ひさしぶりにSTAMP AND DIARYの吉川さんと
代官山のオフィスでおしゃべりをしました。
テーマは、この冬、「weeksdays」で展開する
ウルトラファイン・メリノウールとカシミアをブレンドした
明るい3色のニットについて。
旅と日常を往き来するように、というブランド哲学は、
主宰の吉川さんの永遠の憧れであり、
伊藤さんもふかく納得するところ。
二人の会話は、ちょっとした仕事論、人生観へと展開。
全3回、どうぞおたのしみくださいね。

吉川修一さんのプロフィール

吉川修一 よしかわ・しゅういち

株式会社STAMPS代表。
1965年東京生まれ。茨城育ち。
大学卒業後、数社のアパレル企業で営業、
マーケティングと店舗開発に携わる。
国内外のファッションとものづくりに触れた経験から
2013年にSTAMPSを設立。
「STAMP AND DIARY(スタンプアンドダイアリー)」や
「utilité(ユティリテ)」などの
オリジナルブランドの制作のディレクションから
フランスのバッグ「TAMPICO(タンピコ)」や
英国の「OWEN BARRY(オーエンバリー)」、
「Wallace#Sewell(ウォレス アンド スウェル)」など
インポートブランドのセレクトまで手掛ける。
最近ではアパレルにかぎらず、
日々を豊かにする「もの」全般を取り扱っている。
「weeksdays」では「あのひととコンバース。」に登場。

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吉川さん、最近、いかがですか?

