椅子を買いに。

「今日は椅子を買いに行こう」
小学校に上がったばかりのある日、
父がこんなことを言いました。

それまで座っていた子どもの椅子は、
もう卒業と思ったのでしょうか、
私専用の椅子を買ってもらった時は、
少しだけ大人の仲間入りをしたようで、
それはそれはうれしかった。

家族5人おそろいのその椅子は、
何年も経ってほとんど使わなくなってしまいましたが、
捨てるにはしのびないと思った母が、
屋根裏に移動させておいてくれたおかげで、
今では我が家に仲間入り。

木の部分はやすりをかけ、
オイルをしみこませ、
背もたれと座面は革からグレーのソファ地へと張替え。
姿は少し変わったものの、
愛着は当時のまま。
思えばこれが私の「はじめての椅子」なのでした。

ダイニング、台所の傍、リビング、
玄関、廊下のすみっこ‥‥。
今ではいったい何脚の椅子があるんだろう? 
と思うくらいたくさんなのですが、
そのひとつひとつに思い出があり、
ひとつひとつに役割がある。

椅子がある分、
風景がある。
好きな椅子とつき合ううちに、
そんなことを思うようになりました。

今週のweeksdaysは、
とっておきの椅子を紹介します。
ひとつだけしかない、
あなただけの椅子に出会えますように。

伊藤まさこ

2020-02-07-FRI