伊藤まさこさんが
友人が持っているすがたに
「おやっ?」と惹かれたというニットバッグ。
つくっているのは
「OLU PRODUCTS(オル プロダクツ)」。
作り手はディレクターの吉田けえなさんと
グラフィックデザイナーの𦚰田あすかさん、
プランナーとして自身のセレクトショップを主宰する
伊部志保さんの3人。
伊藤さんが「こんなバッグは見たことがない」という
「GLID」のデザインがどんなふうに生まれたのか、
𦚰田さんの事務所を訪れて、吉田さん、𦚰田さんの二人に
インタビューをしました。
同席してくださった「SAC’S BAR」の
川﨑優衣さんからも、
販売や製造現場のこぼれ話が聞けましたよ。
OLU PRODUCTSは、
グラフィックデザインの発想から生まれた
東京発の新しいプロダクトブランド。
“身につけられる軽やかなグラフィック”
をコンセプトに、ユニークで遊び心のあるアイテムを展開。
株式会社サックスバーホールディングスの
1ブランドとして展開している。
𦚰田あすか
わきだ・あすか
1993 年生まれ。東京藝術大学デザイン科卒業後、大学を修了し、コズフィッシュを経て独立。あらゆる文化に対してのデザインに携わりながら、豊かな生活をおくることにつとめる。
伊部志保
いべ・しほ
オンラインショップ 1BE(アイビー)主宰。
OLU PRODUCTS では
ブランドのコンセブトメイキングからネーミング開発、
コミュニケーション戦まで手がける。
吉田けえな
よしだ・けえな
国内外を飛び回り、様々な物を見、触れ、食べ、
その知見を生かして他業種のマーケティングや
アドバイザーを務める。
OLU PRODUCTSでは「このメンバーで
東京から世界へ向けた物をつくってみたい」
と言い出した張本人として、
全体調整と時々の口出しを担当。
川﨑優衣
かわさき・ゆい
株式会社サックスバーホールディングス所属。
創業から80年を超え、全国約600店舗と
直営オンラインストアを展開するファッショングッズ業界の
リーディングカンパニーのPR担当。
「バッグがコーディネートの主役になる
プロダクトをつくりたい」という
サックスバーの想いから生まれたOLU PRODUCTSでは
調整役を務める。
01出発点はグラフィック
- 伊藤
- 今回はありがとうございます。
かわいいものができてうれしいです。
- 吉田
- ありがとうございます。
私たちもテンションが上がっています。
- 伊藤
- さっそくですが、
ブランドが始まったきっかけを伺えますか。
- 吉田
- 私がサックスバーのアドバイザーを務める中で、
東京発、世界へ届けるブランドを作ろうと
スタートしたのが
「OLU PRODUCTS(オル プロダクツ)」です。
バッグの専門店「SAC’S BAR(サックスバー)」を
日本で570店舗ほど展開している会社が母体なんですが、
そこといっしょにすすめていくにあたり、
せっかくならどちらも今までやったことがないことを
試してみたいという想いから、
バッグのデザイナーさんではなく
別のジャンルの方と一緒に取り組んで、
新しいものを生みだそう、と考えました。
ちょうどその頃、
もともと友人どうしだった伊部さんと𦚰田さんが
事務所をシェアされていたんですね。
伊部さんが主宰しているセレクトショップの
グラフィックデザインを
𦚰田さんが担当されているんですが、
すごく素敵だなぁと思って見ていたので、
ぜひバッグをデザインして欲しいと思って
オファーしたのがブランドをつくるきっかけになりました。
- 伊藤
- それで3人で作ることに。
- 吉田
- はい。
𦚰田さんから「おもしろそう!」と
快いお返事をいただいたので、
立ち上げることになりました。
- 伊藤
- 𦚰田さんは、スカーフのデザインなども
されていましたよね。
- 𦚰田
- そうですね。
スカーフのブランドは学生の頃にはじめてから
ずっと続けているんですが、
平面なのでグラフィックデザインの範疇なの感覚なんです。
そんな私にとってバッグはとっても立体!
