
おしゃれな女性ファッション誌『sweet』で
連載中の「シンVOW」では、
毎回、すてきなゲストをお迎えし、
VOWについてあれこれ語りあっております。
このページでは、紙幅の都合で
『sweet』に載せきれなかった部分を含め、
たっぷりロングな別編集バージョンをお届け。
担当は、VOW三代目総本部長を務める
「ほぼ日」奥野です。どうぞ。
レ・ロマネスク TOBI
全身ピンクのポップな二人組レ・ロマネスクのボーカル。故ピエール・バルーに愛されフランスで活躍後、帰国。一度聞いたら忘れられない珠玉のソングをYouTubeでチェック。
- ──
- ちみになんですが、
レ・ロマネスクの「祝っていた」という
VOWソングは、
どのようにしてうまれたんでしょうか。
- TOBI
- VOWソングって。
- ──
- かなり初期からやってますよね。
- TOBI
- 日本で初めてCDをリリースした曲、
いわゆるデビュー曲ですね。
- ──
- そっか。フランスから帰ってきたのが‥‥。
- TOBI
- 2011年12月22日です。
「111222」なので覚えてるんです。
その3年後の2014年9月にリリースしたのが
「祝っていた」です。
うわ、もう11年近く前なんだ。 - えーっと、あの曲はたしか‥‥ももクロが
女性グループではじめて
国立競技場でコンサートをやるって
ニュースで見たんです。
それで、ももクロに提供しようかと思って。
- ──
- 提供する気持ちで書き上げた。勝手に。
- TOBI
- はい。頼まれた体でつくりました。
- これ、あなたも出てるライブのMCで、
さんざん言ってるんだけど。
- ──
- あ、そうですか。それは失礼しました。
ライブ中はそれどころじゃなくて。 - ともあれ、そういった経緯であの曲が。
- TOBI
- ももクロらしい、
ハッピーな歌をつくろうと思ったんです。
お祝いの気持ちとか、
いつもありがとうという感謝を込めて。 - 上空から、ヘリコプターか何かで
「こんな~はずじゃあ~なかったよね~」
って、ももクロが歌いながら降りてくる。
- ──
- おお。
- TOBI
- 全員がステージに降り立ったところで
「いっくよー!」って言って
「憎いあいつを祝っていた~」‥‥と。
- ──
- そこまでイメージが完璧にできてたんだ。
- TOBI
- まだももクロには届いてないんだけど。
- ──
- 届いてほしいですね。
- TOBI
- だいたいお伝えせずにつくってるからね。
気づかれないんですよ。
- ──
- 他にもあるんですか。
TOBIの勝手に提供ソング。
- TOBI
- 『トゥーマッチ売りの少女』という曲は
安室奈美恵さんへ。
『KASOCHI』という曲はPerfumeへ。 - どちらもまだ、届いてないみたいです。
安室さんにいたっては、
届かないうちに引退なさってしまった。
- ──
- 提供ソングをつくるのは勝手につくって、
届かすところはアレですか、
自然のなりゆきに任せるんですか(笑)。
- TOBI
- 航空会社からオファーが来ないかなって
思ってつくったのが、
米米CLUBの「浪漫飛行」でしょ。
- ──
- あ、そうなんですか。へえ。
- TOBI
- あれと同じことをやろうとしてたんです。
ライブでは何度も言ってるんだけど、
それだけだと、
なかなか世間に広まっていかないんです。
- ──
- 濃いファンだけが知っている、
とっておきの耳寄り情報になっていると。 - 物語を感じるVOWが好きって、
TOBIさん、おっしゃっていましたけど
レ・ロマネスクの曲こそ、
それぞれに濃い物語を含んでますよね。
- TOBI
- そうなっちゃうんですよ。
- ──
