」という展示も。

なぜ「宝箱」という名前をつけたんですか?

「なぜでしょう‥‥。なんでだろ‥‥。
 宝箱というのは、
 もう、ギリギリになって浮かんだんです。
 今回は、
 いろんなシリーズをいっぺんに出しました。
 それらすべてを
 ひっくるめることば‥‥と考えていて
 急にポロッと、生まれたんです。
 だから、まだよくわかっていないんです」

「感動、という写真集のタイトルも
 刊行から2年目の今、ようやく見えてきたくらいで。
 ことばは、いつも、あとからついてくるんです」



ことば、といえば、
展示会場のいろんなところに
齋藤さんの「ことば」が、ありますよね。
いつも、なんですけど
齋藤さんの「ことば」には「わあ」と思わされます。
文章を書くのは得意ですか? あるいは好き?

「ゲッソリします‥‥。
 今回の文章も、
 展示に使う写真とそのレイアウトが
 決まってから考えて、
 写真に助けてもらいながら、つくりました。
 好きでもないし、
 得意だとも思っていないんですけど
 写真があると、
 どうにかことばが出てくるんです」



齋藤さんの写真を見ていると
齋藤さんって、
地球とか人間とか生命とかに対して、
つねに「不思議だー!」って
思っているんじゃないのかなあって、
感じるのですが。

「うーん、ぼく自身は、
 いつもつまんない、つまんない‥‥と
 思ってるんです。
 けど、写真を見ると
 ぜんぜんつまんなくないどころか
 おもしろい‥‥から、
 そこが、ふしぎではあります。
 写真に教わってます」

「世界をちっともふしぎに思えない
 不感症な自分がいて、
 それはもうホントに何も感じないほど冷たくて、
 でも、そんな自分でも
 ハッとするものが、どうやらあるらしい。
 何だこれは? 何だそれは?
 見たいぞ、見たいぞと
 ぼく自身がいちばん世界を信じたくて‥‥
 撮ってます」



どういう写真展になったと思いますか?

「カラフルな多様性、
 かねてから見たいと願っている
 『あらゆる存在がたいらに立っている世界』に
 すこし近づけたように思っています」

「そこは、いろんな存在が、
 ことばもなく、となりあっている世界。
 今回展示ができあがってみて、
 もっともっといろんな存在に出会わなくちゃなと
 改めて決意しました」



最後に、青いイルカくんの名前を教えてください。

「ゼロルカさん、です」

ゼロルカさん。

「青山ゼロセンターで展示をやったときに
 入り口にくくりつけて
 目印として活躍してくれたんです。
 だから、ゼロルカさん。
 1代目は、空高く飛んでいきました。
 2代目は、引退して
 ぼくのうちで隠居しています。
 だからこの人‥‥
 このかたは、3代目ゼロルカさんです」


齋藤さんと、3代目ゼロルカさん。ごらんのように、なかよしどうし。

【齋藤陽道写真展「宝箱」】



会 場 ワタリウム美術館
住 所 東京都渋谷区神宮前3-7-6
会 期 2013年11月30日(土)~2014年3月16日(日)
休 館 月曜日(但し12/30と1/13は開館)12/31~1/3は休館
時 間 11時~19時(毎週水曜日は21時まで)
入場料 大人1000円/学生(25歳以下)800円
    小中学生500円/70歳以上の方700円
    ペア券:大人2人1600円/学生2人1200円
    身体障害者手帳、療育手帳、
    精神障害者保健福祉手帳をお持ちの方
    ご本人500円/小中学生300円/
    介助者(1名まで)800円

※おもしろそうなイベントやワークショップも、
 いろいろ予定されているみたいです。
 詳しくは、
 ワタリウム美術館のホームページで。
※写真は会場で販売中の「公式カタログ」です。3150円(税込)。

2013-12-27-FRI