おしゃれな女性ファッション誌『sweet』で
連載中の「シンVOW」では、
毎回、すてきなゲストをお迎えし、
VOWについてあれこれ語りあっております。
このページでは、紙幅の都合で
『sweet』に載せきれなかった部分を含め、
たっぷりロングな別編集バージョンをお届け。
担当は、VOW三代目総本部長を務める
「ほぼ日」奥野です。どうぞ。

>森村泰昌さん プロフィール

森村泰昌(もりむら・やすまさ)

1951年、大阪に生まれる。子どものころから閉じこもりがちな性格で、ひとり遊びばかりする日々を過ごす。
京都市立芸術大学を出て大手電機メーカー就職するが、三日で会社の寮から逃亡し退職。
油絵、版画、写真などいろいろ試してみるがいずれも長続きしなかった。美術家になるのをやめて童話作家をめざし、大阪文学学校に通うようになったが、それも途中で挫折する。
試行錯誤の末1985年、まるで子ども時代のひとり遊びの延長線上みたいにも思える「肖像(ゴッホ)」を制作することになる。この、自らが何ものかに扮して写真に撮るという“セルフポートレイト”手法による写真作品によって、やっと自分の表現スタイルをつかみとる。1988年、突然、国際展ベネチアビエンナーレに選出され、以降、急激に国内外問わず、大きく活動範囲が広がっていくことになった。
1999年、蜷川幸雄演出の演劇「パンドラの鐘」(野田秀樹作)に役者として出演。2016年、三宅一生の「プリーツプリーズ・ゲストアーティスト」シリーズの第一弾をデザイン。2014年、「横浜トリエンナーレ2014」の芸術監督に就任。2022年、人間浄瑠璃文楽の桐竹勘十郎との共演で<人間浄瑠璃 新・鏡影奇譚>を上演など、表現領域の垣根を超えた活動も積極的に行なっている。
2018年、大阪の北加賀屋に個人美術館「モリムラ@ミュージアム」がオープンする。
近著に「自画像のゆくえ」、「生き延びるために芸術は必要か」(ともに光文社新書)など。最新刊に「キテレツ絵画の逆襲−『日本洋画』再発見」(三浦篤+森村泰昌 新潮社)がある。
2026年4月25日〜7月20日まで、「驚異の部屋の私たち、消滅せよ。−森村泰昌 ヤノベケンジ やなぎみわ」展を開催。

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第3回 モリムラさんのドマンナ

森村
以前、ある週刊誌の記事の見出しに
「マネを真似てもマネにならない 
森村画伯のパロディ精神」
と書かれたことがあるんだけれども。
──
ええ。
森村
これね、おもしろいなあと思いました。
「マネを真似てもマネにならない」
の最初の「マネ」は、
当然「画家のマネ」を指していますね。
次の「真似ても」は「真似る」です。
──
はい。
森村
でも、最後が問題なんですよ。
「マネを真似てもマネにならない」の、
「3番目のマネ」は?
──
ああ‥‥「真似」でも成立するんだ。
マネでも真似でも、
どっちでも意味は通じますもんね。
森村
そうなんです。
つまり、モリムラがマネに扮しても
「画家のマネ」にはならない。
そして、モリムラがマネに扮しても
「真似」にならない。
──
その‥‥3つめの「マネ」には、
ダブルミーニングを
「意図的に込めている」んでしょうか。
森村
いや、たぶんですけど、
ライターさんは「画家のマネ」のつもりで
書いたんじゃないかなと思います。
なんとなく、記事の内容から察するに。
──
そうですか。
森村
でも、マネと真似とどっちでもいけると
感づいておもしろがるのは、
やっぱり受け手の側のセンスなんですよ。
──
つまり、ここでも「解釈の問題」。
森村
言葉というものは、それが意味するものと
そこまできっちり
1対1でくっついてはいないんですね。
微妙にズレたりしてる。
そういうところが見えてきたりするネタは、
おもしろいなあと思います。
──
ダジャレや言葉遊びから何かがうまれたり、
コンセプトがくっきりすることって、
まわりを見渡しても、たくさんありますし。
数年前に、森村さんとやらせていただいた
美術展覧会の備品の「後始末」をする
プロジェクト
「アートシマツ」なんか、まさにそうです。
森村
この書きまちがいの投稿なんかにしてもね、
いろいろ考えてしまいます。
サマンの塩焼き‥‥って。

