ほぼ日に「雑草部」ができました。
糸井重里が雑草に興味を持ち始めたことを
きっかけに、雑草好きのメンバーが集まり、
雑草にまつわるいろんなことを、
みんなで自由にやってみることにしました。
屋上のプランターで雑草を育ててみたり、
各地で観察したり、ときには実験をしたり。
いろんなかたちで雑草とつき合いながら、
雑草に学んでいけたらと思っています。
みなさんは雑草、お好きですか?
いっしょに楽しんでいただけたらうれしいです。

>ほぼ日雑草部のごあいさつ

 プロフィール画像

ほぼ日雑草部、部長のです。
「雑草部やろう!」
雑草の魅力を知った糸井重里のひと言から、
ほぼ日雑草部がはじまりました。

きっかけは、ほぼ日の學校に来てくださった雑草の先生、
静岡大学・農学博士の稲垣栄洋さんのお話
雑草の生き方を知ると、
「あぁ、こういう生き方もあるんだな」
とはげまされました。

自分が生きやすい環境になるまで、
何年でも発芽のタイミングを待ちつづける。
環境が自分と合うときを見計らって
一気に成長する。
ふまれる場所にいるならば、
ふまれてもいいようにわざと背を低くする。

自分をだれかと比べるのではなくて、
自分らしさが活きる場所や過ごし方を
探しつづけ、その場所でオンリーワンの
輝きを放っている。
そんな雑草の生き方に、 わたしたちが
学べることは山ほどありそうです。

部員は、ほぼ日乗組員の
そしてわたし、
稲垣先生に糸井重里、そして樹木医の瀬尾一樹さんにも
相談をさせていただきつつすすめていく予定です。
本業や雑草に関する知識の深さはそれぞれですが、
それもまた雑草部らしいところです。

発足記念には、おそろいのパーカーをつくりました。
雑草のように、気負わず、
のんびり楽しめる部活にしていきますので、
どうぞ、よろしくおねがいします!

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雑草をいい感じに撮りたい。植物観察家の鈴木純さん、スマホで撮影する方法を教えてください:01 背景とあきらめ。

見つけたときは「かわいい!」と
胸キュンだった雑草。
なのに、スマホで撮った写真を見返すと、
いまいち魅力が伝わってこない――。
そんなもどかしさを解決するために、
ほぼ日の學校にも登場いただいた
植物観察家の鈴木純さんに、
「雑草の魅力を伝える撮り方」を
教えてもらいました。
数時間のレクチャーで見違えるほど、
いい写真が撮影できるようになりましたよ!

> 鈴木純さんプロフィール

かご
私たち雑草部のメンバーが
雑草たちの写真を撮る技術を上げたら、
雑草の魅力をもっと伝えられると思って。
今日は私たちに写真の撮り方を教えてください。
鈴木
よろしくお願いします。
ぼくも今日のことを楽しみにしていました。
かご
では早速、本題に。前のめりですみません(笑)。

写真の撮り方といっても
いろんなレベルがあると思うんですが、
私たちは通勤中や出かけた先で見つけた
草花を撮影することが多いんです。
スマホと、スマホにつけるマクロレンズという
シンプルな装備での写真の撮り方を
教えていただけたらと思ってます。

鈴木
了解です! スマホで手軽に撮る方法ですね。
かご
はい。教えてもらう前に
私たちの写真の腕を見ていただく必要があると思って、
事前に写真をお送りしたんですよね。
鈴木
写真、見てきました! 
いろんな人が撮った植物の写真を見るのが好きなので
おもしろかったです。
でも正直な話、写真には正解はないので、
全部いい写真とも言えるんですよね。
そんなところから話してもいいですか?
全員
はい、ぜひお願いします。

コツ1 背景はスッキリさせる

鈴木
かわいく撮りたいとか、美しく撮りたいとか、
人によって撮影する動機がありますよね。
たまに写真の撮り方を相談されることがあるんですが、
その人が何をどう撮りたいかがわからないから
なんともアドバイスしにくいところはあって‥‥。
なっつ
私の場合、撮りたいものはあるんです。
だけど写真を見返すと全然表現できていないんですよね。
たとえばこの写真。

△ネコジャラシの中にあるリボン型のシジミチョウ。(撮影:安木) △ネコジャラシの中にあるリボン型のシジミチョウ。(撮影:安木)

なっつ
ネコジャラシの中に、シジミチョウがいて
リボンの形をしているのがいいなと思って
撮ったんですけど、
撮った写真を見るとチョウが目立っていないんです。
どうしたらいいですか?
鈴木
おお、これですか。
何を撮りたいかが大事って言っておきながらですけど、
すべての写真において共通して
大事なことがありまして‥‥。
なっつ
あるんですね。
鈴木
それは、“背景”なんですよね。
全員
背景ですか!!
鈴木
背景が一番大事とも言えるんです。
なぜこの写真がわかりにくくなったかというと、
チョウを見せたいのに、
手前にも背景にもネコジャラシがいっぱいあり、
目立たなくなってしまっているんですよね。
なっつ
なるほど〜! 
チョウしか見てなかった。
鈴木
見せたいものの後ろ側には、
何もないか、暗くなっているかがいいです。
この写真は手前も後ろも同じ明るさですよね。
手前も後ろも同じ明るさの中に
見せたいものが中央にあるから埋もれちゃっている。
なっつ
そのとおりですね。
鈴木
このときはこの撮影方法しかなかったと思うんです。
できる方法としては角度を変えるぐらいしかない。
例えば、下のほうから見上げるように撮ってみる。
晴れてる日だったら、
青空が背景になるかもしれない。
右側から撮れば、
アスファルトが背景になるかもしれない。