- 落語っぽいですよね。
- TOBI
- 新曲が『ボタタナ』っていうんですけど、
棚の下でぼた餅が落ちてくるのを
待ち続けてるのに、
ぜんぜん落ちて来ないから
自らぼた餅をつくって、
自ら棚に置くようになって、
それが評判になって
ぼた餅屋さんとして成功する話なんです。
- ──
- すでに「話」と言ってますもんね(笑)。
曲じゃなくて。「噺」だわ、それは。
- TOBI
- つくったときたしかに落語っぽいな、と。
- ──
- あと『日本昔ばなし』っぽくもあります。
- TOBI
- ああ、たしかに。
- ──
- しかも、ぼた餅をつくって、
自分から棚に置くようになって‥‥って、
その部分が、
TOBIの勝手に提供ソングと同じ構造。
- TOBI
- ほんとだ。
- ちなみに、ぼた餅とおはぎのちがいって
ご存知ですか。
- ──
- え、知らないです。
- TOBI
- ぼた餅って、もともと牡丹の花のお餅で、
おはぎのほうが、萩の花。 - 牡丹の花というのは丸くて大きいですが、
萩の花は細長い。
- ──
- まん丸と細長‥‥って、
ぼた餅とおはぎとをふたつ横に並べたら、
レ・ロマネスクじゃないですか。 - 黒紫色のレ・ロマネスク。
- TOBI
- 本来は、春のお彼岸が、ぼた餅なんです。
ちょうどそのころに牡丹が咲くから。 - 昔は小豆の質が良くなくて、
秋に収穫した小豆も
春になるころには味が落ちてしまい、
皮をとってこさないと食べられなかった。
なので、
春のお彼岸はぼた餅で、こしあん。
その一方で、秋のお彼岸は、
「おはぎでつぶあん」だったんです。
- ──
- 勉強になるなあ。
- TOBI
- いまはもうごっちゃになってますけどね。
- ぼた餅って、もち米を杵で搗(つ)かず、
つぶしてしてつくりますよね。
夏のぼた餅のことを「夜船」と言うのは、
夜に船が到着しても
「ついたかどうかわからない」から。
- ──
- おもしろい。そしてここでも落語っぽい。
- TOBI
- 冬のぼた餅は「北窓」って言うそうです。
北の窓からは月が見えない‥‥つまり
米をつぶしていて、「つきがない」から。
- ──
- 美しい‥‥。そして深い。ぼた餅の世界。
- もち米のつぶし加減のことを、
半殺しとか皆殺しとかっていいますしね。
- TOBI
- でね、牡丹の花で有名な大根島って島が
島根県にあるんですよ。
そこの牡丹が、とにかくすごい。
池か何かにバーっと敷き詰めるんですよ。
毎朝、おじいさんが。
- ──
- それおじいさんって決まってるんですか。
また昔ばなしっぽいなあ(笑)。
- TOBI
- 大根島の牡丹祭りという
ある意味で奇祭のようなすごいお祭りが、
毎年GWに行われるんです。 - ぼく、その祭りを子どものころに見てて。
完全に天国みたいな場所なんですよ。
- ──
- ‥‥‥‥‥(検索中)‥‥‥‥‥‥これ?
- TOBI
- それそれ。
- ──
- ヤバいっすね。すっげ‥‥!
- TOBI
- 毎朝おじいさんが手で敷き詰めてるんです。
3歳くらいのころ、見に行ってるんです。
- ──
- えーっと、つまり、まさか、
ここがレ・ロマネスクの原点ってこと?
- TOBI
- いろんな取材とかで、
どうしてピンクなのかと聞かれるんだけど、
あるときハッと気づいたんです。 - もしかしたら、3歳のころに
島根の大根島で見た牡丹祭りかも‥‥って。
- ──
- レ・ロマネスクのおふたりが降り立っても
不思議じゃないですもんね、ここ。 - 金色(こんじき)の野に降り立つ代わりに。
- TOBI
- 何の違和感もないと思う。
写真協力:大根島・由志園さん
(つづきます)
2025-05-15-THU
