第1回おもしろいチームをつくらなきゃ。
糸井 中畑さんが今回新しく結んだ契約って、
1年じゃないですよね?
中畑 1年ですよ。
糸井 あ、じゃあ、最初の2年契約のあと、
1年契約。
中畑 そうです。最初2年契約で、
約束した3位内に入れず、
区切りの2年目が終わったときに、
責任をとる覚悟だったんだけど、
「もう1年やってくれ」ということで。
糸井 その、自分が監督として1年しかできない
っていう契約を結んでいるとき、
翌年のことは考えないようにしてるんですか。
中畑 うーん、考えようがないですね。
だから、その1年をどういうふうにやるか。
糸井 そうか、そうか。
中畑 どういう人事をして、
どういう自分があればいいのか、
ということを考えるだけです。
糸井 つまり、さっきおっしゃったように、
いまはまだ優勝争いする実力がないと思ったら、
たとえ今年1年ですぐに結果は出ないとしても、
チームの土台をつくるっていうところに、
本気で取り組んでいく。
中畑 そうですよ。
糸井 そうか、そうか、なるほど。
中畑 でも、先のこととか、
2年目3年目をこういうふうに考えていこう
って思ってはいても、要求されるのは
その年の結果だったりするからね。
その意味では一発勝負ですよ。
つねに一発勝負の環境づくりをして、
足りない部分が見えてきたら積み重ねていく。
実際、足りない部分がはっきりわかるから、
正直な部分でいえば、「優勝」っていう言葉を
簡単に使えなかったりするわけですよ。
糸井 ああ、そうか。
足りないとこはどうしても足りないって
監督はわかってますもんね。
中畑 冷めてるわけじゃなくて、
そこはきちんとわかってないと。
だから、「必ず優勝します!」って
なんにも考えずに言えるほど
バカじゃないよ、俺は。
だから、「てっぺん目指します!」とかね、
いろんな言葉を使って、ぼやかしてみたり。
糸井 おもしろく表現してる(笑)。
中畑 そうそうそう。
まあ、そういうふうに、ウソじゃないけど、
演出はしてますよ、自分なりにはね。
糸井 そのあたりは選手も、だんだん理解してますよね。
中畑 ええ、理解してくれるようになりましたよ。
それまでは、やっぱり、
「ジャイアンツからきたお調子者」
みたいな感じで見てた人が
ファンも含めて多かっただろうし。
だいたいぼくはなにをするにせよ、
「あいつは本気じゃない」っていうふうに
見られやすいタイプなんですよ。
糸井 ああ、ちょっとわかるかも(笑)。
中畑 でも、ぼくはもう、ここで
骨を埋めるぐらいの気持ちでいます。
このチームにチャンスもらって、
自分の集大成を出してみたい、
ここで結果出さなきゃいけない、という、
いい意味での使命感に満ちてます。
だから、ジャイアンツのジの字もないよ、いま。
糸井 それはあの「怖い顔」を見てたらわかります。
中畑 ジャイアンツには恩もあるし、
あそこで育った人間だから、
絶対に消えないものなんだけど、
それを引きずることは、一切ないです。
糸井 出身学校みたいなものなんだね、きっと。
中畑 ああー、そうですね。
たまたま、そこ出身だったっていう。
出身校は大事にしますけど、
大切なのは、いまだから。
糸井 中畑さんは、実際の出身校である
駒大のことも大事にしてますよね。
中畑 はい。駒大もジャイアンツも、
心の中では、すごく大事です。
糸井 尊敬の気持ちがありますよね。
駒大の太田監督
(※太田誠監督。駒澤大学野球部監督を長く務め、
 中畑さんをはじめとして
 多くの名選手をプロ野球に輩出)
の話も
中畑さんから何度か聞いたことがありますけど、
やっぱり、すごい人なんでしょう?
中畑 はい。怖かったですよ。
糸井 怖いんですか(笑)。
中畑 いまでも怖いですよ。
でも、すばらしい人ですね。
糸井 ああー。
中畑 やっぱり、大学の監督って、
何百人っていう子どもたちを預かって、
成長させて、世に送り出すわけじゃないですか。
糸井 うん、うん。
中畑 それって、もう、「親」ですよ。
親としての責任を全うしていくというか。
だから、責任感も必要だし、
なにより、人としての魅力がなかったら、
子どもたちを導いていけませんよね。
糸井 そうですね。
中畑 だから、野球というスポーツは、
人づくりの媒体だと思うんですよ。
糸井 それは、自分がそうやって
野球に育てられてきたから思えるんですね。
中畑 そうなんです。
それはぼく、本気で思ってますね。
野球というのは、人づくりという面で
最適なスポーツだと思います。
糸井 たしかに、人によって役割がそれぞれあって、
チームワークも必要で。
中畑 はい。いろんな要素があるんです。
シンプルに見えるけども、
中身の濃い、奥深いスポーツだと思いますね。
(つづきます)
2013-12-25-WED