『VOW 30周年スペシャル』より 『VOW 30周年スペシャル』より

──
はい(笑)。サンマを書きまちがえて、
サマンという何かが塩焼きに。
森村
でも、本当に「サンマの塩焼き」なのか?
以前、同じようなことがあったんです。
ぼくがマドンナの作品をつくったときに、
ある媒体から
インタビューの依頼を受けたんですね。
──
ああ、他にはマイケル・ジャクソンなどに
お扮しになったときでしょうか。
森村
そのとき、インタビュアーの方が
「森村さんの、あのドマンナの作品‥‥」
とおっしゃるんですよ。
──
ドマンナ! 言葉から受け取るイメージが
ぜんぜんちがう!
森村
これを、どう捉えたらいいのか‥‥。
つまりね、
モリムラはマドンナに扮したんだけど、
本物のマドンナじゃないから、
この方は
あえて「ドマンナ」と表現したのかも、
そうにちがいないと、
まあ、そのときは思ったんです。
──
あ、ああ。なるほど。
マドンナをドマンナとまちがえるって、
たしかに考えづらいですもんね。
森村
だから、けっこう年配の男性でしたが、
ドマンナ、ドマンナと言っているけど、
きっとわざとだろうと思って、
ぼくはまじめに、
彼のインタビューに答え続けたんです。
──
そんなに、何度も「ドマンナ」と?
森村
最後まで「ドマンナ」と言ってました。
さすがにまちがってるのかもしれない、
という考えもよぎりましたが、
「ドマンナ」の前に
必ず「モリムラさんの」とつくんです。
──
モリムラさんのドマンナ‥‥。
森村
森村泰昌さんの扮したマドンナだから、
本物じゃない。
でも、
「モリムラさんのドマンナさん」なら、
本物もニセモノもない。
だから、あえてそう表現しているのか‥‥。
──
ふつうに考えたらまちがいでしょうが、
考えこめば考えこむほど、
わからなくなるタイプの難問ですね。
森村
だから、わたしのほうでも
「ドマンナ。あははっ」と言いながら
最後まで話をしたんですけど、
思えばあれは‥‥どっちやったんやろ。
──
わはは、いまにして!(笑)
森村
わかんないんですよ。
──
単純にまちがっていたのか、
鋭い批評が込められていたのか。
森村
真意の部分を、捉えきれなかったんです。
そういう経験をしていたので、
さっきの「サマンの塩焼き」についても
単純に笑えないんです。
──
深い意味が隠されているのかも、と‥‥。
森村
逆にね、わざとやっているのがわかる、
確信犯的なネタもあるじゃないですか。
──
あります、あります。
ありますが、そういうネタの場合には、
総じて
爆発的なパンチ力はない気がします。
森村
それはもう「説明」だからね。
こうこうこうだからおもしろいでしょ、
みたいなことですもんね。
──
そうなんです。
素でうまれちゃったVOWネタって
爆発的な力を秘めていることがあるけど、
それ自体でボケている場合には、
相当のおもしろさがないと。
森村
だから、やっぱり解釈って大事なんです。
それを「どう見るか」は、
完全に受け手側のセンスにかかってます。
ふつうに解釈したら感動するというか、
ヒューマニスティックな絵でも、
見る人が見たら、
そこに、
悪意を感じ取ったりするかもしれないし。
──
美術作品でも、VOWでも、
あなたがわたしが、「どう見るか」だと。
森村
それだけじゃないかなあ。

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(おわります)

2026-03-14-SAT

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