TOBI

ちなみに、これはどういう誤植なんですかね。

『VOW 30周年スペシャル』より

──

本当に。この記事が印刷されるまでの過程で、
どんな奇跡が起こったというのか。

TOBI

これ、群馬版なんですよ。

──

なるほど、つまり「地元」ってことか‥‥！

TOBI

そう、福田康夫さんの地元の記者さんなので、
パソコンで
よく「福田康夫」と打ってたんでしょうね。

何かの弾みで「ふ」と打たれてしまい、
その予測変換が残ってしまった‥‥のかなと。

──

ぼくはいま、
ヒューマンエラーの可能性にふるえています。

こんな奇天烈なミスが起こせるのか‥‥と。
人間という存在の大海原よ。

TOBI

急いでたってことはあると思うんですけど。

──

ですね（笑）。新聞だからね。

TOBI

きっと、一分一秒を争ってたんですよ。
締め切りが目の前にまで迫ってきてたんで、
文中に挟まる「福田康夫」という異物を、
すっかりスルーしてしまったんでしょうね。

あと「絵馬」界隈にも注目したいです。

──

VOWの生息エリアとしては、たしかに。
七夕の短冊と並んで。

TOBI

これとかも好きです。「三権分立」。

何のお願いコーナーかはわからないけど
託した願いが「三権分立」。

──

我が国日本では、
すでに達成されているとも思いますが‥‥。

機能してないじゃんということなのかなあ。
鋭い批判が込められているのかも。

TOBI

あと、お店の主人が「表現」しちゃってる、
こういう系も個人的には好みです。

──

「俺色の電卓か‥‥見てみるか」と。

TOBI

地味に好きなのが、これ。「スナック海外」。

──

海外と表記した時点で、そこは日本‥‥。

TOBI

ぼく、ちっちゃいころから、
スナックの名前が気になってたじゃないですか。

──

いや、「なってたじゃないですか」‥‥って。
知りませんでしたけど（笑）。

TOBI

いやいや、「来る夢、来る人」って書いて
「ライムライト」と読ませたり、
実際「待つ夢」と書いて「タイム」とかね、
よくあるでしょ。

ああいうのが気になって、
スナックをよくチェックしてたんですけど、
いちど「愛魚人」と書いて
「アイウォンチュー」って読ませるお店を
沖縄で見つけたことがあって。

──

「愛＝アイ」で「魚＝ウオ」で、
「人」が
「島人」（しまんちゅ）の「チュー」か。

TOBI

写真に撮ってＸに投稿した記憶があります。

けっこうスーパーの手書きポップとかにも
VOWが潜んでたりしますよね。

──

宝庫ですね。

いまって、どんなにちっちゃな誤植でも、
ただちに瞬間的に、
何ごともなかったように修正されてしまう。
そんな時代ですけど、
街のスーパーのポップには、
まだまだ古きよき誤植が残されがちですね。

TOBI

書き直すのがめんどくさいんでしょうね。
こういうやつとか。

──

つまり「辛」が「幸」に。

TOBI

店が忙しいのか書きなぐってるんですよ。
そのせいで「激辛」のつもりが、
「ベリーハッピー」になってしまってる。

コメントもいいです。
「はい、あなたアーンして。的な」。

──

ハッピーを絵に描いたらってことですね。
先代・VOW２代目総本部長である
古矢徹さんの遺したすばらしいコメント。

ちなみにレ・ロマネスクにも、
似たような構造の名曲がありましたよね。

TOBI

「祝っていた」ですね。

──

はい。憎いあいつを「呪う」つもりが、
「祝っていた」という不朽の名曲。

口へんに兄と書くところを、
示すへんに兄と書いて「祝っていた」。

TOBI

何年かごとにネット上で拡散される、
富士の樹海の「祝ってやる」ってあるでしょ。

──

木の幹に書いたやつですよね。

TOBI

コラ画像らしいんです、あれって。じつは。
たしかに、よくよく見ると、
示すへんのピンクがちょっとちがうんです。

実際は「呪ってやる」だったらしいですよ。

──

本気の呪詛だったんだ！

TOBI

それがたびたびネット上に出回るんです。

インターネットより

──

富士の樹海で息絶えた亡者の霊のように。
よく知ってますね、そんなこと。

TOBI

はい、「祝っていた」をつくるにあたり、
いろいろ調べたんです。

ちなみにスーパーのネタで有名なのは、
スーパー玉出の１円タオルの裏とかね。

──

あ、あの、大阪の派手なスーパーの？

TOBI

そう。スーパー玉出でオマケでもらえる
１円タオルってのがあって。
そのパッケージ裏の説明がすごいんです。

VOW発のネタではないと思いますが。

──

でも、見たことがある気がします。

TOBI

スマホに画像を保存してますから。ほら。

１行目の「キセラクタ」というのは、
おそらく「キャラクター」のことですね。
つまり、この１円タオルの「特徴」。

──

ワードとして強いです。キセラクタ。

TOBI

キセラクタという言葉のキセラクタが、強い。

──

これ‥‥読めば読むほどすごい。
この手の作品では、ちょっと「極致」ですね。

「心配しないだ」「いちばん強いだ」
「ほかに自動車と蒸気機関の油汚でも結構ですね」
蒸気機関も拭けるの！？
何百度とかの世界だと思うんですけど。

TOBI

「きれいなのにはこれが特別に有効なクロスだ」

──

言いたいことは、不思議とわかる（笑）。

漢字熟語の使い方と、
文末の言い切りが潔くてカッコいいほどです。

TOBI

そうなんですよね。カッコいいんですよ。