伊藤
吉川さん、こんにちは。
きょうは、取材がてら、
吉川さんの近況もおききしたくて
お伺いしました。
どうぞ、よろしくおねがいします。
吉川
こちらこそよろしくおねがいします。
そういえば最近は、ゆっくりおしゃべりする時間が
あまりありませんでしたね。
伊藤
そうですよね! 
吉川さん、なにか暮らしの変化や、
お気持ちの変化など、なにかありましたか。
吉川
そうですね‥‥、今は、物欲が少し薄くなったかな。
たとえば、仕事では服づくりに一所懸命でも、
じぶんの服はあまり買わなくなってきちゃった。
伊藤
そうなんですか。
吉川
といっても、以前ほどは、です。
買うにしても量を買わないというか。
ずっと好きな北欧やフランスのヴィンテージ家具も同じ。
長いこと夢中になって調べたり揃えたりしたから、
だいたい、ほしいもので買えるものは手元にあって、
手に入らないまでも「もうじゅうぶん知ってる」という
状態になったんでしょうね。
そんなに「ほしい!」ということがなくなって。
伊藤
ちょっと落ち着いた、
という感じなのかもしれないですね。
吉川
はい、そうとう落ち着きましたね。
逆に言うと、刺激を感じることがなくなったのかな? と、
危機感を感じてもいるんです。
来年62歳になるんですけど、
会社(STAMPS)も10年、15期目を迎えて、
子どもたちも全部かたづいちゃった。
旅も、これまで、仕事を兼ねて、
どうにかして海外に行きたい気持ちが
すごく強い人間だったんですけど、
いまは義務感で行くみたいになってるんですよ。
だから、自分でちゃんと探さないと、
興奮したり感動したりっていうのが薄れてきちゃう、って。
伊藤
そうなんですね。それで、
自分で探してみたことは、何か、あるんですか。
吉川
最近ね、海外の不動産サイトを見てるんですよ。
伊藤
あら! なるほど。
吉川さんも私も、古い建築物が好きで、
国内でも「こんな集合住宅がありますよ!」なんて、
よく、情報交換をしていましたね。
いま、海外にまで興味が?
吉川
もう、探して、見て、分析して、なんてやってたら、
国内の物件はほとんど見尽くしちゃって。
あんまり感動しなくなっちゃったなあ、というある日、
SNSでフランスの不動産サイトが流れてきたんです。
それを「何これ?! かっこいい!」って。
サイトによっては、建築様式や年代で
テーマ別になってて、
モダニズムにフォーカスした物件とか、見つかるんです。
それで「フランスにあるなら、
他の国にもあるんじゃないかな」と、
ChatGPTに訊いてみたら、
バーッて各国のかっこいい物件を扱っている
サイトのURLが出てきて。
これはダメでしょ~~~っ! って、
それからずーっと見てるんですよ。
伊藤
あはは。ダメって、
嬉しいほうの「ダメ」ですよね。
吉川
はい、すごく嬉しい「ダメ」です。
夢ですから、あくまでも。だから楽しい。
伊藤
あら、本気じゃないんですか。
吉川
えーっと‥‥、あくまでも夢ではありますけど、
将来的にEUの圏内に
拠点ができたらいいなって思ってます。
伊藤
わぁ。
吉川
パリの展示会に行きがてら、
ヘルシンキやロンドンなど
取引先を回ることが増えたので、
ひと部屋、自分たちの居場所があったらなぁ、って。
伊藤
素敵ですよ。そんなふうに吉川さんがのびのびと
次のことを考えられるということは、
10年、ブランドを続けてこられて、
スタッフのみなさんに安心して任せられている、
ということでもありますよね。
吉川
そうですね。ありがたいことです。
リモートワークも一般的になって、
ぼくも毎日出社しなくても大丈夫になって。
もちろん商談には出ますけれど。
伊藤
普段はおうちにいらっしゃるんですか。
吉川
そうですね。都内の家にいたり、
箱根(会社所有の部屋)に行ったり。
徐々に「自分がいつも会社にいなくても、
ぼくも、スタッフも仕事ができる」という
環境の準備をしているという感じです。
伊藤
(人生の)第二ステージみたいな感じなんじゃないですか。
吉川
そうですね。ステージって言うと
ちょっと大げさかなあと思うんですけど、
自分に刺激を与える夢を持ってもいい、
ということに現実味が出て来ました。
「もしかしたら?」みたいな気持ち。
現実的に、EUに拠点があると
どんなメリットがあるのかということも
しっかり考えているんですよ。
とはいえ僕は日本食が好きなので、
完全な移住っていうのは難しいのかなと思っていて、
行ったり来たりっていうのが
性に合っているんじゃないかなあと思って。
伊藤
もしEUに拠点を持つなら、どこに?
吉川
やっぱりパリなのかな。
でも中心地にいる必要はないと思うんです。
パリの街から1時間圏内はどうかな、とか。
伊藤
お仕事の拠点ということは、
おひとりで行かれる前提で? 
吉川
ひとりですね。
ぼく、ひとりでも時間、全然、過ごせるんです。
箱根もひとりですし、旅はだいたいひとりです。
「その年齢でひとり旅って、何やってるの?」と、
まわりは不思議がるんですけど、
ひとりっ子だからかもしれないですね、
ひとり遊びが普通というか。
退屈って何? って。
伊藤
わたしもひとりは好きだけど、
ずっとひとりでいたいわけではないんですよ。
でもうちの娘もひとりが大好きです。
ずうっとひとりでいられるって。
たしかに娘はひとりっ子ですね。
吉川
誰にも浸食されない時間と空間が、やっぱり必要。
なので、いまは長期戦で、EUに拠点計画です。
伊藤
楽しい遊びを見つけられたようなお顔。
吉川
EUに限らず。海外の不動産って見るのも面白いですよ。
例えばこの間もタイに行って何戸か見たんですけど、
商習慣の違いなんでしょうかね、
不動産屋さんを通さなくても、
集合住宅の管理人室で
「空室があったら見たい」って言うと
案内してくれるんです。
そこはリゾート地だったので、
じっさいに暮らすイメージはわかず、
仕事が絡んでる方がいいんだなあって感じましたが、
そうやって部屋を見るのはすごく面白いです。
伊藤
仕事をするイメージ‥‥。
わたし、仕事はずっとしていよう、と思って。
ずっとしてたいですよね。
吉川
素晴らしいと思います!
伊藤
あんまり迷惑になったらやめようかなあとも思うけれど、
そうしたら迷惑にならない仕事もあるかなあと。
吉川
ファッションの業界には、ずっと仕事をなさっている
すごい先輩がたがいっぱいいらっしゃいます。
でも自分にはそんな大先輩たちのように
ずっと生み出していくことを続けるのは、
体力的にはつらいことかもしれないと感じます。
「あ、これかわいい」とか
「売れそうだ」とかっていうのは
感覚的にわかるし、鈍っていないと思いますが、
その感覚は残しておいて、
具体的なデザインの提案を若い人に託すのも
ひとつの選択肢かな、と思ったり。
よくあるのが代表をやめて、
クリエイティブディレクターとして、
ブランドの方向性を見るやりかた。
そういう人もけっこういらっしゃいますよね。
だったら自分は今の環境とは全く別のところに行って、
刺激を受けながら続けるっていうのもあるなあと。
STAMPSを立ち上げた当初は、
もうアイディアしか出て来ないみたいな時期があったから、
まさか自分にそんな変化がやってくるなんて、
驚いちゃいますけど。
伊藤
わたしはweeksdaysが再来年で10年になります。
そしてあと3年半ぐらいで60歳になるから、
なにかちょっと新しいことをしたいなあと
思っているところです。
吉川
それはそれでまた楽しみです!
(つづきます)
2026-10-26-MON