初めてのことだったので、
素材のことから教えてもらいながら進めました。
- 伊藤
- ブランド立ち上げ当初は、
素材は決まっていなかったんですか。
- 吉田
- はい(笑)。
今考えると𦚰田さんには
無謀なオーダーだったかもしれません。
でも一方で、せっかくやっていただくなら、
いちから自由に発想してもらいたいとも思っていて。
- 伊藤
- なるほど。
じゃあ、吉田さんから託されたことを、
𦚰田さんは、伊部さんといっしょに
かたちにしていったわけですね。
- 𦚰田
- はい。こちらのチームでは、
コンセプトを伊部さんが担ってくださって、
二人三脚で話し合いながら決めていきました。
このブランドの強みは
グラフィックデザイナーがつくっていることなので、
それが反映できるようなデザインがいいね
ということを初めの頃から話していて。
それから、グラフィックを軸にしたデザインを
立体のバッグにどう落とし込んでいくか、というところで、
3方向のアイディアが出てきました。
- 伊部
- 1つは牛乳パックをモチーフにした
小さい立方体みたいな形のもの。
2つめは𦚰田さんが着ていたシャツから発想を得て、
格子の線がちょうど服のアウトラインに沿っているのが
かわいかったのと、
方眼紙のようなイメージをあわせた
「GLID(グリッド)」というコンセプト。
- 吉田
- 3つめはサンドイッチみたいなバッグはつくれないか、
というので、
レタスやハムがはみ出てる感じを
フリルで表現してみようとしたものです。
- 伊藤
- わぁ、3つともまったく違う方向ですね。
- 𦚰田
- そうなんです。
それで3つのサンプル製作を
同時に進めてみたんですけど、
並べたときに圧倒的に「GLID」がかわいかったんです。
- 伊藤
- “圧倒的”だったんですね!
デザインは格子をモチーフにした、ということですが、
形はどのように考えられたんですか。
- 𦚰田
- とにかくフラットにしたかったのと、
ちょうどハンドルの間の正方形の部分から
くり抜いたような形のポーチもセットにしようと。
実際はそういうふうに作っているわけではないんですけど、一枚の紙からできたように見せたら
おもしろいなと考えました。
- 伊藤
- フラットだけど、容量が大きくて、
ものがたくさん入りますよね。
- 𦚰田
- マチをつけて使いやすいサイズにしたので、
iPadや小さめのパソコンも入るような
実用的なサイズです。
先に1つのグリッド(格子)のサイズを決めて、
それを何個積むかという考え方で
全体の大きさを決めていったんです。
- 伊藤
- おもしろい考え方ですね。
じゃあデザインと形、サイズが決まって
そこからはスムーズに?
- 伊部
- いえ、完成までには紆余曲折があって‥‥。
- 𦚰田
- そうそう。
まず、ニットという素材で
直線や正方形を作るのはすごく難しかったんです。
試作の段階では線が曲がったり伸びたりして
きれいに格子が揃わないとか、
バッグの縁の処理がうまくいかないとか‥‥。
このあたりのことは川﨑さんにずいぶん助けていただいて。
- 川﨑
- そんな(笑)。
そもそもうちの会社でニットバッグを作るのが
ほぼ初めてだったんですよ。
なので何回も社内で確認したり相談しながら作りました。
製造の現場でも、初回の段階で
ちゃんと編めてないものが出てきたときは、
社内の人をかき集めて一つ一つ裏返して検品し直したり、
格子や丸のデザインがズレていることも多かったので、
縫製に指示を出し直したり‥‥。
でも、それを乗り超えてきたので、
今は逆にお客さまに自信を持っておすすめできます。
- 伊藤
- 構想から完成までは
どのくらいかかったんでしょう。
- 吉田
- 1年ぐらいですかね。
- 伊藤
- 色違いやパターン違いも含めて?
- 𦚰田
- はい。
基本のデザインが決まってから、
バリエーションをつくるのに
糸見本から色を選んでいくんですけど、
編んでみると思っていたのと違う印象になることが
けっこうあったんです。
急遽、別の色にしたりして、
スタートは8種類作りました。
あとから2色追加でつくって、
現在のラインナップは10色になりました。
(左から順に 川﨑優衣さん・伊部志保さん・吉田けえなさん・𦚰田あすかさん)