そうやって自分の位置をずらして、
いい背景になる位置を探すわけです。
だけど、この状況だと正面から見て
チョウがリボン型になっているのが撮りたいのであって、
横からや下からではリボン型にならないかもしれない。
なっつ
そうなんです‥‥。
鈴木
どんな角度から撮っても、
背景がうるさくなっちゃう場合は‥‥
あきらめる。
全員
え〜! あきらめる!?
鈴木
そうです。
ぼくもよくあきらめてます。
かご
そうですか‥‥!
かわいい草花を見つけると、
写真を撮りたくなっちゃうんですけど‥‥。
鈴木
その気持ちはすごくわかります。
だけど、ぼくは写真を撮っていて、
草花を「いい!」って思っても
素通りしていることはいっぱいある。
かわいいし、いい咲き方をしてるんだけど、
背景がいまいちだとうまく撮れないんですよね。

だから撮影しているより、
撮るものを探してる時間のほうがはるかに長いです。
なっつ
そうか〜。
鈴木
ほかにアドバイスがあるとすれば、もっと近寄る。
近寄ればチョウが画面上で大きくなり、目立つ。
でも近づくとチョウが飛んでいっちゃいますよね。
なっつ
そうなんですね。
でも飛んでいってしまってもいいと思えば、
近寄れますね。
鈴木
一度、遠くから撮る。
とりあえず撮って気持ちを落ち着かせてから、
チョウが飛んでしまってもいいと思いつつ
近づきながら撮るのがいいかもしれません。
なっつ
それがいいですね。
鈴木
ぼくは植物写真しかわからないですけど、
昆虫とか鳥、動物も含めて
自然写真でいい写真と言われるものは、
背景が考えられていると思いますよ。
被写体そのものよりも、背景を考えてるんだと思う。
全員
そうかもしれない‥‥!
鈴木
たとえばこの写真。

△きれいなお花が撮りたかった。(撮影:安木) △きれいなお花が撮りたかった。(撮影:安木)

鈴木
タチアオイ、きれいですけど、
なぜ背景に車を入れちゃったのかな〜?(笑)
なっつ
おっしゃるとおり(笑)。
鈴木
車が通るときに起こる風によって
この植物の種が運ばれていることを伝えたいなら
いいけど、
タチアオイと車はあまり関係ないんだとしたら、
数秒待って、
車がいなくなってから撮ったらよかったですね。
まぁ、撮影のときは植物を見てるのであって、
背景を見てる余裕はないと思うんですけどね。
かご
植物しか見てないかも知れません‥‥。

この写真は背景もふくめてよさそうです。

△チガヤと夕日を撮りたかった。(撮影:安木) △チガヤと夕日を撮りたかった。(撮影:安木)

鈴木
これはいいですね!
チガヤを夕日と一緒に逆光で撮るのはいいですよね。
背景もスッキリしていてチガヤが目立っています。

厳しめに言うなら、
ぼくはロープがある時点で撮らないかもしれない。
あと、水平線が右下がりになっているけれど
水平にするかな。
斜めになっている理由がなければ、
基本的には平らにしたほうがいいと思います。
なっつ
ああ。そうか。
斜めになっているのは
慌ててたという理由しかないです(笑)。
鈴木
落ち着いて撮るのは大事です。
一眼レフで三脚を立てて撮影する場合は
ファインダーを覗き込んで、
背景をじっくり考えて撮影できます。
スマホで撮るときは
背景まで見てる余裕はないですよね。

あとぼくだったら、チガヤの後ろにある
草をどうにかしますね。
メロン
どうにかするとは、
切っちゃうとかよけちゃうとか?
鈴木
よけちゃいます。

植物が好きで写真を撮っているのに、
撮影のときに草を抜いちゃう人がいる。
植物を愛でているのに、
その行為はちがうんじゃないかと。
メロン
私も抜いたり切ったりするのは
抵抗感があります。
鈴木
それで、ぼくはこういう小道具を持っています。

△鈴木純さんの撮影道具。 △鈴木純さんの撮影道具。

 
写真に草が写りこんでしまうときに、
洗濯バサミでつまんで、
反対側の洗濯バサミをガードレールとかがあれば
そこにはさんであげる。
メロン
不自然にひっぱったりせずに、
ちょっとよけるんですね。
鈴木
そうそう、あまりに引っ張ると
やらせになっちゃう。

ぼくの先輩の植物写真家のいがりまさしさんが
風が吹いたぐらいよけるのは許してもいいんじゃないか、
それは自然でも起きることだから。
と言っていたことがあって、
ああその通りだなぁって思いました。

根元の見えないところをつまんで、
よけてあげる。
メロン
やさしい‥‥! 
洗濯バサミと毛糸があれば
簡単に作れそうですね。

(明日につづきます)

2025-10-25-SAT

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