──

いまの漫画家さんって、
着彩はデジタルという方も多いと思いますけど、
真造さんはデジタルに行こうとは思わなかったんですか。

真造

デジタル‥‥、行くのかな、
行かないのかな、うーん？　
実はデジタルの水彩も、触ってみたんです。
でも、なにか違うんですよね。
たぶん慣れたらできると思うんですけど、
今の、筆を使うときの水の含み具合とか、
色を合わせていくときの、
「これは少ないな」とか
「これじゃ濃いな」みたいなのが、
いまの自分は、経験不足で、
デジタルでは水彩表現ができないんでしょうね。
自分の感覚が絵筆と絵の具にありすぎるというか。
だから、とりあえずカラーは
デジタル化しないかもしれません。
やってみたい気持ちはあるんですけどね。
‥‥そうだ、せっかくだから、なにか描きましょうか。

──

えっ、いいんですか。ぜひ！

（真造さん、さらさらっと下描きをはじめる）

──

猫ですね、かわいい。

真造

線を描いたら、最初に影をつけます。
普段、いつも自分が意識してるのは
光の方向なんですよね。
こっちから光がさしたら、
こっちに影ができる、ということですね。
こうして影を描いて立体感が出たら、
それ以外のところを‥‥。

──

おお‥‥。

真造

そして空は、「コバルトブルー」の絵の具。
地面は、「サップグリーン」で。
この色、すごく好きな色です。

──

すごい。

真造

水彩絵の具は均等に全部塗るよりも、
白を生かすのが大事。
（しばし無言で、着彩に集中して）
うん。このあたりで、止めておきます。
次も好きな色を使います。
「インディアンイエロー」。
猫の体の模様を描いて‥‥、
できました。
うちで飼っている猫の、「うに」です。

──

（拍手）わあーっ、かわいい。
あまりにもサラサラと楽しそうに描かれるので、
私もやってみたくなりました（笑）。

真造

絵が描けなくても、
自分の好きな色を塗るだけで
コミュニケーションになるんじゃないかな。

──

いいですね、チャレンジしてみます。

真造

本当、カラーを描くのが好きで。
単行本の表紙も、
雑誌のカラーも、毎回描きおろすんです。
せっかく描かせてもらえるんだから、
なんか描きたいものを描こうみたいな。
ちょっと画家の気分にもなりたいな、
みたいな気持ちもあって。

──

じゃあ、漫画家になろうというよりも、
画家を目指されていたり？　

真造

高校くらいのとき、ちょっと迷いましたね。
でも、画家は上手な人がいっぱいいて、
自分はむずかしいなと思って。

──

漫画はいつから描かれてらっしゃったんですか。

真造

漫画は小４くらいです。

──

漫画をずっと描かれているのは、
お仕事なだけに辛いときもあると思うんですけど、
お好きなカラーを描かれているときは、
やっぱり楽しいなあというお気持ちがあるんでしょうね。

真造

そうですね。
ちゃんと楽しいと思いたいから、
ちょっと休むことにしたとも言えます。

──

『ひらやすみ』の物語を思いついたのは、
ご自身が病気になり、
入院されていたときだったという話を、
短編集^（＊）で読みました。
（＊）『センチメンタル無反応』（小学館）第八話

真造

そうです。

──

だからでしょうか、
「毎日のご飯、おいしいな」って食べたりとか、
そういう小さな幸せが明日につながっているというのが、
『ひらやすみ』から感じられます。

真造

たぶんそうだと思いますね。
その、なんか‥‥、
「いま」なんですよ。

──

「いま」。

真造

「いま」、感動しないと。
感動することが大事なんだと。

──

『センチメンタル無反応』の
最後の一言がすごかったです。
「不幸をくれてありがとう」。

真造

そうですね、そのときはそう思いましたね。

──

『ひらやすみ』を気楽に読みながら、
真造さんのそういった背景を知ると、
「日常って、大事なんだな」という読み方ができました。

真造

ありがとうございます。

──

たっぷりお話を聞かせていただき、
ありがとうございました。
お休み明けの作品を、楽しみにしています。

真造

ありがとうございました。